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お友達といたら、思うようにならないことだって起きる。「いやだ」って言えることって、とっても大事。


久し振りに地区センターの子育て広場へ。そこは週一回保育士さんが開く場で、はるくんがまだ歩けない頃からお世話になっていた。今ではまさかのはるくんが最年長。今日は寝返りもできないような小さな赤ちゃんが多かったので、尚更はるくんがお兄ちゃんに見えた。


はるくんはお皿をたくさん並べておままごと。おいもにブロッコリー、いちごのケーキにホットケーキ。それはそれは楽しそうな光景だった。そうすると、当然だけど、他の子が集まってくるんだよね。わぁ、なんだろ、たのしそう!と。

よちよち歩きの女の子がやってきて、ケーキを手に取る。はるくんはそれを見て「あ」というおかおをしたけれど、「どじょー(どうぞ)」と気前よくごちそうして。女の子が「どーじょ」とケーキを渡してくれると「ありがと」と受け取ったり、なんだかとってもほほえましい2人だった。

…のだけれど。

女の子が突然、手のひらでざぁーっとならべたお皿を全部下に落としてしまったのだ。女の子は満面の笑み。わかる。そういう時期ある。なんでも払い落とすのが楽しい時期が。「そっか、さーちゃんはきれいきれししたいんだね、じゃあはるくんもう一回こっちでしようか」とお引っ越しを提案。呆然としていたはるくんも、気を取り直してもう一度。ふぅ、よかった、立て直せた。


でもやっぱりその子は並んだお皿を見て「たのしそう!」とまたやってきた。はるくんはまたその子と「どーじょ」をしたり「かんぱい!」をしたり楽しそうだったから、あぁよかった、わだかまりはできてなかったんだな、と一安心。

…したのだけれど。

さっき起きたことが、また起きた。女の子が手のひらで全部のお皿をざーっと払い落としてにっこり。はるくんを見ると、すこーしずつおかおがゆがんで、あ、だめだ、やっぱり、だめだ…うわーん!たまらずに泣き出してしまった。

はるくんってあんまり泣かない。転んだりしても、本当にすっごく痛い時くらいしか泣かない。そんなはるくんが泣くのは「もっとあそびたかったのに」という時だけ。並べたケーキを持ってっちゃうのは「いっしょにあそんでる」からokだったんだね。でも、楽しくあそんでいたものをぜーんぶ壊されちゃったのはさすがに悲しかった。悲しくて悲しくて、たまらずに泣いてしまったんだ。


その女の子のお母さんは、女の子に「はるくんいやだったよ、だめだよ」と言い、たくさんあやまってくれた(よく知っているお母さんなので、こういうことがあってもおたがいさまってお互い思ってる)。

でも、その女の子が悪いわけでもないんだ。その子だって、ただ楽しいと思うことをしただけなんだよね。お皿を並べるのも、払い落とすのも、その子にとってはおんなじ「遊び」。それがただ、はるくんとは噛み合わなかっただけなんだ。そして、それがはるくんがいやなことだなんて、まだわかる年じゃない。しょうがない、しょうがないことなんだ。

そして私はちょっとうれしかった。ひとりっこのはるくんは、おうちで遊んでいればすべてが自分の思うようにできる。おもちゃを取られることもないし、遊びの邪魔をされることもない。「いやなこと」が起きることがほとんどないんだ。だからこういう「しょうがないことがおきる」って、とっても貴重な体験なの。


お友達の中にいて、いやなことが起きる。これをほとんど体験したことがないもんだから、はるくんはどうしたらいいのかわからないんだ。だから並べたお皿を払い落とされたのを、ただ見ていたの。

相手に手を出さなかったのはえらい。それをしなかったことには安心した。だから、これから時間をかけて、もう一歩前へすすんでいきたい。そう、いやなことが起きたときに「いやだ、やめて」って言えること。これ、とっても大事なことだから。


よくね、「相手のいやがることはしちゃいけない」って言うでしょ。例えばおもちゃを取られちゃって泣いてる子がいたら、たいてい大人は「取った子に」だめだよって言うの。でもね、大事なのはその前の「取られそうになった子がいやだ、やめてって言うこと」なんだ。

何がその子にとっていやなのか、それってひとりひとり違う。大人になってもそうでしょう?何をされたら嫌なのかって、ひとりひとり違う。そしてそれは、黙っていたら伝わらない。そしたら今日のはるくんとさーちゃんみたいに、お互いどっちも悪くないのに悲しいことが起きちゃうから。

だから、「ぼくはこれがいやなんだよ」って伝えることが、とっても大事になってくるんだ。「相手のいやがることはしちゃいけない」はその次のこと。「いやだ」って言われたら、それはしてはいけないよって。「いやだ」って言われてもどうしてもそれがしたいのなら、一緒にどうしたらいいか考えようって。


4月からはるくんは週一で一時保育に行くことになりました。さぁ、これからこういうことが増えるぞ。試練だねぇ。でもこういうことは体験していったほうがいい。思うようにならないことなんて、これからいくらでも起きる。いやなことを「いやだ」って言うこと、悲しくなった気持ちから立ち直っていくこと…お友達の中でじゃないと身に付けることのできない力がたくさんある。

がんばれ、はるくん。お友達といると、楽しいこと、いっぱいあるよ。そして、思うようにならなくて、悲しいこともいっぱいあるよ。でも、大丈夫。大人はみんな分かって見守っていてくれるからね。おかあさんも、見守っているし、へこんだときにはいつだって抱っこしてあげる。

そうしてたくさんたくさんこういうことを積み重ねていくと、きっと、「かなしいこともいっぱいあるけれど、それでもみんなと一緒にいるのがたのしいんだ」ってわかる日が来るから。

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