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3Dプリンタの大変さの理解度が経験のある人とない人で全然違う理由

民生用の3Dプリンタが世に出てから10年近くが経ちます。装置が安価になったことでユーザー数は増えてきており、一部の熟練者だけが使うツールではなくなってきました。造形品が日常生活の中で使われる事例も少しずつ見かけるようになっています。しかし3Dプリンタを扱うことの大変さについて、経験のある人とない人では理解のされ方が全然違う、というのは以前からあまり変わっていないように見えます。この理解のされ方のギャップはどこから来るのでしょうか。

理由はいくつかありますが、そのうちの一つに、報道などによって3Dプリンタはスイッチ一つ、全自動でモノを作ってくれるという近未来的なイメージが頭の中で作られがちであることが挙げられます。ニュースなどでは情報はコンパクトにまとめられ、映像での視覚的な要素が多くなります。もちろん報道側は事実を正確に伝えており、その情報については問題ないのですが、3Dプリンタはこうしてこれこれに使われます、という話が断片的な映像で語られると、情報の受け手は3Dプリンタだと簡単にできるのだなと誤解してしまうわけです。

実際のところ、3Dプリンタを使ったモノづくりは全自動で行われるわけではありません。もちろん一部は自動ですが、モデリングから完成までの工程で考えると自動の占める割合はごくわずかということもあります。

3Dプリンタの運用だけで考えても、人の介在する場面はたくさんあります。例えばモデルに対してスライサーでパラメータを与えればツールパスを自動で作成してくれますが、そのツールパスで造形が問題なくできるか、求める外観が得られるのかは人間が判断しなければなりません。求めるものでなければどういうパラメータを与えるか人間が考えて設定しなおす必要があります。

造形スタートしてからも同じです。3Dプリンタは動きそのものは自動ですが、造形中の異常の有無、出来栄えの不具合までは検出してくれません。これも適宜人間が監視する必要があります。造形が終わってからもサポートの除去、研磨、組付け確認、塗装などの手作業があります。3Dデータに不具合があれば一番最初のモデリングからやり直しということも起こります。

3Dプリント造形品の価格がなぜこんなに高いのかというコメントがあった、という投稿をSNSでもたまに見かけます。やはり背景をご存じない方だと、完成品だけを見た場合にそこまでは意識が及ばないのも無理はないかもしれません。いろんなコストが積み重なって造形品の価格は設定されますが、理詰めで説明しても理解のギャップは埋まらないことも多く、しばしばすれ違いが発生するところです。

このような、造形に人手がかかる構造を何とかできないのか?と考えた時、全体的にはまだ改善の余地が残っています。たとえば、必ずしも造形で人が常時張り付いて調整や監視をしなくてもよい場面もあります。造形の異常検出や、補正技術などを使えば自動化でき、人が介在する場面が減らせるかもしれません。今3Dプリンタは主にパーツの良し悪しで決まっているロボット的な要素が強いですが、フィードバック機能が備われば負担が減ることが期待されます。

今はまだ人が3Dプリンタに合わせに行っている要素が強いですが、今後世間的に3Dプリンタに対しての正しい理解が浸透し、プリンタをはじめ周辺機器やソフトがよりユーザーに歩み寄ることができれば、3Dプリンタを活用したものづくりはさらに発展していける余地を残していると思います。

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https://ccnworldtech.com/3d-printing-machine-price-in-nigeria/

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