【Natural Farming】有機野菜を食べて体内の農薬を減らせるのか?
環境にやさしいオーガニック食品
有機農産物について話すとき、環境負荷が小さい生産方法であることは消費者にも浸透しつつあります。一方で、「からだにいい」というのは、生産地の環境や生産方法によって、異なると思います。
とはいえ、農薬や化学肥料の使用量が少ない農産物は、それらが体内に蓄積される量が少ないから、やはりからだにいいのではないか?というのは、皆さんが疑問に思うところでしょう。
そこで今回は、NPO法人福島県有機農業ネットワークが、北海道大学大学院獣医学研究科の池中良徳准教授の協力を受けて調査した「有機農産物摂取による尿中のネオニコチノイド量低減に関する調査研究」の報告をご紹介します。
ネオニコチノイド系農薬とは
ネオニコチノイド系農薬は、1990年代から有機リン系農薬に代わって普及した殺虫剤の一種です。当初、「虫に対して効果が高く、人には影響がない」とされていましたが、使用年数の経過とともに生態系や人への影響が懸念されるようになっていきます。
とくに問題とされているのは、下記の3つです。
(1)洗っても落ちない浸透性の強い農薬であること
(2)残留性が高いため、作物だけでなく、環境中への流出による生態系への影響が懸念されること
(3)ターゲットとなる害虫以外にも影響を与えてしまう、強い神経毒性があること
人には被害がないとされていましたが、近年、病気や健康被害に関する研究や論文が発表されているほか、ミツバチの大量死に関係している可能性があるとも言われています。
各国で規制が進む中で日本は…
オーガニック先進国である、EUやアメリカでは、ネオニコチノイド系農薬の再評価を実施したり、使用や新規登録に関する規制を強めています。
そんな中、日本は緩和措置を取っており、世界各国の対応とは逆行しています。ネオニコチノイド系農薬の残留基準もEUやアメリカよりも高いため、日本の生態系に影響を与えている可能性も考えられます。
有機野菜を食べて体内の農薬を減らせるのか?
ここまでご紹介した状況から、すでに摂取してしまった農薬について不安になった方も多いのではないでしょうか?
NPO法人福島県有機農業ネットワークが実施した「有機農産物摂取による尿中のネオニコチノイド量低減に関する調査研究」によると、一般的な農産物を農薬や化学肥料の使用量が少ない農産物に変えると、体内のネオニコチノイド系農薬の量は、5日間で54%、1ヶ月で94%減少するという報告があります。
環境中にすでに存在しているとはいえ、食事で摂取しないことでこれだけ減少するというのは驚きの結果です。
豊かな食を次世代にも
ネオニコチノイド系農薬のように効果が高く、効率の良い農業生産を行うための農薬は確かに便利なのですが、土壌や河川、そして海へとつながっていくと考えると、果たして地球にやさしいのだろうか。
今日、何を食べるのかを考えることは、農産物だけでなく、海産物も含めて、豊かな食を次世代に残すことにつながっていると思います。
おわりに
もちろん、一般的な農産物を摂取し続けることによって、すぐに健康被害が起こるわけではありませんし、国の定める安全基準値内であることは確かです。ただ、ご紹介した調査研究によって、有機農産物に切り替えることで体内のネオニコチノイド濃度が減少することが明らかになっています。
体内に蓄積されることで、未来のこどもたちにどのような影響が起こるのかは、まだ誰にもわかりません。
しかしながら、ネオニコチノイド系農薬を使用しないために、他の農薬成分の使用量が増加した地域があることも報告されていますので、規制と対応策の両方が必要であることも述べられています。
多くの課題がありますが、少しでも、未来にいい選択をしたいなと思います。
参考文献:
ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議(JEPA)学習会講演資料および報告記事
朝日新聞「有機食材続ければ、体内の農薬大幅減 NPO調査」2019年7月12日掲載
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