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人見知りがたどり着く場所。

私が初めてマイカーを手にしたのは高校を卒業した年だった。親が使い倒した車とはいえ、もらえたのはかなりありがたかった。

まぁまぁなピンク色をしたMAXという軽自動車だった。

AM2:00にもなればだいぶ交通量も少ない。僕はいつもあえてその時間を狙って車を出す。仕事が終わるのが遅かったのもあるが、1番の理由は誰にも見られたくないからだ。

自宅から車を走らせて15分もすればすれ違う車も5分に1台くらいになる。

宴の開始だ。

まずお気に入りのMDを入れる。
当時はMDが流行りだった。
BUMPOFCHICKENが好きでよく聞いていた。

音楽が鳴り始めたら、窓を全部ぴったり閉める。ぴったりでなくちゃならない。音量のボリュームを一気に上げるからだ。
独り言の声量が全く聞こえなくなるくらいに。

そして、、、、、

好きな曲をカラオケ以上の声量で歌い倒す。
ここには僕1人しかいないのだ。
上手いとか下手とかそういう概念はない。

アップテンポの曲がかかろうものならアクセルも自然と踏み込んでしまう。

大変危険である。

そして、もうひとつ危険なことがある。

信号待ちだ。

曲に入りすぎて大声歌っていると、本当に自分1人だけの世界だと錯覚しがちだが、いくら真夜中とはいえ二車線の信号待ちで、歌いながら隣りに止まった車の運転手と目が合えば大変なことになる。

ーーー「ヤバいやつ」がいる。多分けっこうな数そう思われただろう。

しかもカラオケよりも全力で歌っている。何度もいうが1人しかいないのだ。歌ってるときの顔なんざ知ったこっちゃない。

もし仮に僕が同じ状況の人間を信号待ちで見かけたら相手に気づかれないようにゆっくりバックしてしまうかもしれない。

深夜の車内カラオケの快感はやった人にしか分からない。

帰路について駐車場に車を停めるとしばらく降りられない。

最高に心地よい空間である車の中を離れたのちに辿り着くのは「トイレ」である。

小さな本棚が置いてあるトイレは、車内カラオケで大騒ぎしたあと、心を鎮静化させるにはかなり適した場所で、家の中で1番好きな場所だ。

私のしょーもないひらめきの出身地はほとんどトイレである。

特に用もないのにトイレに行き、用を足してもないのに、水を流す。しかも小でいいのに大で流す。昼間のビールが罪悪感込みで美味しいと感じるように、大で流す時も罪悪感込みで気持ち良い。

これをかれこれ、100人くらいに言ったと思うのだが、一度も共感を得られたことはない。

基本的に1人の時間が好きで、大人数での飲み会は苦手である。大人数の飲み会なんか人見知りにとっては地獄である。

突然フッと襲われる虚無感。
あれは一体何者なんだ、、、、。

トイレに逃げ込むのだが、戻ってきたら決まって能天気なやつが、私の席に座っている。

なぜわざわざ移動する必要があるんだ、、、?

仕方なく、別の席に座るが、そこで会話に入るまでがまた地獄である。まるで最初からそこにいたかのようにスムーズに会話に入れる人が羨ましい。

車に行きたい、トイレに行きたい、車に行きたい、トイレに行きたい。

脳内エンドレスリピートである。

ごまかそうと思ってお店のポップやメニューを読み漁るが、能天気のハッピーボーイに見つかって、何か頼む?と聞いてくれる。

そのせいで僕に向かって、集まる視線が怖くてしゃーない。笑

飲み会は少人数が絶対に楽しい。

そもそもこうなるとわかっているんだから行かなければいいのに、と自分でも思うのだが、以前は仕事上、顔を出さなければ。みたいなこともあって顔を出していた。

なぜ、車内とトイレかは自分でも分からないのだが、とにかくそこが一番落ち着く。

人によって落ち着く場所や好きな場所は違うと思うのだけれど、私にとってはいわば鍵のかかった部屋が最も落ち着くし、最も思考がはかどる。

完全に個人的な見解でしかないのだが、人見知りが辿り着く先は結局トイレだと思っている。

トイレに神様がいると言い出したのは多分人見知りの誰かだ。なので、あの大ヒットソングも元を辿れば人見知りが生んだ作品だ。

そして今日も、トイレにこもってこんなnoteを書いている。大ヒットソングは生み出せないが、これから先も、トイレで経由で大量のnoteを生み出すことになりそうだ。

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