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野球の知識だけで、店舗運営は可能である。(文化編)

セブンラノイ株式会社の社外取締役をさせていただいております。玉城幸太です。
https://sevenranoj.com/
以前はこの会社では普通の社員として入社しました。最初に担当したのは外食事業部で、居酒屋の運営をメインにしておりました。

ただ、私には飲食店でアルバイトさえもした事がなかった(よく飲みには行きましたが、、、)ので知識がほぼ0の状態でのスタートで、社員ではあるもののアルバイトに毎日頭を下げ、いろいろ業務を教えてもらうという日々でした。

ひょんな事から、わずか5ヶ月で店長をする事になり、その2年後には2店舗合わせて、年間1億5000万円程の売り上げを作る事が可能になりました。

それを可能にしたのは飲食店の知識というよりは単に野球を活かした(自分の感覚ではもはや野球をしてた)だけで、ああこんな感じのパターンもあるのね!くらいの感じで読み進めて頂ければと思います。もし店舗運営をされてる方がいましたら、少しでもお役に立てれば幸いです。

全ては文化作りから始まった

ビジョンやミッションやパッション等は組織作りにおいてよく耳にしますが、私は当時そんな知識が全くなかったので、店長になってまず何をしたかというと、組織の文化作りでした。

どいう事かというと、例えば甲子園の常連である伝統校などには必ずと言っていいほど、良いも悪いもその高校の文化が受け継がれています。文化があるメリットとしては、新しく入ってきた新入部員が、言葉ではなく肌感覚で雰囲気を感じとってくれます。

なぜ私が初めに文化作りに着手したかというと、世間的な信頼がとても低い業界であり、それに嘆いている飲食店オーナーの方々をたくさん目にしてきましたが、現場を見るとそう思われても仕方ない。と思うような事ばかりでした。

遅刻や無断欠勤は当たり前、連絡もなく急に来なくなるスタッフもいる。挨拶も出来ない。勤務中に平気で腕を組んで突っ立ている。
こんな状態では世間の信頼どころか、目の前のお客様の信頼も獲得出来ません。正確に言えば、目の前のお客様の信頼が失い続けて、結果的に世間の信頼を失っている。かもしれません。

この状態ではまず試合すらさせてもらえません。いわば準備すら出来ていない状態で試合をしたって負けるに決まっているんです。試合をさせてもらえるだけありがたいくらいの感じです。これは参ったなぁと。

なので、まずは戦おうとする意識のある組織を作らない事には、戦術を立てても新しい戦力を確保しても全てが無駄に終わります。優秀な人材はダラけた組織から必ず離れていきます。

具体的にどんな組織文化を作ったか?

一言で言えば、「また会いたい人になる」という文化です。これは完全に個人に焦点が当たってますが、理由があります。私の思う強いチームは必ず各々が独立しています。要するに一人一人が各ポジションに対して高い意識レベルで物事に取り組めるわけです。

例えば野球でいうと、9人にポジションと打順が与えられますが、強いチームはそれぞれが自分の守っている場所、打順、ある場面で置かれた状況に対して、やらなければならない事を高いパフォーマンスで発揮してきます。

本当のチームワークは全員が高いレベルで考え行動しなければ、生まれないとつくづく思います。9人だけがプロ意識があって、他のメンバーは他人事。では強いチームなど作れません。

もう一つ個人に焦点を当てた理由は、いきなり大きい岩を動かすよりも小さな岩を動かす方が確実だったからです。岩に表現を例えてしまって申し訳ないのですが、いきなり組織全体を動かそうとしても無理がある事だけ分かって頂ければと思います。

一人一人に時間をかけ、コミュニケーションを取りながら、「また会いたい人になる」にはどうすればいいのか?を考えていきます。
面白いのが、居酒屋や接客業の場合ですと、大体「態度」がキーを握っている事に気がつきます。要するに、表情や立ち振る舞いなどです。

ここで重要なのはお客様が「また会いたい」と思うだけでは不十分で、一緒に働いているスタッフもそう思うようになるまで落とし込む事です。これが全員とまでは行かなくても、小さな組織(1店舗20名くらいの規模)の場合、たった2人でも理解者は現れるとガラッと雰囲気が変わってきます。

ここまでまとめると、
・個人に焦点を当てた文化作りをする
その理由は
・強いチームは誰も組織に依存せず、各々が高い意識を持って独立している
・大きな岩は動かない。

となります。

文化が出来ると何が変わるか

これを浸透させるまでには時間もかかりますし、忍耐力も必要です。ただ成果がもの凄く大きいので是非諦めずにチャレンジして頂きたいところでもあります。具体的にどんなメリットがあったかを説明していきます。

価値観の共有をせずに済む

せずに済むというよりはもうほぼ終わっています。「会いたい人になる」目的が最初で共有されているので、その為にはどうすればいいか?を考え始めるので、その先にある「会いたい人になる」為の行動や思考はわざわざ言わなくて済みます。

「会いたい人になる」為にどうしたらいいか考えている人は、腕を組んで突っ立ているというゴールにはたどり着きません。言わなくてもおおよそ正しい方向へと進んでくれます。

そうなるとしっかり見守りさえすれば、褒めるチャンスも生まれてくるので、言った事に対して出来たから褒める。ではなくて、スタッフが自ら考え行動した事を褒める事が出来るので、独立するまでを一気に加速させる事が出来ます。

サボりたい人の居心地が悪くなる

自分の価値観と違う組織に身を置くほど、居心地が悪いものはありません。これは良い側面も悪い側面も実はあるのですが、小さな組織の場合、たった一人が命取りになる場合もあります。野球も同じで、本気で甲子園に行きたい!プロ野球選手になりたい!と思ってる人が集まる高校には、そもそもある程度の覚悟がないと入学もしませんし、したとしても続きません。勝負事には厳しい場面がありますので、仲良しごっこをしてる場合ではないのです。

店に温度が出始める

人に対して無関心なお店には温度感がありません。別に接客も普通だし、料理も不味くはないのに魅力がないお店には大抵この温度感が欠けています。これは活気とは少し違っていて、静かな店にも温度感がある店はたくさんあります。人の温かみがあるようなお店です。働いているスタッフが熱を帯びていて、それが集団となっているお店はとても強いです。これは間違いありません。

人員不足に困らなくなる

先に述べた甲子園に行きたい!プロ野球選手になりたいと思っている高校は練習もとても厳しいんだろうな、くらいは想像が出来ます。実際には想像を絶するほどですが。そうなると仕事の場合大抵の人は嫌がるだろうと思います。

これは実際私もとても驚いたのですが、全く逆の現象が起こります。そういう組織にはとても人が集まりやすくなります。現代は時給だけでは人は動かないんだなとはっきり分かりました。学生は特に、以前みたいにめちゃくちゃお金に困ってる人は少なくなってきています。アルバイトにもお金以外のなにかを求めている人が多いわけです。

それは自分は何を学べるか?だったりどんな人が働いていてどんな人間関係が作れるか?だったりします。未だに求人広告には時給や賄いなどを大きくPRしているお店を見かけますが、そうなるとまずたくさんの広告に埋もれますし、時給と賄いで他店と勝負しなければなりません。広告にお金を使ってなお、さらに時給戦争に巻き込まれるので、利益がどんどん小さくなりますし、スタッフのモチベーションを時給だけで保つのは至難の技です。

しかも、文化作りが出来ているお店は、来てくれたお客様から働いてみたい!とおっしゃっていただいたり、スタッフが友達を連れて来たりしてくれるので、人員に困る事を防げます。これは人員不足が深刻な業界ほど効果的です。

売り上げに直結する

居酒屋の場合、集客に為の広告媒体はほとんどが、ぐるなび、食べログ、ホットペッパーになるかと思います。店舗を運営してる方ならお分かり頂けるかと思いますが、それらの広告費用は利益が全部ぶっ飛ぶくらい高かったりします。かといって広告を打たなければ売り上げが不安定になる。この循環に陥っているお店はとても多い。ですが、そもそも売り上げを広告に頼っている時点で厳しい戦いは始まっているも同然です。無料SNSやブログ、ホームページなど使っるお店も多いですが、飲食店の業界はマーケティングの分野においてとても遅れている為、自社媒体だけで集客を完結させているところは滅多にありません。

では強い店は何が強いか?それは「人」が強いわけです。誰々さんに会いに行く。これの絶対数が多い店が強いのです。文化作りの焦点を個人に当てたメリットはここにも出てきます。これは個人の魅力が付加価値として乗っかるので売り上げに直結します。料理のクオリティーや美味しいドリンク、新たな接客サービスを企画し作りあげるのも、もちろん大切ですが人を作りあげるのもそれと同等かあるいはそれ以上に大切な事だと思います。

実際にこれがうまく出来るようになってから、前年比を下回る事が一度もありませんでした。
広告費も前年の6割〜7割まで減らす事も可能になりました。「人」にはそれほどのパワーがあります。

文化編のまとめ

ここで注意したいのが価値観の押し付けです。
私が運営した店舗の場合は「会いたい人になる」がうまくいきましたが、必ずしもそれがうまくいくとは限りません。そこにいるスタッフと自分の価値観をすり合わせながら作り上げていく方が良いと思います。また、その時間もとても貴重だったりします。

宗教みたいだと批判する方もいますが、組織は大体どこもそうなはず。大阪桐蔭は大阪桐蔭教であり、アップルもアップル教です。その組織で信じられている事がありそれが好きで働いているわけですので、良い悪いの話しではありません。

組織作りはこの文化と環境作りでほぼ半分以上の仕事は終わってしまいます。
明日は環境作り編についてやってきたことをまとめてみたいと思います。その後、商品、サービス編→リーダー育成編→システム作り編→集客編→新規店舗立ち上げ編→引き継ぎ編と進んでいきますので、興味ある方は是非ぜひ読んでみて下さいね。

ではまた明日。最後まで読んで頂いてありがとうございました。


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