場と場を越境する雑談の力
「やりたい仕事が分からない」
学生からよく言われる言葉です。今日も言われました。
この発言を生む大きな理由は、そもそも知っている仕事が少ないことなのですが、案外このことは学生自身が気づきにくい点でもあります。
2種類の情報
情報には、①勝手に耳に入ってくるもの(受動的)と②自ら集めてくるもの(能動的)があると思いますが、知っている仕事が少ない学生は、まず勝手に耳に入ってくる仕事の情報が少ないのでしょう。
キャリア支援の立場にいると、当の学生に能動的に動いて情報を集めさせようと躍起になりがちですが、これは実はある程度しっかりとした職業観がないと偏った情報を収集するという弊害を生みます。(聞いたことのある有名企業しか見ないなど。)
そこで、一方の勝手に耳に入ってくるものを増やせないかと常々思っています。といってもサブリミナルとか洗脳とかいう話ではもちろんございません。
雑談の力
その手段の一つとして、大人と学生との雑談を大いに促進したいと感じています。雑談は偶然と親和性があり、思ってもいない話の展開を生むという点でかなり重要なものです。
「そうそう、そういえば前ね、やりたいことが分からないって言ってた学生がこんな風に今の仕事見つけたよ。その仕事はね・・・きっかけはね・・・」という具合です。
この会話は実は今日学生と行ったもので、冒頭の「やりたい仕事が分からない」という学生の発言はキャリアの相談のために整えられた場ではなく、全く違うテーマのための場でした。しかし、学生は自分のことに集中しがちなキャリア相談の場ではない場でこそ、世の中にある仕事の情報を今日一つ増やしました。
雑談は、場と場を越える力を持ち、キャリア形成において重要なものです。でも、セミナーなどには持ち込みづらい。持ち込んだとしても動員の点で人気なものになれなかったりします。すると、参加者の満足度が高くても実施しづらくなる、という負のループ・・・に落ちそうになってもしがみついて、やり続けよう。きっと開ける日がくるはず。(コロナに雑談を奪われそう。)