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雪(詩、ポエム)

真っ白な地面

真っ白な空

真っ白な吐息

いつもなら、それぞれの色を持つ世界が、一色に染まる

寒くてかじかんだ手をこすり合わせ、そこに温かい息を吹きかける

すぐに冷えてしまうけれど、一時は、温まる手をじっと見つめる

いつもは赤く、血が表面に浮かんで見える手も、今日ばっかりは真っ白で、まるで人形のようだ

足を踏み出せば、ざくり、ざくりと、細かな粒を押しのけ、押しつぶしながら音が鳴る

さらに一歩踏み出せば、またざくりと音がし、先程の足跡を置いてけぼりにさせる

動かし続けなければ、深く沈み、囚われてしまうそうになるから、一歩、また一歩と踏みしめていく

真っ白な世界は静かで、音すらも飲み込んでいるかのように感じる

冷たい風の、微かなささやきに耳を傾けて、この世界を進んでいく

どこまでも続いていそうなこの世界も、終わりがあるし、また、時間が経って、お日様が顔を覗かせたとしても、この世界は終わってしまう

儚く、脆い世界を、白い息を吐きながら進んでいく

隠していなかった手や、耳、顔は赤くなり、熱を持っているように見せかけてくる

本当は凍えそうなくらいに冷たいのに、嘘つきのように赤を前面に押し出してくる

歩き続けるのに疲れ、背中から、その真っ白なベッドに横たわる

ふわふわで、でも何処かしっかりしていて、このまま寝てしまえそうなほど、このベッドは居心地がいい

このまま誰かに雪をかけてもらって、雪の中で眠り続けたら、自分も美味しくなっていないだろうか

そんな馬鹿げたことを思い浮かべた後、少し湿り気を帯びてきた背中やお尻をはらい、また歩き出す

いつまでも、静かな世界で

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