のろいのいえ
あいつムカつくよ。いっつもカンチョーしてくるんだぜ。
タケルは、ここさいきんずっとコウイチに「イヤガラセ」されてる。
だからきゅうに「のろいのいえ」をつくろう、といいだしたときはおどろいたけれど、なんとなく、なっとくした。
イヤガラセをしてくるコウイチに、ヘコタレてほしいっておもうキモチ、イタイほど、わかる……。
だって、きょねんはボクも、コウイチに「イヤガラセ」されてたクチだから。
クラスがえでべつべつにならなかったら、きっといまでもコウイチのひょうてきだったはずだ。
だからタケルとふたりで「のろいのいえ」をつくることにしたんだ。
さっそくタケルは、じいちゃんからかりたという、リアカーといっしょにやってきた。にだいには、「ダンボール」や「かみ」がわんさかつんであって、しょうじきさわりたくないふんいき。
ボクはしずかにいった。
このハコに入ったスライム、どうするの。
クリスマスプレゼントだとおもって、てをつっこむと、ヘドロ(スライム)まみれになるんだ。
と、いみふめい。
じゃあこのあかいのは?
トマトね。
くさりかけてるから、らんぼうにしたら「グチャ!」とつぶれる、トマトバクダンになるんだ。となぜかとくいげ。
あと、のろいといえば「おふだ」だろう?
こんどは、てづくりの「おふだ」をとりだし、いたるところにハリだした。またたくまにタケルがひいてきたリアカーは「おふだ」まみれになっていく。
それ、たなばたのタンザクじゃね? っていいそうになったけど、ひっこめた。
だいたい「おふだ」は「マヨケ」だからイミなくね?
まあ、おもしろいからいいけど。
そのほかにも、やぶれたとうちゃんのパンツや、くさそうなクツシタ、あなのあいたカサをくみあわせて、ハタをつくっていく。
しょうじきにいうと、いえというよりもガラクタのやまだ。だけど、さいごにビニールシートでやねをつけると、フシギだ。それっぽく、みえるわけ。
しあげにタケルがもってきたクラッカーとリアカーをガムテープでグルグルまきに。クラッカーのヒモぶぶんを、ビニールシートにくっつけた。
こりゃなんだ、とヤツがビニールシートをはずしたとたんに、パーン! となっておどろかせてやるんだ! とタケルはハナをふくらませた。
そんなこんなでかんせいした、のろいのいえ。
ボクたちはひっしになって、そとにだした。
いろいろなモノがのっているから、バランスがわるくてなかなか、まえにすすまない。
こんなときでもタケルはまえむきだ。
ラクショウでしょう。コウイチのいえ、さかのしただし。
でもボクたちはタイセツなことをわすれていたんだ。
さかはノボラナイとクダレナイってこと。
げんじつをおもいだしてしまったボクたちは、しかたなくリアカーをおしながら、さかをのぼっていった。
あら、タイヘンねぇ。
せなかのまがったおばあちゃんが、ボクたちをおいこしていく。
なんだよ、これ!
タケルが、さけぶ。
これじゃあ「のろいのいえ」じゃなくて、「のろいいえ」じゃないか!
ふたりは、ふきだした。かおをみあわせて、のろいのろい、のろいいえ。のろいのろい、のろいいえい。
くりかえしながら、その場にしゃがみこむ。
とおくから、5じのほうそうがきこえてきた。
いくか。
むごんで、あるきだす。クルリとむきをかえて、さかをくだっていくのに、コトバなんていらなかった。
もどってきたふたりと「のろいいえ」をみて、イヌのタロウはフシギそうに近づいてくる。
ボクたちはクスクスわらいながら「のろいいえ」をわがやのうらにかくして、あしたは「のろいいえ」でまちあわせねって、わかれたんだ。
だとうコウイチのためにつくった「のろいのいえ」は、「のろいいえ」になって、けっきょくボクたちの「ヒミツキチ」となった。
そんなボクとタケルのおハナシ。
このつづきは、またこんど。
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