きみたちの道程
つつじの葉の茂る道を歩いた。なんてことのない、まっすぐな道を進み、もと来た道を戻っていく。行きは、小さくてふかふかの手を握り、時にキスをしながら歩く。帰りはつかむものがいなくなった手を、袖に隠しながら歩いた。
幼稚園のバス停までの送りの時間。いつもの光景だ。
これが最後である、いがいは。
正直、驚いている。
こんなに幼稚園バス停に向かうつつじの道が、いとおしくなるなんて考えもしなかった。もっともっとふわふわの手を握りながら歩きたかった自分に気づき、とても困惑し、どうしてもっと早く気付かなかったんだ、もっともっと手を握り歩くことを、もっともっと記憶しようとしていかなかったのだろうと不思議に感じる。いちゃいちゃしながら、歌を歌いながら、時には泣きさけぶ息子を引っ張りながら、いちょうの葉に目を細め、さくらの花びらを追っていたかった。
先日、幼稚園でお別れ会があった。
女の子が3人やってきて息子にこういった。
「息子くんは誰が好きなの」
息子は何の躊躇もなく、私を指さしてみせた。私のようなダメダメな親でも、息子は大好き、結婚しようと言ってくれる。史上最高にモテモテだ。
でも小学校に入ったらきっと私よりもすてきな友だちができて、私よりも楽しい勉強ができて、私よりも大好きな人ができるだろう。
手をつないでくれないかもしれない。でもそうやって大きくなっていく。私よりもたくさん好きな人を作るがいい。
だからこそ、きっと。
つつじの道は私の大切な道程となるだろう。
上の子たちもそうだ。上のお兄ちゃんは、違う幼稚園だったので、公園の近くの通りを走っていた。
2人目の娘は転園したので、公園近くの道と、つつじの道をぷくぷくのほっぺを揺らし歩いた。
3人目の娘は、しょっちゅうつつじの道で泣きわめいていた。
そして4人目の息子は、今日終業式、そして明日卒業式を迎える。
私たちの後ろに、できた道はとても愛おしくて、取り戻せなくて、色あざやかな道であった。
1億年かけてできたきらきらの宝石よりも輝く、たからものの道だ。
これから先、どんな道が刻まれるのだろう。そして君たちに、どんな道ができ私はそこにいつまでいられるのだろうか。
子どもは、私の手をいつまで受け入れてくれるだろう。ぎゅうは、あと何回へいき?
大好き、結婚しようは、あとどれくらい言ってくれるだろうか。
かみしめて生きていく。こんなしあわせな道程、ありがとう。
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