真っ白_横_

この真っ白な世界で

 その日、私は小説を書いていた。日本人の女とアフリカからきた毛の濃い外国の男の純愛ラブストーリーだ。

 私は二人の夜の公園での突然の出会いから、一瞬で恋に落ち、そして一緒に女のマンションに行き、お風呂に一緒に入るところまで書いたのである。しかしそこで私は急激な眠気に襲われ、noteを開いたまま寝てしまったのだ。

 目覚めたら世界は真っ白だった。

 あの、失恋した女が夜の公園を彷徨う切々とした描写も、孤独に打ちひしがれた男が女に救いを求めようと後ろから近寄る痛ましい描写も、そして二人が恋に落ち、シャワーを浴びながら愛を確かめ合う甘美な描写も全て消えていたのである。

 私は、まさか今まで書いたものがそっくり消えてしまったなんてことはありえない、きっと窓を閉め忘れてスマホに雪が積もったのだろうと思って液晶画面を拭いたが、雪などはもちろん積もっていなかった。

 文字は消え、物語の記憶も定かでない今、この、真っ白な世界をどうやって埋めていけばいいのか。私は呆然としスマホの四角の真っ白な世界を見つめていた。


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