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祖母と白玉粉

今夜は、十五夜。

子どもに「月見団子を作ろう」と言われ、白玉粉を買ってきた。
ボールに白玉粉をいれ水を注ぐとき、急に去年亡くなった祖母のことを思い出した。

同居していた祖母は、料理をしない人だった。

そんな祖母が何故か唯一「作る」のが、白玉団子だった。
毎年2回、おそらく春と秋の彼岸の頃に白玉団子を作って仏壇に供えるのが祖母の常だったように思う。

白玉粉を用意する祖母を見つけると、「私も!」と言って台所に立つ祖母の横につくと、粉をこね、丸め、団子を作った。
だんだん飽きてくるとだんだん団子作りから粘土遊びの感覚になっていき、到底自分は食べないようなでかいうさぎやネコなんかを作って鍋に投げ込んだ。
グツグツ沸いている鍋の前で、団子がひとつまたひとつと浮いてくるのを見るのは楽しかった。沈んでいた団子がふるふると震えるやふわっと浮いてくる不思議。
私は浮いてくる団子を見つける係。(自称)
「ばあちゃん、これが浮いたよ!早くすくって!」
早く早くと焦る私とは対照的に、祖母は「まだまだ」と言って、ゆっくりと鍋のなかをひと混ぜしていたっけ。


茹であがった白玉団子は、仏壇に供える分を別に取り分け、きな粉をかけて出来上がり。
すぐに食卓に運んで食べる。
別に大層旨いものでもない。
5、6個も食べれば充分。
自分の作ったでかいうさぎをぼんやり見ながら「これはばあちゃんにあげる」なんて言ってた。

いま私は出来上がった月見団子をお皿に並べている。
ばあちゃん、あなたのひ孫はかわいいうさぎの形の団子を作ってたよ。私とは違ってちゃんと一口サイズの小さなうさぎを。



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