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TAという仕事その3

前回から引き続き、Q君のことを書こうと思う。
Q君はおばあちゃんと一緒に住んでいる。お父さんとお母さんは遠く離れた町に住んでいるのでそこからうちの養護学校に通うことはできないのだ。あ、昨今、養護学校とは言わないのかな。特別支援学校とかいうのかな。
日本を離れていると時々言葉が変わったことに気づかないので気を付けなければいけない。。。
Q君はマオリ系でマオリ系の子は親が仕事で忙しかったり、離婚したりいろいろな事情があって親と一緒に住めない場合、おじいちゃんやおばあちゃんのうちで育てられることが多い。マオリ系は結構日本人と感覚がにているところが多く、毎日Q君はものすごくおばあちゃんに厚着をさせられて学校にやってくる。私も子供の時、おばあちゃんに寒いからと言って特に冬はすごく厚着をさせられて着ぶくれしていた。ここニュージーランドは一日の間で四季があるといわれており、朝晩がすごく寒くても昼間は暑くなることが多い。Q君はてんかんがあるので涼しい恰好をさせておいた方がいい。暑さはてんかんを引き起こす原因になることがある。Q君がまず学校についたらおばあちゃんには申し訳ないけれど重ね着している何枚か脱がさなければならなかった。でも帰りは午後で空気が少しヒヤッとすることもあるので、また何枚か着せて家へ返す。そうでないとおばあちゃんから孫に薄着をさせたとお叱りを受けてしまうからだ。

Q君はつらい’リハビリを経て、やっと歩けるようになった。そのせいか、走るのが大好きだ。うひゃひゃひゃと楽しそうな声を出して走る。全身で自分で自由に走れるようになったと、世界中にその喜びを伝えているみたいだ。最初の休み時間に追いかけっこをして遊んでいたら、Q君は地域校の運動場まで走って行ってしまった。インクルーシブとはいえ、残念ながらこの地域校は私達の生徒が地域校の生徒と交わることをゆるしてはいないと聞いていたので、Q君が休み時間にそちら側に行ってしまうのは非常にまずい。冷汗が出た。

私は焦って追いかけた。すると他のTAから
「追いかけるとますます喜んで逃げちゃうから、ほおっておいていいよ。」
「えー。。大丈夫なの???」
「大丈夫、勝手に帰ってくるから。」
しばらくすると、にこにことQ君は戻ってきた。よかったあ。。。
それにしても結構のんびりしているんだな、ほおっておいていいとは。
と、その時思った。そのぐらいの方がやりやすいし、気も楽だ。
日本だったらルールで現地校の生徒と交わってはいけないとなっていたら、責任とかなんとかで、そうはいかないだろう。ただし、これはQ君に限ってのことであったと、あとで知る。。そのことはまた後で書くことにしよう。

私の働いている特別支援学校は地域校の空き教室を3部屋か借りている。
その3クラスはサテライト校という名称になる。サテライト校の生徒たちは支援が軽めな子や割と大人しめな子、車いすの子、学習もそれなりにできる子が行くことができる。サテライト校はあと2校ある。ちなみに今現在、私は本校勤務だ。サテライト校のQ君のクラスにいたのは4年前。



Q君はボール遊びも好きだから、次の休み時間はボール遊びをすることにした。

Q君は喜ぶと頭を左右に振ってうひゃひゃと笑う。その時、よだれも一緒に飛んでくるので近くにいる場合は気を付けなければならない(笑)ボール遊び中はしょっちゅう頭を振っている。そうとう嬉しいのだ!ボールをQ君に向けて蹴ったり、投げたりすると、Q君はそれをキャッチして私のほうにまたパスしてくる。それの繰り返し。うひゃひゃ、うひゃひゃと声が響き渡る。あー、楽しい。私も楽しいよ!Q君!。。と二人の世界に浸ってはいけない。今回の休み時間は私は当番になっていて、子供達同士で喧嘩がないか、危ない遊びはしていないか、Q君以外の子達にも目を配らなければいけないのだ。この休み時間の仕事は当番制で行う。私は近くにいた他の子にもボールをパスしてあげた。するとその子もボール遊びが好きだったらしく喜んだ。3人でボール遊びをすることで、順番を守ったり、対人関係を学ぶこともできる。やるね、私!えっへん!と悦に入っていたら。。Q君、私と二人で遊びたかったらしく、ちょっとむすっとしてその場を離れてしまった。。。泣

するともう一人の子ももう遊びはやーめた、とその場を立ち去った。。
一人残されたワタクシ。。。悲しいけど、残りの当番時間、集中して休み時間の任務が果たせるではないかと気を取り直した。

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