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HER story

病院に勤務していると、日々多くの、
疾患を抱えた人やその家族と関わる。

身体の異常に自分で気づいて受診する人、
健康診断で精査をすすめれらた人、
検査の結果を告げられる人、
治療を受ける人、
治療を受けて社会復帰をする人、
経過観察を続ける人・・・

様々なステージにいる患者と
その人を取り巻く人々に出会う。

私が関わるのはそのような人々の人生の総時間の
ごく僅かで、おそらくその人の記憶に、
私と出会ったことは残らない。それは重々承知。

しかし、
様々な局面にあるそれらの人々は、
時に私たちに心の内を見せてくれる。
「話を聞いて」とか、「私の今の気持ちを表出したい」とか、
「あなたはどう思う?」と。

私たちは正解を伝えることはできない。
確約できること以外は言葉にしてはならない。

でも、お話を聞くことはできる。
今ある情報によって、一緒に考えたり、
不足する情報を、共に集めに行くことができる。

(私の個人的な意見だけれど)
看護師とはそういうものだと思っている。
導く、というより、横にいる人。

そんな理想を持ちながら、
日本の医療業界に身を置く看護師ならきっと共感してくれるだろうが、
その理想に到達することがどれほど困難か。
(これも私の意見だが)「そういう看護、私、できてます」と胸を張って言える人はとても少ないだろう。

「時間がないから」、「人手不足だから」は、言い訳になりません!

と看護学校のA先生はおっしゃっていた。
けれど、やはり、なかなか難しいですね、A先生。

でも、諦めたわけではない。
一人一人の患者さんに、それぞれのストーリーがあることを
念頭に常に置いている。

例えば、女性に限定して、悪性腫瘍(癌)の部位別死亡数の一位は大腸がん。
でも、「女性の大腸癌患者」と括ることは決してできない。
一人一人が今日まで生きてきた人生は唯一無二だから。

それぞれの患者さんのストーリーに寄り添いたい。
そうすることによって、日本の保険医療制度を「うまく回す」ことが
できなくなるは分かっているけれど・・・

今日も、病院で出会った患者のBさん。
あなたの不安な気持ちを支えるために、私はもっとできたはず、
と思いながら、次の患者さんがいることが気になって、
ゆっくりお話を聞けず、ごめんなさい。

私は、どうしたらいいでしょうね。

と、今夜も答えは出ず。

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