ブラック企業において無能な自分より更に仕事ができない後輩の話
転職に失敗して3ヶ月が経過した。その、名前を書くのもおぞましい前職にH田さんという40過ぎの女性がいた。入社してほぼ2ヶ月、私と同期といっても差し支えなかったと思う。
色白で痩せてはいないが小柄で髪は黒く、ぼんやりした顔立ちではあるが顔それぞれのパーツの造りは決して悪くなかった。若ければ美人の部類に入ったのではないかと思う。恐らくあの年になってまだカラコンを入れているところからして自認はもうすこし若い女性のつもりなのかもしれない。
私個人の話になるが、周囲のコミュニティの女に対し、そのネイル可愛いですねだの、今日は暑くてメイクが落ちちゃいますよねだの、興味の欠片もない話題を無理やり捻出して共感を得ることでコミュニケーションをはかる癖がある。それは実は私は全くやりたくもなんともないことだったので、この私がやりたくもないことでコミュニケーションをはかったさいにはかばかしいリアクションの帰ってこない女はもう、第一印象で、厭になってしまうのだ。H田さんもそういうタイプの女であった。恐らく彼女、ADHDの部類であろうがよくで彼女の特性は新卒の段階で済ませておくタイプの症状であった。年齢チートが入っていれば普通はもう少しマシになるだろうにと、過去の自分を見ているようで胸が痛かった。そのほか、新人で何もわからないくせ意地でも女性社員に教えを乞わないところ、普段は存在感がなく消え入りそうな佇まいのくせ飲みの席では男ばかりに囲まれてテンション高く盛り上がっていたという目撃証言があることから、この女は前職までは何かしらの姫プレイでやり過ごしてきたのだろうと推測し、当然私の「嫌いな女リスト」の中に速攻でブッこまれたわけだが、いざ更衣室などで2人きりで話してみると社内に対する困りごとが全く同じだったことから話が盛り上がった。とにかく社内システムが昭和初期で止まってること、離職率が異様に高い事、サービス残業をしなければ仕事が成り立たないこと。私は自分が人間界のヒエラルキー丼の底辺の米粒野郎だと思っているため少しでも会話の共通点が見つかれば手のひらを返し相手を愛するカワイイ一面があるのである。また個人的な話になるが、やはりこの相手を甘く見積もってしまうあたりが私の底辺にすらなりきれないガッツの低さというか、所詮親ガチャ外れの離婚勢とはいえ金持ちの祖父母に可愛がられ学費まで出してもらった甘ちゃんの感性だと思うが、結局、私の退職とともにH田さんも退職したので、なんだかもう、逆にシンパシーのようなものすら感じてしまって、ああ、最初の印象が悪い奴とは基本的に絶対仲良くなれないのに、この人とはもう少し仲良くできたかもなぁと残念に思う、しかしあの年齢のわりに自認は二十歳そこそこですみたいな雰囲気、似合わないデカイカラコン、病的に白い肌、実はデカめのパイオツ、実は元川崎堀之内あたりのソープ嬢ではないかとふんでいる。熟女店ならまだいけると思う。
彼女が辞める前に愚痴っていたことがある。朝のルーティーンでコーヒーメーカーをセットしたが間違えて豆をこぼしてしまい先輩社員にえらく怒られたのだそうだ。個人的には茶のセットなど個人的には死んでもやりたくないし、そもそも宅建資格すら有しているH田さんの仕事でないことは明白であった。
会社員の女がよく「私はお茶汲みしに会社にきているんじゃない」とプライド出してくるのを、「お茶汲みとコピ〜で金もらえるなら御の字じゃねえか」と思っていたわたしだがやっとリアルに到達した。このご時世、お茶汲みとコピーだけで食っていける仕事などないのである。普段の過重業務にお茶汲みなどというクソオプションが負荷されているだけなのだ。またひとつ世界の真実に気づいてしまった。