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田舎エミネムの合コン。

二十歳前後の冬。


私は若さに任せ、
毎晩爆裂にお酒を飲んでいました。


スポーツ上がりの人間でしたので、
人並み以上には飲めましたが、
性格通りしっぽり派。



もっさい毎日の私。
初めて合コンに誘ってもらえます。



全身にみなぎる野生のENERGY。

早速頭の中では、
戦略シミュレーションが始まります。




よしっ。



「まずはバイト代を切り崩して、ブランド服を買いに行こう!!」


まずは見た目から自信をつける作戦です。

あれもこれも高いですが、そんなことはもう関係ありません。


合コンには修羅が集まると聞いています。




そして、
雑誌に忠実なB-BOY君誕生。



心も体もエミネムです。
マムズスパゲティです。


/夜更かしすなyo\


そんなこんなで当日を迎えたエミネム君。


怖いし、胃も痛いです。


中身と外見が乖離しすぎて、今にも引き裂かれそうです。




先に友達の男性陣が座って待っていました。

私含め全員が見様見真似ファッションに
身を包み、


「俺イケルぜ!」


と口を揃えて言います。


ですが、
自分たちではもうわかっていました。

知らない女性陣登場にビビり散らかしていることに…


ひぃ!




「こんばんは~。」




女子軍登場。




上から下、左から右へと
品定めタイムが始まりました。



そして静かに、
膨れ上がった妄想が、
よりリアルなものへと小さく小さく
アジャストしながら萎んでいく表情が見て取れました。



女の子達も僕らと同じような、
滲みでるかっぺの合コン一年生感。




互角の合戦。



4対4のグループ面接来たのかと思うほどの、
ぎこちないやり取り。




「私お酒強いですよ~」
そうアピールをしては、
ジュース酒を飲み干し、頑張って中身のない話をしていました。





全員の背中が煤けている。




そこにだけ、不思議な一体感がありました。




私も、多分周りももっと

合コンとは楽しいものであり、
若者にとって最高の遊びだと、

そう思っていたに違いありません。



そんなのは、幻の都でした。




知らない者同士が急に向かい合って、
酒飲んで話して面白いはずがありません。



頑張ってためたバイト代を切り崩して、
高い服や靴を買ってみてくれ良くして、



薄々のメッキ見せあって…









悲しすぎるよっ!!





悲しすぎるよぉ。




そう私は自分を責めながら、
一人しっぽりモードに入っていっていました。



なれなかった夢


半日座っていたように感じましたが、
まだ三時間程しか経っていませんでした。


無理して飲んでいたのでしょう。
皆顔色が悪く、具合悪そうにつぶれていました。



もう帰ろう。

高い勉強代だったな。



そう店を後にして解散した後、

一人酔って歩けなくなった女の子がいました。



帰りが同じ方向だったため、
介抱しながら帰ることに。



動かない彼女を見て
別の女の子が言いました。



「おんぶして家まで運んであげて。」



言われるがままに、
女の子を背負って歩き出す私。




(女の子っていうのは意外と軽いんだな…)




一歩また一歩と踏み出していきます。




何だろう…



徐々に芽生える不思議な気持ち…




これは…




「合コンって楽しいゾ!」




そうです、私は底の浅い人間です。







極寒の真夜中に、彼女の吐息が首筋に当たります。


それはとても小さな呼吸でしたが、
少しずつ背中全体をも温めてくれました。




なんとか家まで送り届けた後、
まんざらでもない顔で一人帰路につく私。





いいこともあるもんだな。
また一つ勉強になったよ。






しかし、なんか
さっきから臭いな…




自分から…?




背中が異常に冷たい…






(うっわ…)





首からお尻にかけて彼女の嘔吐物で
ひたひたの私。




込み上げる貰いゲ〇を我慢して、
小走りで帰路につくのでした。




完。




あとがき


あれ以来一度も合コンと名の付くものに
参加したことがありません。

良い思い出なのか、悪い思い出なのかと言われると、
悪い思い出です。


ブランド物のクリーニング代は高い
ということもまた一つ勉強になりました。

(ニットはカチカチに縮んで捨てました。
ありがと!)


それではまた。


ヤギにも僕にも電流走りました。

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