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VSおじ釣り。

つい何年か前。
一人でできるアウトドアを探していました。
そこで思い出したのが釣り。



お金をかけたくない一心で100均に走りました。


本当に驚くことに
ダイソー釣り具の進化も目まぐるしく、
高いものと見た目はそう変わりません。
細かなものも沢山置いています。



ルアーを端から買っても1000円程。
どれが釣れるか試してみようかなと、
\ワクテカ/で港へ向かいました。



根掛かりも怖くないね。



その日は快晴で空が綺麗に澄んでいました。
気温も適度に暖かく、
風も気持ちよく吹いています。
正に抜群の釣り日和!


人もほとんどいませんでした。


小さいバケツに
ちょこっとだけの釣り具を入れて、
堤防の上を少し散歩します。


遠くの地平線に吸い込まれるように、
久しぶりの海を満喫していました。


おら、磯のにおい好き。


平均台を歩くようにして、遠くのスポットへと歩いていきます。
海面は穏やかで、太陽の光を細やかに反射しています。



「~♪」


鼻歌交じりで、
首を横に海を見つめていました。






「ピト…」





顔にクモの巣がかかった感触がありました。

「う…」


そのままゆっくり後退し、
南斗水鳥拳を構えたその時。







「おい!!ごらぁぁ!!!」




ひっ…!



数m離れたところで投げ釣りをしていたおじさんが、
鬼の形相で激怒していました。


どうやら、
クモの巣ではなくておじさん(おじいさん)の釣り糸だったようです。

誰もいないと思っていたので
注意を怠ってしまいました。これは失敬。



私は即座に、

「すみません!申し訳ないです!」


と短く発し、
堤防から降りて彼をぐるりと避けて
また目指すポイントへと歩き始めました。




「ふひゅう…」

と息をついた束の間、
何故か彼は私を追うように近づいてきます。





「こっちはなぁ釣りしてんだよ!!」

「見てわからない!?あぁ!??」




最高の日が最悪の日になった瞬間でした。





必要以上に絡み続けてきます。



「なぁ!?見てわからないのか!?」
「あぁ!!?」




うわぁ変なやつか~。



その後も続くとめどない怒声。


私は謝りながらも、
なんて長尺の怒りなんだと。
その源はなんなんだと。
彼をまじまじ見ていました。



どうせ朝から全然釣れてなくて、
機嫌悪いやつなんだろ。

そう思い、



「そういうときもあるしょ。」
「釣りなんだから。」

という顔で受け流していました



程なくして、
私の100均釣り具セットを馬鹿にし始める始末。





カチンときた私は、彼の空であろう
クーラーボックスに視線を移し、
大袈裟に鼻で笑ってその場を後にしました。




ここからは、
糞おじVS100円おじ 炎の釣り対決です。



私はかっとなった頭を冷やしながら、
(この百均セットでバンバン釣って、
絶対彼奴にぎゃふんと言わせてやる!!)

そう鼻息荒く意気込んでいました。



遠くの方でおじさんの仲間が一人来て、
二人私に指を指しながら何やら談笑しています。



私は燃えました。

ルアーでの釣りは正直難しい。
しかも百均である。尚且つ腕はない。

がしかしね…



私にはハートがある!!





私は色んなルアーを付けては外し、
色んな深度、動かし方を試し、魚を呼び込んでいました。




暫く静寂が続いた後…




「バシャンッ!!」




一瞬大きく水面が揺れました。





糞おじヒットです。




割と大きな青魚だったように見えました。


がはがは上機嫌そうな声が聞こえてきます。





(まだ始まったばかりね。余裕です。)

私は下唇を噛みながら、
小さく場所を変えては、竿を振っていました。






「バシャンッ!!」





おっ!?





糞おじヒットです。




でかそうな何かを釣り上げていました。
悔しくて見れません。




何故か彼奴の体は2匹目を釣りあげて以降
私の方にずっと正対していました。






(2-0で諦めるやつがどこにいる…!!)






私は大きく深呼吸をし、
遠い海の神様に願いを込めながら、
キャストしていました。



彼奴が釣れているということは、
ここら辺に魚の群れらしきものが
来ているはず…!!
諦めるなっ!!




「バシャシャッ!!」






糞おじにヒット。




サビキで2,3匹同時にかかっていました。











気づけば夕方。

私はその日一匹も釣れませんでした。




私は思い出していました。


「そういうときもあるしょ。」
「釣りなんだから。」




ぐぎぎきぎぎ……




あのおじさんはもういませんでした。




今日この港では、

彼奴が白で私が黒でした。




悔しくて枕を濡らしたそんな話。



完。




あとがき

コテンパンにやられた私は、
100均ルアーで来る日も来る日もおじさんの幻影を消すが如く、釣りに勤しみました。笑


ウグイ(普通食べない魚)しか
釣れませんでしたが、頑張って食べました。
美味しかったです。


勝ったものがルール。そんな経験談でした。

今は餌釣りしかしていません。笑


この人も釣れてませんね。

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