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小さいけれど新しいことが出来た日


昔から、新しいことを始めるのを躊躇いがちな性格で、無難を選んできた私ですが、そのくせ心の中では新しいことを始めたい、挑戦してみたいと思っていて、心で思っていることと行動が一致しないという人生を過ごしてかれこれ二十数年程が経ちました。

もう30歳なのですが、こんな私がいきなり変わることは難しいだろうなと思いつつ、でも、なんかこのまま無難なのも嫌だし、やってみたいことがあるのに何もしないのもダメな気がすると思うこの頃。いきなり突拍子もないことは出来ないので、ひとまず日常からじわっと新しいことを始めてみようかと思い、最近、ランチに一人でおしゃれなカフェ(おしゃれかどうかは個人差があります)で食事をする、ということをやってみました。

カフェくらい、一人で行けるでしょう、と思われるかと思いますが、私にはこれがなかなかハードルが高いのです。

普段のお昼ご飯は、職場近くのコーヒーチェーン店と決めています。営業先への外出があっても無くても、基本的にこのチェーン店でサンドイッチとカフェオレ、もしくはパスタセットを食べるのが日課です。実は最近職場が移転したのですが、移転する前も職場近くの違うコーヒーチェーン店にほぼ毎日通っていました。新卒で入社してからずっと通い続けていたので、おかげ様で店員さんに顔を覚えられ、私も店員さんの顔を覚え、顔見知りになったころに店員さんが入れ替わる様子なんかも見てきて、ただの客なのですがただの客ではないような、そんな感覚を味わったお店でした。

話は長くなりましたが、そんなこんなでランチでさえも冒険しない日々を過ごしてきたので、まず場所を変えるということが私にとってはけっこう大変なことなのです。

そして、最もハードルが高いのは、新しいお店での注文方法が分からなかったどうしよう、ということ。え?そこ?と思われそうですが、そこなのです。

先に注文するタイプか、席に着いたら店員さんが来てくれるタイプか、はたまた食券タイプか。どれでもいいじゃない。行ってみて、分からなかったら聞けばいいじゃない。そうなんです。そうなんですけど、その聞くということが、なんだか恥ずかしく思ってしまい、勝手知ったる店に流れてしまうのでした。

それから、もし机に注文用のベルが無かったら「すみませ~ん」と言わなければならない…私は声が小さいのにどうしよう…とか、扉を開けても店員さんが気づかなくて待ちぼうけしたらどうしよう…とか、そんなどうでもいいことがわらわら頭に湧いてきます。ということで、もういつもの店でいいや、となってきた私ですが、本当はたまに美味しそうなお店やおしゃれなお店で、普段と違うランチを食べて気分を上げたり、ちょっとずつお店を開拓したりしてみたい気持ちはいつだってありました。

先日、午後イチで営業訪問があったのですが、最近はあまり訪問していなかったエリアに久しぶりに行くことになりました。アポイント後にお昼を食べようと思っていたので、その周辺を少しリサーチしたところ、私がよく行くチェーン店が出てきました。ここにするか、と思ったのですが、いや、最近行かなくなったエリアに久しぶりに行くのに、またこのお店に行くのか、私よ?と思いとどまり、Googleマップで「カフェ ランチ」と検索したところ、チェーン店とは別のカフェ(いわゆるこれが、私にとってのおしゃれなカフェ)がたくさん出てきました。

その中で、メインはお菓子屋さんですが実は奥のほうにカフェを運営し、食事メニューも提供しているというお店を発見。割と入りやすそうな雰囲気であることを食べログの写真で確認し、このお店に行ってみることにしました。

営業訪問が終わり、いざ例のカフェへ。事前にリサーチしていたので迷わずすぐお店の前に着きました。お店の前に置いてあったメニューボードには11時からランチやってます、の文字と写真があり、私はそれを見ながら(知ってますよ、さっき食べログで見ましたから)と心の中で言いながら、でも、一向に足はカフェへと向きません。ここに入ると決めているのですが、入るかどうか迷っている人を演じてしまいます。その実、誰か私より先にお店に入る人がいないかな…と、手本になるような人が現れるのを期待したり、ちらっとお店のほうを見て、どんな客層がいるのか把握しようとしたりして、心の準備をしているのです。

そんなこんなで心の準備が整い、いざ入店。恐る恐る扉に手を掛けると、ガラス越しに見えた店員さんがにこりと微笑んでくれました。店員さんに気づかれなかったらどうしよう問題はクリア。お好きな席にどうぞ、と言われて店内を見渡すと、2~3人の学生さんやママさんグループをはじめ、4人組のご婦人方などが食事を楽しまれていて賑やかな様子です。1人のおじ様が読書をされていたのですが、その隣のスペースが空いていたので、なんとなくお一人様の近くのほうが落ち着く気がして、その席に座ることにしました。

3種類あったランチメニューのうち、2つが魚、1つは肉がメインで、肉のほうはちょっと高かったのですが、今日は私にとっては小さいけれど新しいことが出来た記念日だったので(大げさ)、肉メインのランチにしました。机に呼び鈴はありませんでしたが、店員さんがすぐに注文を取りに来てくれたので「すみませ~ん」と言わなきゃいけない問題もクリア出来ました。

あとは料理が運ばれてくるのを待つだけと思っていたら、店員さんが戻ってきて、実はお肉メニューが本日分終了したと、申し訳なさそうに謝ってきました。残念でしたが、魚のランチに変更しました。それから10分~15分ほど待って、食事が運ばれてきました。思っていたより野菜がもりもりで、普段サンドイッチに挟まった程度の野菜しかお昼に食べない私には多すぎるくらいでしたが、たまにはいいなと思いました。魚も美味しかったです。

お店を出て、良いお昼の時間だったなと思いました。食事が美味しかったのは勿論なのですが、私ってカフェに一人でも入れるじゃん、という至極普通の出来事がなかなか嬉しかったのです。

私には、やってみたいことがまだたくさんあります。中には、大きな何かを成し遂げてみたい、といった半ば妄想に近いようなこともありますが、実はけっこう、このランチみたいに小さなやってみたいことも多いです。こんな風にして、小さな新しいことをこれから少しずつ積み重ねていきたいなと思いました。

年々思うのですが、歳を重ねれば重ねるほど、新鮮さは失われていくように思います。それでも良いのですが、時々たまらなく退屈になる。なので、時々こうやって新鮮さを求めて、私の人生もまだまだ捨てたもんじゃないと思っていたいのです。

このランチから数日。結局私は職場近くのコーヒーチェーン店に通うのが日課ではありますが、また来週、別のエリアに営業訪問の予定があるので、その時は知らないお店でランチを楽しみます。

次は何をしてみようか。考えるのもまた楽しい時間です。

というわけで、オチも何もないただの日記でしたが、最後まで読んでいただいたみなさま、ありがとうございました。


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