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「スピッツ」という名前の天気があれば、それはきっとこんな雨。水を得た魚こと、サカナクションとリスナー~私とサンサンのラブシャDay2~

 8/31(土)午前、仕事が入った。その日、私はラブシャだった。
 それはそれは運命を呪ったが、とりあえず午後からでも行こうと意地を固めた。
 そしたら奴が来た。

 台風10号、その名をサンサン。無駄にご機嫌な名前のそいつは、西日本をゆっくり堪能しつつRUSH BALLを叩き潰し、その手をラブシャに伸ばしてきた。
 
 勘弁しろよ、雨の中仕事して、しかもラブシャに行けなくなったらどうすんだよ。死ぬぞ。サンサンてめぇ来んなよチケットも持ってないくせに。

 しかし、サンサンは私に味方した。まず午前中に入っていた仕事を潰した。大雨の中やるほどではないという判断が上から下った。
 そして、ラブシャ当日。万全の雨対策をして向かった山中湖は、

メインステージ

 晴れていた。なんなら暑い。昨日の雨で足元は大水溜まりになってたが、ラブシャ参加者は基本水の民である。

 水溜まりに浮かべる用のアヒルを自宅から連れてくるくらいの余裕すらある。これぞ粋。これぞラブシャ。
 足元の泥沼以外は全て順調に楽しんでいた午後2時半、奴が来た。サンサンに寄ってきた、雨雲である。
 前も見えないほどの大土砂降りに、慌ててラウンジに逃げ込む。そのまま一時間半、テントの屋根を叩きつける豪雨の音を聴いていた。
 このまま中止か、あわや去年のセカオワの二の舞かと危ぶまれたその時、雨の音が弱まった。
 さっきまで隣の人の声すら聞こえないレベルの豪雨だったのに、急に静かになる。
 3年前のJAPANJAMを経験した私にはわかる。あの時も一日中雨で、しかしこの瞬間は止んでいた。 

 スピッツのステージ準備が始まったのだ。
 雨が弱くなってから約一時間後、スピッツのステージが始まった。

以下セトリ
1.空も飛べるはず
2.ハチミツ
3.恋する凡人
4.怪獣の花唄 (Vaundyカバー)
5.魔法のコトバ
6.優しいあの子
7.スパイダー
8.美しい鰭
9.8823
10.野生のポルカ

 天気に「スピッツ」という名前のものがあれば、それは間違いなくあの夜の雨。
 目に見えないくらいの優しく細かい霧雨。ライトでキラキラ光る柔らかな水の粒は、まるでライブ演出だ。台風の気配を感じさせない、風のない暖かな、スピッツという天気。
 天気を操る、とまでは言わないけど、本当に本物のアーティストは、音の届く範囲のものを支配してしまうんだろうな。
 37年間、日本のどこかできっと毎日鳴っていた彼らの音楽。日本も、きっと彼らの音を愛してる。そんな魔法のステージだった。

 スピッツが去ったあと、雨の力は増していく。ラストアクト、サカナクションのステージに向けて、地上の水は増えていく。最早、ステージの他に陸地はない。でも、それを憂う人もいない。

 地上も空中も水に満たされて、彼らが現れた。

 以下セトリ
1.Ame (B)
2.陽炎
3.アイデンティティ
4.ルーキー
5.Aoi
6.ショック!
7.モス
8.新宝島
encore
9.チェリー (スピッツのカバー)
10.夜の踊り子

 キラーチューン爆発、見えない夜に月の代わりに引っ張ってきた山口一郎は、私たちを踊らせる。
 鬱と揺り戻しによる、彼の体調が心配だった。どうかこの夜が終わっても、この雨が彼に優しくありますように。私たちが彼らから貰った音楽が、多幸感が、高揚感が、この夜が、未来の彼を守りますように。
 夏フェスに、夜に、雨にぴったりなバンドだった。この夜は彼らのもの、この音の届くすべての範囲が、サカナクションだった。

撮影許可あり

 スピッツのVaundyカバーも、サカナクションのスピッツカバーも、愛。
 スペシャで放送を見て、このフェスへ出演する思いを募らせるのも、それを実現させるのも、愛。
 大雨の中、払い戻しありでフェス敢行する運営も、雨対策して数多の通行止めを潜り抜けて現着した参加者も、愛。
 雨を浴びて楽しんで、わざわざアヒルを持ってきて水に浮かべるのも、どろどろの地面を「ドラクエの毒沼」って表現するのも、愛。

 SWEET LOVE SHOWER 2024、この夏最後の、愛と音楽の祭典でした。行けて良かったです。
 
 自宅にて、今日の参加者に想いを馳せながら、叫びすぎて痛めた喉を労りつつ。

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