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#69 データ型小論文 問題と解答例③「日本の若者の自己肯定感」

次の資料を読み、あとの問いに答えなさい。

[資料1]現代日本(2013年と2018年)の若者の自己イメージ

 以下のグラフは内閣府によって2013年と2018年に実施された「我が国と諸外国の若者意識に関する調査」のデータをもとに作成したグラフです。対象年齢は13~29歳です。各項目に対して「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」「どちらかと言えばそう思わない」「そう思わない」のいずれかを答える形式で行われました。数値は「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」の2つの回答を合わせたものとなっています。

A:私は、自分自身に満足している
B:自分には長所がある
C:自分の親から愛されていると思う
D:自分の考えをはっきり相手に伝えることができる
E:うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む
F:今が楽しければよいと思う
G:自分は役に立たないと強く感じる
H:人は信用できないと思う
I:よくうそをつく
J:早く結婚して自分の家族を持ちたい

[資料2]日本の若者と諸外国の若者との比較(2018年)

 以下のグラフは資料1における2018年の調査のA「私は、自分自身に満足している」とB「自分には長所があると感じている」の項目における日本と諸外国の数値を比較したものです。数値は「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」の2つの回答を合わせたものとなっています。

[資料3]日本の大学進学率の推移

 以下の表は2020年に文部科学省が公表した「大学入学者数等の推移」のデータをもとに作成した表です。数値はその年の大学進学率を表しています。

[資料4]日本のスマートフォンの所有率の推移

 右のグラフは総務省による2020年に実施された「ICTサービスの利用動向」のデータをもとに作成したグラフです。数値とグラフはその年のスマートフォンの所有率を表しています。

[資料5]生徒たちの話し合いの記録

 以下の文章は、資料1~4を見た4名の生徒たちの話し合いを文字起こししたものです。
A:今(2018年)の若者の自己イメージは少し前(2013年)を比べると、( ① )ね。
B:そうだね、特に「 X 」の項目の落ち込みは大きいね。
C:他国と比べても、この項目の数値は低いね。勿論、国民性や文化が違うから、単純に比較することをできないと思うけど。日本には謙遜を美徳とする価値観があるし。
D:たしかに。けど、同じアジア圏である韓国と比べても日本は低いよ。昔と比べても他国と比べても、日本には自分に自信のない若者が相対的に多いということになるね。
C:ちなみに、他国にも日本のような現象は起こっているのかな?
A:調べてみたら、数値が上がっている国もあれば下がっている国もあるよ。項目によって変化がそれぞれ違うし。少なくとも日本のようにわかりやすく( ① )ような傾向はなかったね。
C:じゃあ、これは日本だけの特徴ってこと?
A:そう言えると思う。
B:それは不思議だね。日本は2013年の頃と比べると、今(2018年)は大学進学率が16.6%も上がっていて、スマホ所有率も3.4%も上がっているのに……。日本の若者は自己肯定感が低いのかな……。
D:そういうことになるよね。大学という広く世界を知ることができる場所に行く人が増え、スマホという世界のことを調べられる手段を持つ人が増えているのに、肝心な( ② )を発見することができていない。そんな風にも言えるんじゃないかな。
A:それは悲しいことだね。「 Y 」と考える人の割合も大きく増加しているし……。

問1 空欄X・Yには資料1の質問項目A~Jのどれかが入ります。入る語句として正しいものをA~Jの中からそれぞれ選び、記号で答えなさい。
A:私は、自分自身に満足している
B:自分には長所がある
C:自分の親から愛されていると思う
D:自分の考えをはっきり相手に伝えることができる
E:うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む
F:今が楽しければよいと思う
G:自分は役に立たないと強く感じる
H:人は信用できないと思う
I:よくうそをつく
J:早く結婚して自分の家族を持ちたい

問2 空欄①に入る内容として正しいものを次の選択肢の中から1つ選び、記号で答えなさい。
ア 自分のポジティブな部分が増加していて、自分のネガティブな部分が減少している
イ 自分のポジティブな部分が減少していて、自分のネガティブな部分が増加している
ウ 自分のポジティブな部分が増加していて、自分のネガティブな部分も増加している
エ 自分のポジティブな部分が減少していて、自分のネガティブな部分も減少している

問3 空欄②に入る語句として正しいものを次の選択肢の中から1つ選び、記号で答えなさい。
ア 理性
イ 社会
ウ 国家
エ 変化
オ 自己

問4 生徒A・B・C・Dの中で明らかに誤った発言をしている人が1人います。それは誰か、記号で答えなさい。

問5 資料1~5から読み取れる社会課題の改善策について、600字以内であなたの意見を書きなさい。

解答

問1【正解】
(X)B:自分には長所がある
(Y)H:人は信用できないと思う

問2【正解】
イ 自分のポジティブな部分が減少していて、自分のネガティブな部分が増加している

問3【正解】
オ 自己

問4【正解】
B:「大学進学率が16.6%も上がっていて、スマホ所有率も3.4%も上がっている」の部分
※ 正しくは「大学進学率が3.4%も上がっていて、スマホ所有率も16.6%も上がっている」

問5(解答例)
 日本の若者の自己肯定感が下がっているのは、社会が時代に合わなくなったからである。現代は「みんな同じ」である同質性よりも「人と違う」個性に価値が置かれている。しかし、日本人は人と違う自分を受け入れにくい性格をしている。なぜなら、日本は島国で原則として単一民族国家だからだ。アメリカ等と異なり多民族国家ではない。だから、日本社会は自然と同質性が重要視される。
 しかし、時代は変化した。スマホが広く普及し、人々は様々な情報にアクセスしやすくなった。そのために、多くの人々は相対的にだが世界が広がったと言える。とすると、現代の日本は、同質性の中で多様性が求められ、閉じた中で世界が広がっていることになる。これは矛盾である。若者の自己肯定感の低さは、この日本社会の矛盾に苦しんだ結果ではないだろうか。
 だから、日本はまず教育のあり方を変えるべきだ。具体的には、同一の制服・同一の頭髪にしなければならないような校則を改めるべきである。また暗記型の教育方法も改めるべきである。暗記学習は一律に同じ答えを求める教育でもある。多様性が求められる時代に同質性を強要することは、若者の文化と価値観を歪にさせてしまう可能性がある。
 そうなれば、今後の日本社会はグローバリゼーションの潮流についていけなくなる。少なとも、若者の幸福を思いやるのであれば、日本社会はもっと時代に合った教育を模索すべきである。(586字)

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