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#95 小論文の型②:課題解決型(解答例付き)

「入試に小論文がある。けど、何をどうしたらいいのかわからない……。」
「とにかくシンプルな説明で書き方が知りたいんだけど……。」
 このように考えている人はひとまず以下の「2つの型」を知りましょう。

 世の中のほとんどの小論文は、この2種類に分類することができます。「意見提示型」と「課題解決型」です。勿論、複雑な内容を要する小論文の問題はたくさんあります。しかし〈書き方〉の観点から抽象化した場合、大抵は「意見提示型」と「課題解決型」のどちらかの型を用いて書くことになっています。
 ですので、小論文のことで悩んでいる人は、ひとまず以下の解説を読み、この「2つの型」について理解しましょう。800字以内(原稿用紙2枚以内)の解答例とシンプルな解説を載せています。基本にして根本を説明した解説です。
 2つの型を知ることは〈書き方〉の〈考え方〉を知ることになります。そうすることで基礎力がつき、汎用性のある対応力が身に付きます。
 今回は「課題解決型」のほうの解答例と解説を掲載します。前回#94では「意見提示型」のほうを掲載します。どちらも合わせて読んでみて下さい。

【解答例】
 現代日本の解決すべき課題の1つに高校の教育が挙げられる。なぜなら、高校の授業は大学入試の実態と少しずれているからだ。2021年では、一般入試で大学に入学する学生は全体の49.7%であった。一方、総合型のような様々な形態の推薦入試で入学する学生は50.3%である。そのため、現代では一般入試向けの教育だけでなく、様々な形態の推薦入試にも対応できる教育が必要だ。けれども、多くの学校でそれができていない。
 なぜか。理由は複数ある。1つには一般入試向けの教育のほうが、学校側が安心できる点がある。学校の評価は客観的で公平でなければならい。そのためには、あらかじめ正解/不正解が分かれるような問題設定のほうが良い。そうしたほうが、学生側から文句が出ないのだ。また、先生たちの多くが、一般入試を経験した世代である点も理由の1つと言えよう。いわば、先生は自身の経験を踏襲したいのである。しかし、今の時代に求められているのは、未来をデザインする力だ。それが推薦入試という形態で図られている。だから、保守的・前例踏襲的な姿勢で行われる教育は是正されるべきだ。
 そこで、これからは学生が自分に合った学習方針を選択できるようにするのはどうか。一般入試に向けた「積み重ね型の学習」と推薦入試に向けた「ジャンプアップ型の学習」の2つコースを選択できるようにする。前者は座学の講義形式、後者は探究活動教育の形式をとる。そして、後者の評価が主観的にならないようにするため、評価者を複数にする仕組みや、評価者を評価する仕組みを導入する。これは1人の生徒を複数の教員で審査し、生徒も教員を評価する仕組みである。複合的で相互監視的な評価制度である。そうすることで、できる限りの公平性を保つことができる。それで2方向の教育が実現できる。そうすることで、学生の中でも多様性が増し、日本の未来が良くなる可能性も出てくる。(779字)

[全体のイメージ]
① 現在に対する適切な認識
② 過去にあった原因分析
③ 未来へ向けた解決策の提案

 現代日本の①解決すべき課題の1つに高校の教育が挙げられる。なぜなら、高校の授業は大学入試の実態と少しずれているからだ。2021年では、一般入試で大学に入学する学生は全体の49.7%であった。一方、総合型のような様々な形態の推薦入試で入学する学生は50.3%である。そのため、現代では一般入試向けの教育だけでなく、様々な形態の推薦入試にも対応できる教育が必要だ。けれども、多くの学校でそれができていない。

[序論]
① 社会的に解決されるべき課題を発見する
(課題の内容や問題性を丁寧に説明する)
※ 客観的に問題の“深刻さ”を示せると良い

 ②なぜか。理由は複数ある。1つには一般入試向けの教育のほうが、学校側が安心できる点がある。学校の評価は客観的で公平でなければならい。そのためには、あらかじめ正解/不正解が分かれるような問題設定のほうが良い。そうしたほうが、学生側から文句が出ないのだ。また、先生たちの多くが、一般入試を経験した世代である点も理由の1つと言えよう。いわば、先生は自身の経験を踏襲したいのである。しかし、今の時代に求められているのは、未来をデザインする力だ。それが推薦入試という形態で図られている。だから、保守的・前例踏襲的な姿勢で行われる教育は是正されるべきだ。

[本論]
② 課題の原因を分析する
・課題は1つであったとしても原因は必ず“複数”ある
・原因にはさらに“原因の原因”がある
→ 原因分析は必ず“多面的・多層的”に行なう必要がある

 ③そこで、これからは学生が自分に合った学習方針を選択できるようにするのはどうか。一般入試に向けた「積み重ね型の学習」と推薦入試に向けた「ジャンプアップ型の学習」の2つコースを選択できるようにする。前者は座学の講義形式、後者は探究活動教育の形式をとる。そして、後者の評価が主観的にならないようにするため、評価者を複数にする仕組みや、評価者を評価する仕組みを導入する。これは1人の生徒を複数の教員で審査し、生徒も教員を評価する仕組みである。複合的で相互監視的な評価制度である。そうすることで、できる限りの公平性を保つことができる。それで2方向の教育が実現できる。そうすることで、学生の中でも多様性が増し、日本の未来が良くなる可能性も出てくる。(779字)

[結論]
③ 課題の解決策・改善策を提案する
→“未来と社会”に向けた内容が望ましい
(“新しい視点と公益性”が必要)

 以上の通り「課題解決型」の基本は「①課題発見 ②原因分析 ③課題解決」の展開です。これには発見力・分析力・解決力が必要です。言い換えると、気づく力・考える力・変える力という様々な思考力と発想力が必要です。すなわち、知識・知性・専門性・人間性をトータルした〈総合的〉な能力が必要です。
 この点は総合型選抜(AO入試)で小論文が実施される事情に通じてきます。いわば、小論文1つで上記の様々な能力を計ることができるのです。だから、選抜する側(大学側)においては、ある意味で効率が良いわけです。それが課題解決型が出題される理由です。
 課題解決型は、型を作る点については難しいものではありません。ただし、その中身の質(クオリティ)を上げるのは簡単ではありません。理由はすでに説明した通り「発見力・分析力・解決力」「気づく力・考える力・変える力」という様々な力が必要だからです。
 しかし、だからこそ、まずは的確な〈書き方〉と〈考え方〉を持ちましょう。それが上達の近道です。ですので、まずは上記を解説をよく覚えておきましょう。そしてその後はそれぞれに練習を積み重ね、人間力を含めた様々な力を養っていきましょう。

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