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#67 データ型小論文 問題と解答例①「日本社会の歪み」

次の資料を読み、あとの問いに答えなさい。

[資料1]現代日本の満足度

 下のグラフは内閣府によって2019年に実施された「国民生活に関する世論調査」のデータをもとに作成したグラフです。「現在の生活に対する満足度」の項目における「満足している」「まあ満足している」の数値のみをグラフにしたものです。回答はほかに「どちらともいえない」「やや不満だ」「不満だ」「わからない」があります。

[資料2]日本の少年犯罪の数

 以下のグラフは2019年に発表された、法務省の「令和元年版 犯罪白書」の中の「少年による刑法犯 検挙人員・人口比の推移」のデータをもとに作成したグラフです。いわゆる少年犯罪の数の推移を表したものです。数値は犯行時20歳未満だった者の数となっています。

[資料3]日本の格差拡大の推移

 以下の表は2020年に発表された厚生労働省の「所得再分配調査」における「所得再分配によるジニ係数の改善の推移」のデータをもとに作成した表です。「ジニ係数」とは主に社会における所得の不平等さを測る指標です。0から1で表され、それぞれの人の所得が均一で格差が全くない状態を0、たった1人が全ての所得を独占している状態を1とします。要するに、数値が大きければ大きいほど格差が大きいことを示しています。以下の表の数値は当初所得ジニ係数の数値です。

[資料4]日本におけるヤクザの数

 以下のグラフは2021年4月に発表された警察庁の「令和2年における組織犯罪の情勢」における「暴力団構成員等の推移」のデータをもとに作成したグラフです。暴力団とは、犯罪活動によって収入を得る反社会的勢力のことで、いわゆる「ヤクザ」とも呼ばれる集団のことを指します。

[資料5]相対的貧困率と子どもの貧困率

 以下のグラフは2020年に発表された厚生労働省の「国民生活基礎調査」のデータをもとに作成したグラフです。「相対的貧困」とは、簡単に言うと、社会の構成員として「あたりまえの生活」をいとなむのに必要な水準を欠いている状態のこと、もしくは憲法25条「健康で文化的な最低限度の生活」を保てていない状態のことです。

問1 資料1~5のデータから読み取れる内容として正しいものを以下の選択肢から5つ選び、記号で答えなさい。

ア 日本では暴力団の構成員の数が増加するのと比例して、少年犯罪の数も増加している。
イ 日本では暴力団の構成員の数が減少するのと比例して、少年犯罪の数も減少している。
ウ 日本では暴力団の構成員の数は増加しているが、少年犯罪の数は減少傾向にある。
エ 日本では暴力団の構成員の数は減少しているが、少年犯罪の数は上昇傾向にある。
オ 日本では格差が拡大するのと同時に、相対的貧困率も上昇傾向にある。
カ 日本では格差は縮小しているが、相対的貧困率は上昇傾向にある。
キ 日本では格差は拡大しているが、相対的貧困率は減少傾向にある。
ク 日本では格差が縮小しているために、相対的貧困率も低下してきている。
ケ 日本では、上回るほどではないが、子どもの貧困率が相対的貧困率に近づいている。
コ 日本では2000年代に入ってから子どもの貧困率が上昇傾向となってきた。
サ 日本では、子どもの貧困率と相対的貧困率とは反比例する関係となっている。
シ 日本では2010年以降に子どもの貧困率が相対的貧困率を上回ったことがある。
ス 日本では少年犯罪の数と子どもの貧困率とが比例する関係となっている。
セ 日本では格差が拡大するのと比例して、暴力団の規模も拡大している。
ソ 日本では格差が縮小するのに比例して、暴力団の規模も縮小している。
タ 日本では暴力団の規模は縮小傾向にあるが、他方では格差の拡大という別の負の問題が生じている。
チ 日本では子どもの貧困率が高まっている影響で、生活の満足度は世代が上になるほど高まっている。
ツ 日本は子どもの貧困率が高まるのに比例して、若者の生活に対する不満も他の世代と比べると高まっている。
テ 日本では子どもの貧困率が1980年代と同じくらい低下しているため、若者は現在の生活に満足している。
ト 日本は子どもの貧困率が高まっているにもかかわらず、若者は比較的現在の生活に不満を持っていない。

問2 資料1~5のデータから読み取れる社会課題を1つ設定し、その改善策について、600字以内であなたの意見を書きなさい。ただし、必ずしも全てのデータに言及する必要はありません。課題の設定は、いずれかのデータに関連する内容であれば、各々自由に行なってくれて構いません。

解答

問1【正解】
イ 日本では暴力団の構成員の数が減少するのと比例して、少年犯罪の数も減少している。
オ 日本では格差が拡大するのと同時に、相対的貧困率も上昇傾向にある。
シ 日本では2010年以降に子どもの貧困率が相対的貧困率を上回ったことがある。
タ 日本では暴力団の規模は縮小傾向にあるが、他方では格差の拡大という別の負の問題が生じている。
ト 日本は子どもの貧困率が高まっているにもかかわらず、若者は比較的現在の生活に不満を持っていない。

問2(解答例)
 資料からは日本社会の良し悪し両面が読み取れる。資料1・2・4からは現在の平和が、資料3・5からは未来への困難が読み取れる。これは決して楽観視できる問題ではない。しかし、世間では注目されているように見えない。もし注目されていれば、若者の満足度は資料1のように高くなっていないだろう。
 なぜ注目されないのか。それは終身雇用制と年功制が当然の世代、すなわち高齢者・中高年世代にあまり関心のない話題だからだ。終身雇用制だと格差の下層に回る機会が少なく、貧困層にも落ちにくい。なお日本は年代別人口比で言うと、高齢者・中高年世代が大きな割合を占める。また政治・メディア・教育の重要ポストを担う人々の多くも終身雇用世代だ。この状況下で若者が未来の困難さに気付くのは難しい。
 そのため、今後の日本には政治・メディア・教育における根本的な価値観の改革が必要だ。現在の満足よりも未来への投資、もしくは現在の平和よりも未来の幸福に重きを置く価値観を醸成するべきだ。そしてそれを全世代で共有することが大切だ。でなければ、若者は選挙に行かないだろう。現在が平和で満足できる社会なら、わざわざ選挙に行って社会を変える必要はない。しかし、そうなると、格差の下層や貧困層にいる人々はいつまでたっても救われない。それは、今は大丈夫でも、いずれ社会全体を劣化させる。そうならないためにも、今後の日本には新たな価値観が必要である。(594字)


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