風は今日も吹く
時間という悪魔に創作の熱が消されてしまわないように、私は今日もこの世界を動く。
今回は原泉アートプロジェクトのお話をもらって、下見へ来た。
初めて来たところだけど、なんだか懐かしい。
日本人の心にある原風景がここにはあるんじゃないだろうか。
過疎化が進んだこの場所に、使われなくなった茶工場がある。
その中の空間は異世界だった。
使われなくなった茶工場はアトリエになっていた。
木材やモルタルを組み上げ、発砲ウレタンで隙間を繋ぎながら、そのアトリエは作られている。
そしてそんな空間の中、油絵の作品を年間何百枚も描くようなアーティストがいた。
稀にみるアウトプットのエネルギーがものすごい人。それでいてその人のいでたちは飄々として穏やかで、優しかった。
初めての私に丁寧に説明してくれる。
その大事な空間に踏み込ませてくれる。
そういう余裕をみた。
久しぶりにカッコいい人だなと、思った。
夜、飲もうよと約束して一杯だけ付き合った。
彼は唐突にギターを弾き始める。
神聖なアトリエ空間で、優しく歌うその人を見ていると涙が止まらなかった。
彼は孤独だと言ってた。寂しそうに。
けれどその目は生き生きとしていて、私はその目に勇気と熱をもらったのだ。
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