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【フリーランスTips】「仕事を断るのが苦手」上手な断り方と、金額アップの交渉術

※このnoteは、フリーランスの方から寄せられた質問に対して夏野なりに回答するものです。すべてのシーンに使えるとは限りませんが、使えるコツがあればぜひ使ってみてください。

【今回のテーマ】
仕事を断るのがどうしても苦手です。スキル的に難しい内容を引き受けてしまって、「時給換算だといくらなんだろう……」と悩むこともあります。夏野さんはどうやって交渉したり、お断りしたりしていますか?

【夏野なりの答え】
結論から言うと、無理して引き受けるのはクライアント様にも失礼ですし、不利益をもたらします。無理なものは無理と断るか、気持ちよく働ける金額をいただけるように交渉するのがお互いにとって吉です。

先日、こういうツイートをしたら「クライアントの要望を聞いてばかりだと、しんどくないですか?」といった質問をいただきました。

これは大きな誤解で、私は普段、「予算・スキルが合わないな」と思ったらためらいなく断ってます。なので、全然無理はしてないです。

じゃあ、どうしてこういうツイートをしたのか?今日はこのツイートを補足するつもりで、合わない仕事に「NO」と言う基準と、NOをYESに変える交渉術についてお話しできればと思います。


何がなんでも「NO」なのは、こんなとき

夏野が「NO」という仕事は、ざっくり2パターンに分けられます。

①予算(報酬額)が相場から著しく乖離している。
②気持ちよく進められそうにない。

それぞれについて夏野の対応パターンをまとめてみます。

①予算(報酬額)が相場から著しく乖離している。

①予算(報酬額)が相場から著しく乖離している場合は分かりやすいですね。「目安金額は5万円です」と明記しているのに、「なんとか3000円でやってくんね?w」みたいな問い合わせがきちゃう例です。

こちとら時間=金=生命が直結している身ですから、予算が著しく合わなければNOなものはNOです。

フリーランスさんの中には「やりがいのある仕事なら、安くても/無償でもOK」という方もいるかもしれませんが、夏野に関して言えばNOなものはNOです。何回でも言います。NOです。

とはいえ、「NOの言い方」はいくつかにパターン分けしています。というのは、こういう場合を想定しているからです。

パターン1:シンプルに失礼な人の場合

「このメディアで書かせてやるだけでもありがたく思えよな!」「チャチャっと書いてくれればいいから!」系の問い合わせ。

パターン2:ただ相場を知らない人の場合

外部への委託が初めてで、「金額を添えなきゃ失礼になるよね……」と気遣ってくださり、なんとなくの金額を添えてしまった例。

パターン1:シンプルに失礼な人の場合

パターン1は取り合うだけ時間の無駄なので、こんな感じでさらっと返します。

このたびはお忙しい中、お問合せをいただきありがとうございます。

内容を拝見致しましたが、恐れながらご提示いただいた予算ではお引き受けが難しく存じます。

せっかくご縁をいただいたにもかかわらずご期待に添えず恐縮ですが、また機会がございましたらどうぞよろしくお願いいたします。

このときのポイントは、「感情的にならない」ことです。

いや、分かります。プロとして「チャチャっとやってよ!1000円でw」みたいな連絡が来たら、どうしてもムカッとはします。

でも、それにキレてる時間がもったいないですし、万が一、大きなクライアント様と横のつながりがあったら「コイツはすげえ横柄なフリーランスだ」と悪評を流されるかもしれません。そうなったら機会損失です。

ですから、たとえ失礼な連絡であっても、Siriになったつもりでサクッと返事したほうがよいです。それができないのであればシンプルに「無視」したほうがまだマシです。この社会において、攻撃的なテキストが証拠として残るのはいろいろと不利になることを自覚しましょう。

パターン2:ただ相場を知らない人の場合

この場合はちょっと対応を考えたほうがよいです。たとえば、問い合わせ元が大手企業であれば、予算にはポテンシャルがあるはずです。もしかしたら、単に予算の相場を知らない方がうっかり安めの金額を提示しちゃったのかもしれません。

その場合は、正しい相場を提示することによって「あっ、そうだったんですね。たいへん失礼しました。ではその金額で」とサラッと決まることも多いです。こういう方に初手でブチギレメッセージを送ってしまったら大きな機会損失ですね。

なので、メッセージも多少丁寧にします。こんな感じです。

このたびはお忙しい中、お問合せをいただきありがとうございます。

内容を拝見致しましたが、恐れながらご提示いただいた予算では相場からかなり外れておりまして、対応が難しく存じます。
※ご参考までに、他社様ですと1件あたり〇〇万円〜(〇〇、〇〇込み。〇〇はオプション○万円〜にて対応)という予算感でご発注いただくことが多いです。

こちらの金額で問題なければ受注させていただけますが、いかがでしょうか?
もしもご予算が合わないようでしたら、誠に恐縮ではございますが、また別の機会にご縁をいただけますと幸いです。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

こうしておけば、この案件は受注できなくても、別件で予算に余裕ができたときに「そういえば」と思い出してもらえるかもしれません。攻撃的なメッセージを送るよりもよっぽど建設的な対応だと思いますので、ぜひやってみてください。

②気持ちよく進められそうにない。

意外なことに夏野も人間なので(ここ笑うところですよ)、どうしても「合わないな」という方はいます。

どういう人が合わないかをわざわざ書くことはしませんが、それこそ①で挙げたような失礼な方はどうしても好きになれません。「初手でキレるのはやめろ」というアドバイスは、むしろ自分に向けているつもりで書いているようなものです。

そういう方と仕事をしていると、いかに予算が潤沢でも気持ちがすさんできます。

そして人間、ストレスを感じると浪費してしまいがちですから、せっかく稼いだお金がストレス解消費用に消えてしまうことも。そう、合わない仕事を無理して引き受けたところで、そのお金はけっして身につかないのです。

だからこそ、どこかの地点で「あっ、無理だ」と思ったら、サクッと断れるようになったほうがいいでしょう。夏野はこんな感じで断っています。

断りやすさ★★★★★
「ご予算が……」

「大変申し上げにくいのですが、いただいているご予算が私の報酬相場とマッチしなくなって来まして……。他社様ですと、およそ5倍はいただいております」のような断り方です。

この断り方のメリットは、「あ、そうなの?じゃあ5倍出すよ」と言われたら、それはそれで納得できるところです。

ちょっとくらい進行に難があろうと、「5倍の金額もらってるしな」と思えば許せませんか?まあ、大体は向こうから「残念です」と断られちゃうのですが。

断りやすさ★★★★☆
「スケジュールが合わなくて……」

「ありがたいことに○月は各社様繁忙期で、他のお仕事をお引き受けするリソースがないんです」のような断り方です。

たとえ食い下がられても、「申し訳ございません」一辺倒で断り続けましょう。イメージは自動返答botです。

断りやすさ★★★☆☆
「進行に不安が……」

仕事のやりにくさに明確な理由がある場合に使える断り文句です。「大変恐れ入りますが、毎回、取材のご依頼が直前なことが多く、スケジュールの繰り合わせに難があります。私としてはもっと御社に貢献したいところですが、このようなことが続くようであればお引き受けは難しいです」という感じで断ります。

状況が是正されるようであれば引き受ければ良いですし、これを言ってもダメならいよいよ↑に挙げた方法で断ると良いです。お断りのファーストステップとして使いやすい表現ですね。

断りやすさ★☆☆☆☆
「二度と関わりたくありません」

めったにありませんが、数年に1回くらいはあります。「もういい加減にして!」ってくらいこじれちゃったパターンです。

この場合は、「本件に関して疑義がある場合、ならびに協議の必要がある場合は〇〇様の上席を交え、3名以上にて協議できれば幸いです。なお議事録を残すため、お電話にてのご連絡は一切お断りいたします。」くらい強気に断ります。また、ccには知りうる限りの先方の関係者を入れます。いわば、「正々堂々やろうぜ」モードですね。二度と使わないことを祈ります。

「NO」を「YES」に変える方法は、こんな感じ

「NO」について整理したところで、以降では「NO」を「YES」に変える交渉術をご紹介しましょう。

フリーランスとして長めに活動していると、既存クライアント様からフランクな相談を受ける機会も増えてきます。たとえば、こんな感じです。

「〇〇って仕事を頼みたいんだけど、やったことある?」
「〇〇ってプロジェクトを進めようと思ってるんだけど、相談できる?」
「〇〇円でお願いできる?」

このようなご相談をいただけるのは信頼の証ですから、できればすべてに応えたいですよね。

そうはいっても、こんなケースもあるのではないでしょうか。

「〇〇って仕事を頼みたいんだけど、やったことある?」
=面白そうだけど、やったことはないんだよな……。

「〇〇ってプロジェクトを進めようと思ってるんだけど、相談できる?」
=今月はちょっと忙しいんだよな……。

「〇〇円でお願いできる?」
=正直、ちょっと安いんだよな……。

こういう場合は、どう対応すれば良いでしょうか?

ここで、冒頭のツイートが再登場します。

こういう場合、夏野は基本的にすべて「YES」と答えます。「NO」と答えたら、その先の会話はないからです。

ただし、受注したいからと言ってスキルに嘘をつく(盛る)のはご法度。「とりあえず『できる』って言っておいて、なんとかごまかそう!」という取り組み方では、作業に時間がかかる=時給が下がる=QOLが低下するばかりか、納品物のクオリティも低くなり、クライアント様に不利益をもたらします。

それを踏まえて、夏野の場合は、こんなふうに交渉することが多いです。

「〇〇って仕事を頼みたいんだけど、やったことある?」
「読者として記事を読んだことがある程度です。同じレベルの成果物を出せるかどうかは確約できませんが、それでもよければぜひチャレンジしたいです」

「〇〇ってプロジェクトを進めようと思ってるんだけど、相談できる?」
「もちろん!今月はちょっと忙しいので、来月でも良いですか?急ぎの案件であれば、ちょっとご相談が必要かなと思います」

「〇〇円でお願いできる?」
「スケジュール的には問題ありません。ただ、恐れながら、ご予算感が少しマッチしていない状況でして、他社様ですと〇〇円〜からお引き受けしております」

いかがでしょうか。単純に「NO」と言うよりも、次につながりやすそうですよね。

というわけで以下では交渉術について、具体的なポイントを4つご紹介します。

①前向きであることを示す

まずは何よりも、「この仕事を受注したい」というポジティブな姿勢を打ち出すことです。姿勢を明らかにしないまま交渉に入ると、この記事の前半でご紹介した「断り文句」と勘違いされてしまうからです。

デートだってそうですよね。たとえ本当に忙しくても、毎回「忙しい」って言われたら、「あたし嫌われてる?」って寂しくなってくるじゃないですか。

だからこそ、「ぜひ受注したく思います。ただ1点、ご相談がございまして……」という枕詞を忘れないようにしましょう。これは、交渉術の基本のきです。

②期限を調整する

これはぜひとも交渉してほしいポイントです。意外なことに、世の中の期限は「なんとなく」で決まっていることもあります(もちろん、そうじゃないこともあります)。なので、とりあえず交渉してみると1週間くらいは延びるかもしれません。

直近では受注が難しくても、「○月○日以降の納品でもよければ、対応可能です!」などと伝えてみましょう。もしかしたら「あ、全然いいですよ」という感じで受注できるかもしれません。

③報酬を調整する(金額アップのコツ3つ)

「正直、安いんだよな」のパターンですね。

世の中、慎ましい方が多いのか「金額の交渉がどうしても苦手」というお悩みをよく聞きますが、夏野はためらいなく価格交渉をします。だって、自分の社会保険料(もしくは国民健康保険料)を払えるのは自分だけだからです。

ただ、交渉のトークは少し工夫した方がいいです。子どもが親にお小遣いをねだるときを想像してください。とくに理由もなく「1000円ちょうだい」って言われても、なかなかあげる気にはならないじゃないですか。

それに対して、「ここ最近は勉強を頑張って、事実、テストの点数が○○点も上がった。その息抜きをしたいので、マンガを買うお金をくれ」と言われたら、「確かに頑張ってるし、1000円くらいあげてもいいか」と感じませんか?

これと同じことをやりましょう。ポイントは「数値・客観・気持ち」の3つを抑えること。「〇〇PVアップ」「読者からのリアクション」「私は頑張っている」のような材料を添えて説得を試みるのがおすすめです。

具体的には、「私の原稿は他ライターと比較して編集コストが低いはずだ。その努力を価格に転嫁してほしい」とか、「私は簡易な画像制作も担っている。そして読者からも『画像がわかりやすい』との声が寄せられている。この分を報酬に加えてもらうことは可能か」のような感じですね。

今提示されている予算に対して、どれだけの追加工数(もしくは影響力)が発生しているのかを明示すると、クライアント様も気持ちよくお金を払いやすいです。

加えて、「なんでこの人だけ報酬が高いの?」と聞かれたときに、社内に向けての説明責任が果たしやすくなります。こういうところ(クライアント様の社内の立場)にまで気を配れるようになると、説得の成功率が格段にアップしますのでぜひやってみてください。

④内容を調整する

専門外、もしくは苦手なトピックを振られた場合です。

たとえば、何度かご紹介している通り、夏野は食にまったく興味がありません。毎日カロリーメイトでも、毎日BASE BREADでも一向に構わないですし、そもそも食べるのが面倒なので光合成できるようになりたいくらいです。

そんな夏野に「フード系のイベントレポートなんだけど、頼める?」という依頼が来たら……どうしましょう。「美味しかったです」「量が多かったです」以外に書ける気がしませんね。

それでも、単に「NO」と答えるのはもったいないです。ですからおそらく、こんなふうに答えると思います。

「正直なところフード系の知識は手薄です。ただ、写真は得意なので美味しそうな写真はたくさん撮れると思います」

「たとえばですが、『利益率の観点からイベントを分析する』みたいな切り口のほうが得意です。ざっと調べたところ、このイベントは『他媒体』や『他媒体』もレポートするようですし、あえてそうした切り口で書いてみるのはいかがでしょう?」

ポイントは、「〇〇は無理だけど、△△や□□のメリットなら提供できます」と提案すること。とりあえず言うだけ言って、採用するかどうかはクライアント側が決めることだと割り切ればよいのです。

報酬・時間のコントロールはフリーランスの基本!

というわけで今回は、夏野なりの仕事の断り方と、金額アップを含めた交渉の仕方をご紹介しました。

フリーランスとしての仕事が軌道に乗ってくると、お仕事を断るタイミングはどうしても増えてしまいます。そんなときも、単純に断るのではなくて「自分が納得できる方向に持っていく」交渉術を身につけておけば、もしかしたら次につながるかもしれません。

最後に強調したいのですが、「自分さえ無理をすれば」というやり方は持続不可能です。いつか必ずプッツンするときが来るでしょうし、そのときになって急にブチ切れられてもクライアント様は困ってしまいます。

不満や不安が生じたら、早めに・ロジカルにご相談するが吉です。長くフリーランスを続けるためにも、しっかりとした交渉術を身につけて報酬と時間をコントロールできるようになりましょう。

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