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【福岡・山口】つかめない作風とインプット不足

久々に専門学校の先生から連絡があった。目をかけていただき、卒業後もたまにご連絡する先生だ。

2往復ほど雑談をしたのち、「近々作品をお持ちします」と申し出た。これでぼうっとしていられなくなった。


10/27

週末は福岡出張があった。このところ根を詰めていたので、レジャーを兼ねて2日前に福岡入りする。空港から数駅で中心部へとアクセスできる街はとても便利で、移住人気を肌で理解した。

「福岡といえばグルメだよね」と言われたので、とりあえず馬刺しを食べる。30分ほど歩いて中州へ行き、夜景などを撮る。時折、頭の中の先生が「観光写真っぽいんだよね〜」「モノの見方が真面目だからさあ〜」とエア講評をくださるので、学校に通ってよかったな、と思う。

中洲の辺りを歩いていると、去年のヨーロッパ旅行がすっかり脳みそに定着したことが分かった。川沿いにあるカフェを見ては「セーヌ川にもピエール・エルメがあったな」と思ったり。ライトアップされた建物を見ては「グランプリュスも魔王城みたいな色にされてたな」と思ったり。まあはっきり言って“かぶれている”のだが、人生の引き出しが増えたことは事実で、ちょっと嬉しい。

1日目はそんなふうに過ぎ、フリーの翌日をどう過ごすか、ということになった。太宰府へお参りしても良いし、福岡の街をプラプラするのも良いだろう。でも、グルメに興味がないからな……。

そんななか、とある筋から勧められたのが下関だった。いわく、関門海峡は地下のトンネルで歩いて渡れるのだという。アクセスを調べてみると、博多から高速バスも出ていた。「これは下関だな。」そう決めて眠った。


10/28

翌朝は7時過ぎに目覚めた。こういうとき、1人旅だと出発の時間が決まっていなくて嬉しい。二度寝するも良し、仕度するも良しである。結局、眠気はぶり返しそうになかったので大人しく宿を出る。あまり治安のよろしくないエリアでは、牛の着ぐるみを纏ったホストが道端のゲロと空き缶を片付けていた。

バスターミナルに着き、ローソンで朝食を買う。見たことのない地名へ向かうバスを見ていると、「ちょっとお金を払うだけで未知を買えるんだな」と嬉しくなる。仕事でなかったら、急に温泉もありだったかも。そんな構想を描きながら、眠い頭で下関行きを待つ。

下関までは1時間40分ほどかかる。カメラバッグを抱いて窓にもたれかかると、いつの間にか眠っていた。

下関に着く。奥のほうに見えるゆめタワーはどうやら地域のシンボルらしく、あちこちにポスターを見かける。ちょっと見上げれば必ず見える存在って、頼もしいものな。山だってそうだけど、作れないし。そんなことを考える。

海沿いを歩いて唐戸へ向かう。泊まっている船には「唐戸」のほか、「小豆島」なんて記載もあった。

カメラを提げて歩いていると、釣り人たちが隣の仲間に「写真を撮ってあげようか」と囁いているのが聞こえる。親切心とありがた迷惑へのためらいで揺れているようだった。ありがとうございます、でも私、自分の写真は撮らないので。心の中でお礼を言いつつ、残しておきたい景色を探す。

そして唐戸市場へ。市場の外では、いろんな出っ張りに人々が腰かけて寿司を頬張っている。なるほど、寿司ね。人気コンテンツを確かめ、市場へと入る。良い意味での魚臭さと人熱に嬉しくなる思いがした。

右を向いても左を向いても旨そうなものしかないので、「こりゃあ昼食の要件定義が必要ですぞ」とニヤニヤする。ふと目をやると酒も売られていて、わかったわかった、飲めばいいんだろ、と購入する。どうせ徒歩での1人旅、酔っ払ったら公園で寝ればいいのだ。

市場を後にし、いよいよ人道(関門トンネル)を目指す。そこまで酔ってはいなかったが、万全を期してバスに乗ることにした。2駅ほど行くと、そこには関門橋がそびえる。思ったよりも近い九州を目指して、地下へと潜っていく。

地下では、沖縄県から来たという一団が盛り上がっていた。かわるがわる集合写真を撮っているので、申し出てシャッターを切る。素敵な笑顔に、先日お世話になったSのおっちゃんは元気かな、などと思いを巡らす。

(Sのおっちゃんの話はこちら)

人道は思ったよりもあっという間で、あっさり門司に着いてしまった。ここから門司レトロ地区までは徒歩30分程度。歩けなくもなかったが、翌日に仕事が控えていることを考えると無理はしたくなかった。

そこで1駅だけ歩いて、観光列車に乗ることに。全開の窓からは、海とレトロハイタワーが見えた。

レトロ地区では、これといって何もしなかった。ワインの1杯くらい楽しみたかったが、時間帯が悪く、ワインの出るような店はどこも閉まっていた。かといってコーヒーを飲んでくつろぐ気持ちでもなく、2時半ごろにはレトロ地区を出た。

小倉からは新幹線に乗った。博多まで1駅、わずか15分ほどの旅である。偶然にもハローキティ列車に当たった。

16時過ぎにはホテルへ戻り、風呂に入る。多少の作業をしてからゴロンと布団に横たわると、いつの間にか眠っていた。23時過ぎに目を覚まし、やっぱり眠って、そのまま朝を迎えた。


10/29

この日は朝から仕事があり、取引先の人とあちこちへ移動した。当初は15時ごろまでかかる予定だったのだが、諸々の繰り合わせで13時過ぎに解散となったので、太宰府天満宮へ行くことにした。

学問の神様たる菅原道真公には、北野天満宮(京都)のほうへ何度かお参りしたことがある。もっとも記憶に残っているのは、留年の瞬間をそこで迎えたことだ。今年の初めもお参りしたのだが、提出までついに5ヶ月を切った今、だめ押しでご挨拶しておくのも悪くなかろう。

さて、太宰府は太宰府で思い出がある。大学4年の卒業旅行で訪れたとき、パチモンの鉛筆をつかまされたのだ。

太宰府天満宮では「学業鉛筆」が売られているのだが、みんなと歩いているうちに買いそびれてしまった。

外へ出ると、みやげもの屋の軒先にそれっぽいものが売られていたので、「良かった!ここでも買えるんだ」となぜか信じて買ってしまった。ほくほくで持って帰り、裏面をふと見たところ「太宰府天満宮とは関係ありません」。パチモンかい!というわけで、苦い思い出になったのだった。

今回こそは本物の鉛筆を買ってリベンジするぞ、と参道を歩いていると、

あった。一体どれだけの人がこのパチ鉛筆に騙されているのだろうか。皆さんはどうかお土産リテラシーを発揮してください。

ところで太宰府天満宮では、ちょっと怖い思いをした。おそらくは博多駅から目をつけられていたらしき外国人観光客から、とてもしつこいナンパをされたのだ。

日本人の特技・あいまいな微笑みが通じないのはもちろん、どこへ逃げても追いかけてくるばかりか、参道のど真ん中で待ち伏せをされるので参った。迫力のない見た目のせいで、昔からこの手合いには煩わされる。なんとか全力で振り切って、路地の奥にある小さなカフェに入った。

萎えた気持ちを遅めの昼食でfixし、いったん宿へ戻る。しばらく休憩したあとは、いよいよ中洲の屋台街へと足を伸ばした。今日は最後の夜、屋台を楽しむなら今しかないからだ。

が、結論から言って、日曜の屋台は観光客でごった返しており、列が長すぎて入れそうもなかった。目の前のエリアもなかなか猥雑で、食が進みそうもない。結局、写真だけ撮ってそそくさと中洲を後にし、宿の近くでうどんを食べて眠った。次は平日などにリベンジしたいものである。


10/30

旅の最終日はいつも仕事へ気持ちが向いている。それも無理やり戻る感覚ではなく、ごく自然にスイッチが切り替わる。

飛行機は17時だったので、ホテルのチェックアウトを12時まで延長し、こまごまとした作業を進める。月末なこともあり、請求書やら領収書やら発注書やらの対応を進めた。

宿を出て空港へ向かい、せめてもの“らしさ”でラーメンを食べる。数年に一度しか食べないので、他と比べてどうなのかは判断がつかなかった。

今回の旅行ではいろいろと写真を撮った。どこか眠たいグレーの写真は心象風景そのものだ。かと思うとするどい影に心惹かれ、ときには「あ、この感じのやつ、前撮ったな」と反省して、それなりに楽しめた。

かつて専門学校で「モデル撮影しなよ。創造神になれるよ」と激推しされたが、どうしてもそちらには興味が向かなかった。

それは人に興味がないからなのだが、興味がないからこそ、人を“モノ”として捉える、つまり、造形美だけを追求できるセンスがあると言われたのは皮肉なものだ。よほどの才能がない限りは、あまり興味のない領域のほうが余計な感情に振り回されずにパフォーマンスし続けられるのかもしれない。

早いもので10月も終わり、いよいよ勝負の冬が来る。年末に向けて、仕事も少しずつ忙しくなってきている。日増しに募る焦りを連れて、それでも進む。


今回の反省

「作品を撮るぞ」と明確に決めて出かけたのに、もったいない精神でついつい観光ガイドブックみたいな写真を撮ってしまい自己嫌悪に陥った。中洲の夜景なんて世の中に1億枚くらい溢れてるだろ。自分にしか撮れないものを撮れよ。

その一方でカメラの操作にはいよいよ慣れてきたのを感じた。撮りたいものが分かってきたので、「同じようなアングルを大量に撮っては首を傾げる」アクションが減ってきたし、露光を変えることにも抵抗感がなくなった。

これは仕事にも生かされていて、撮って出しでもそこそこの品質なので、現場で「こんな感じです」とお見せすると「わあ!」と言ってもらえることが増えた。

(ちなみに、仕事の写真は明確にトンマナを変えています。お客様にも喜んでいただけることが多く、この出張で訪れたところでは、メインビジュアルに使っていただけていました)

で、Facebookなどに投稿しながら作品を俯瞰で見てみると、とにかく全体的にグレー。先日の沖縄もそう。光がのっぺりしているので、専門学校の先生には「つまらない」と評されるだろうな、という感じ。

このへんは本当にお気に入りなのだけれど光はのっぺりしている。曇りの日でもドラマを生み出す方法を考えなければ

これを「味」にしていくのか、乗り越えるべき壁とするのか。「味」にするのであれば、思い切ってモノクロにするとか、フィルタをかけてミニマルなアート風にするとか、もうちょっとやりようはある気がする。このあたりは試行錯誤かな。

このへんとか、加工のしがいがありそう。

今回のなかでもっともお気に入りの1枚はこれ。いわゆるグルメ写真には適さないのかもしれないけれど、ソリッドなコントラストが窓辺の暖かさを伝えてくれている。

そのシリーズでこちらも。グルメ紹介ページには使えないだろうけど、地域紹介系のページなら空気感を伝えるビジュアルとして使えないこともないかな。

今回の作品撮りを通して気づいた反省点は、圧倒的にインプットが足りていないこと。「こういうの、いいじゃん」の引き出しが少ないから、どれだけカメラの操作に慣れようがアイディアが湧いてこない。

かといってトレンドの作風は好きではないから、SNSでインスタントに作例を見るのではなく、昔の名作を見たほうが良いんだろうな。引き続き光を追いかけていきます。

とっても嬉しいです。サン宝石で豪遊します。