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喪に服す婦人の白い日傘

拝啓 出雲にっきさま

にっきちゃんこんにちは。先週はあくびをたくさんした一週間で、今週も変わらずあくびを多めにしています。あくびが出たあとの涙目でぼんやり世界をながめてます。

土曜日にはせきしろ句会に参加しましたね☕︎
「春」をテーマにした視聴者の方々の自由律俳句の着眼点がまぶしくて、それぞれの描く春の情景を浴びるように鑑賞しました。投句作品には輪郭のはっきりしている句が多くありました。わたしは最近曖昧な春しか描けていなかったので、引き出しの奥にあった春のかけらを形にしたような"よく見える句"たちに背筋が伸びる思いでした。本当にすごい…。これからもいろいろな自由律俳句を鑑賞して、自分の句が描くものの幅も広げていきたいです。


さて前回の交換日記は「油膜の張ったぬるまゆなはる」という句が特に印象的で、この句が表すような薄い膜につつまれた春の自由律俳句と、「やけっぱち前線北風の如し」が背負う生活のなかにある不安定な気持ちも含んだ句があり、春特有の期待と不安がやわらかに織り混ざった回でしたね。

・味のしないほどこの景色を見た

にっきちゃんの住む町のお話。わたしは何度かお家に遊びに行ったことがあるので、電車や駅前の景色を思い浮かべながら読みました。
新しい町で生活を始めて、帰るたびに知らない人の家みたいなにおいがした自分の部屋から、何度も通った道と自分の物しかない部屋になっていくの、ときどき退屈しながらもやっぱり心地良く歩いてる自分に気づいた時、この町のこと好きなんだなあと思います。
わたしたちも町も生きてるからきっとこれからも変わるし、日々新しい。

わたしも今度、人生で初めて菜の花を買ってみようかな!ぽん酢とバターで和えるのおいしそうすぎます…

・桜は気分屋たいそう選手

栞にしてお気に入りの本の傍らに置いておきたいような句🔖
桜の花びらの軌道なんてわたしたちには全然読めません。気分屋さんで運動神経がとっても良いから上手くキャッチできないのかもしれないですね。
"たいそう"がひらがななのも、のびやかな陽気や、桜を体操選手に例えた絵本的な世界観に合っていて素敵です。

・やさしいねやさしいだけ
・白い鳥だ、あっ白い鳥
・しゃくって泣いたが余裕綽々
・気軽にきらくに星見て泣きたい


この群はにっきちゃんの詩的センスが特に光っている気がします。全句ともどこかさみしさが含まれますが、言葉がくり返されることによってリズムが生まれ、詩の世界にちゃんと昇華されているように感じました。さみしさが、さみしさのまま置いてけぼりになっていなくて安心します。

それではすずめ園の自由律俳句です🌨

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・喪に服す婦人の白い日傘

・喉越しのお茶どこまでも伝う

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・何も無くお菓子だけ食べる

・火曜からカッカレーと決めていた

旭川にあった喫茶めるしの影響で、カツカレーのことは脳内で「カッカレー」と変換されてしまう。今日も好きな蕎麦屋でカッカレーを食べて元気を出しました。

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・君の食パンの厚さを知る

・生きたら消えたシュークリーム

・シウマイ弁当の帰りを待つ

30%引きのシールがついた超熟が目に入った。手に取ろうとすると、それは4枚切りで、少し迷ってから買い物カゴに入れた。

そもそもわたしの原点は8枚切りだ。小学生の頃、人よりかなり少食だったわたしは8枚切りの薄い食パン1枚でも食べきるのに苦労していた。チョコチップの入ったスティックパンや薄皮クリームパンなどはやわらかいし、生地全体に甘い味がついているので食べやすい。それに比べて食パンは、食感も味も一辺倒だから、あの白い長方形が途方もなく広く感じた。たまに母が間違えて5枚切りや6枚切りを買ってきた日には、慣れない分厚さにヘソを曲げたし、ますます食べるのに時間がかかった。

中学生くらいだったか、いつのまにか母が買ってくる食パンが6枚切りになっていた。小学生の頃に比べて少食ではなくなっていたわたしは、6枚切りの食パン1枚なんて余裕で食べていたし、内心もう1枚食べたいと思うくらいには食欲が増していた。

それから一人暮らしを始めた最初の頃までは6枚切りの時期が続いた。ところがある日なんとなく気分を変えたくて買ったヤマザキのスイートブレッドの5枚切りがとてもおいしく、厚さにもしっくりきてしまい、以来"スイートブレッドの5枚切り"が自分の中の定番となっていた。

4枚切り食パンといえば、小中学校の給食で出てくる食パンの厚さという印象が強い。待つとずっしりと重く、こんなの分厚すぎるだろ、いつも思っていた。しかも給食の食パンはトーストされていなくてボソッとしているので、あまりおいしく感じることができなかった。たまに胚芽パンの時とかもあって、そこを変わり種にしなくても良いからトーストするか、揚げパンにしてくれ、、と頭の中で愚痴をこぼしながら咀嚼していた記憶がある。

その因縁の4枚切りだ。
食パンの袋を手に取る。不思議なことに5枚切りよりはるかに分厚く見える。少し迷ったが、25歳のわたしは給食以来の分厚さを久々に試してみたい気もした。

卵焼き用のフライパンにバターを敷き、両面焼き目がつくまでこんがりと焼く。4枚切りの食パンはやっぱり分厚くて重い。大きな口を開けて齧った耳にはバターが染みて、とても贅沢な味がした。
値段は変わらないけど、これから贅沢をしたいときは4枚切りを買ってしまうだろう。あの頃果てしなく感じていた分厚い食パンの正解を、今のわたしは知っている。

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二段目の奥のところでどっしりと構え、冷蔵庫の扉を開けるたびに丸い影で遮っていたシュークリームが今朝消えていた。
生きていれば不思議なこともあるもの、チョコがけダブルシュークリームなんて、わたしいつ食べたんだろう。

開けたときにはいつもそこにあったシュークリームの丸い影がなくなって、冷蔵庫の明かりがまっすぐ注いでくる。シュークリームがある冷蔵庫、シュークリームが待っててくれる冷蔵庫、シュークリームがあってできる影、そこにあると期待していたものが消えてぽっかり明るい。

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・笑い方が違う

すれ違った中学生くらいの女の子が「笑い方が違ったの!」と友だちと話していました。笑い方が違うなんていままで思ったことなかった。

本当に「笑い方が違う」と思ったから使った言葉だろうけど、わたしは「笑い方が違う」という言葉が新鮮でたまりません。これはオリジナルの自由律俳句ではないかもしれないけれど、誰かのなんでもない言葉を拾い集めるのもきっとわたしのお仕事です。

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・ブルーシート持ってないまま井の頭

・縦結び解いて膝のツナサンド

・プードルのしっぽの如し梅の枝


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・先人の落書きが彫られた席

・チョークの粉降るひかりの産毛

・放哉知った便覧何処かへ


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おうちに桜の枝を生けました。
お花屋さんに売っている桜がずっと気になっていて、先週くらいに桜がほしくてたまらない気持ちになり、いそいで桜を買いに行きました。
買った日は全部つぼみだったのに、次の日の朝起きたら何輪か咲いていて、その日の夕方にはたくさん花が咲いていました。室温があたたかいとこんなに早く咲いてしまうのですね… 明日には咲くかな?まだなのかな?というドキドキ期間がないのは少し寂しかったですが、咲いてからはあまり散らずに元気でいてくれてます。毎日がお花見!

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(曇りガラスのイカ花瓶かわいいね)

ところで桜も良いですが、人の家のお庭から見えるカラーモールのような梅の木があまりにも可愛くて、来年は梅の木の盆栽を育ててみたいな〜なんておもいました。


「チョークの粉降るひかりの産毛」は、にっきちゃんの「切りすぎ前髪とはるのうぶげと」への返句です。新学期のあの子の横顔の影は尊く、きっと春の日差しにチョークの粉がふわふわ舞っているはず。

それでは  にっきちゃんの交換日記の日には桜が咲いてたらいいな!また来週です🌸

すずめ園より

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次回の更新は3月30日 出雲にっきちゃんの番です🍚

『ひだりききクラブ』プロフィール

出雲にっき、すずめ園による自由律俳句ユニット。毎週水曜日にnoteにて自由律俳句の交換日記、「 #ひだりききクラブの自由律俳句交換日記 」を更新している。

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