つとめて澄んだ竹ぼうきの音

2022年10月8日 22:03

拝啓　出雲にっきさま

にっきちゃんこんにちは
文学フリマ札幌お疲れ様でした！

文フリ前は毎回（自分の計画性がなさすぎるせいで）寝不足でボロボロになるのですが、みなさまのお手元に届く瞬間を迎えられる日は本当にしあわせで、頑張って作って良かったなあと思います。自分たちが心を込めて作った本を、読みたい・買いたいと思ってくださる気持ちが毎度嬉しすぎる…　これからもわが子を可愛く育ててゆくつもりで本作りをしたいと思います。

さて、前回の交換日記はいつもよりも日記らしさが滲み出ていました。にっきちゃんの日常は人以外とも会話しているから、たとえ一人でいたとしてもどこか温かみを感じます🍵

・また会えるね春のしっぽには
・揺蕩う薄に猫のおもかげ

キュートで浮遊感のある2句。
はじまりから、最近の寒さをポッと照らすひだまりみたい。

「春のしっぽ」という言葉にわたしも心撃ち抜かれてしまいました！
とっても可愛い店員さんですね。何かで見たり、誰かに教えてもらった言葉なのでしょうか。わたしもこのくらい柔軟に言葉を組み合わせられたいいのになあ…

「たゆたう」って、口語ではめったに使うことはないけれど、言葉に、しかも漢字にしてみると一気に浮遊感が出る気がします。まるでエフェクターみたい。にっきちゃんの猫への愛情とすすきの質感のやわらかさが重なり合った、やわらかさでいっぱいな自由律俳句でした。秋ですね🐈

・秋風をあつめて肺は山吹色
・タラタッタとりあえず生中

わたしはビールを飲まないのですが、エッセイを読んだらビールが飲みたくなっちゃいました！飲めないから自分に都合良い味したビールを妄想の中で飲みます、、
「のどごし」という言葉、いろんなものに用いて良いものだけれど、一番似合うのはビールですよね。本当にそそられる言葉！

この句は、「タラタッタ/とりあえず/生中」の３ワードで構成されていますが、どれも視覚的にも音的にもシンプルで軽やか。とりあえず生、のスピード感とお手軽感がぴったり合わさった楽しい自由律俳句だなあと思いました! 乾杯

一句目のほうもとっても好きです。にっきちゃんの句はどれも素敵なのですが、この句はすごく好みの部分に刺さりました。
無色透明な空気にも、秋という季節が加わるだけでさわやかな印象や冷たい温度が連想されます。そして色をつけることで、ただの深呼吸ではない、秋のすがすがしい多幸感が満ちた様子が思い浮かびます。
句の場面が想像できて、その句と同じ動きをしたときに感じる気持ちや身体の感覚も想像しやすい、素晴らしい自由律俳句だと思います。わたしもこんな句を作りたい！

・何食べたは生きててねの代わりね

ちょっと違うかもしれないけど、言葉が別の記号になるのって面白いなと思っています。天気の話は本当に天気の話をしたいのではなくて潤滑油的な役割をしていたりとか、「月が綺麗ですね」が「I love you.」を意味していていたり。

そんな言葉、ボトルレターくらいの速度であなたにたどり着いて、フタを開けたらやさしい匂いがするくらいの感じで届いてほしい。

それでは先週は札幌帰り、本日は電車で旅をしている途中のすずめ園の自由律俳句です🍁

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・つとめて澄んだ竹ぼうきの音

・朝の茄子すこやかに光っている

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・落ちてる葉っぱが増えてゆく

・窓ガラス燻りにじんだ野焼きの光景

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・市場にてまだ命ある魚を数える

・いつでも逃げられるよう船があって

《小樽日記①》

文学フリマが終わった次の日、にっきちゃんと小樽に行きました。小樽へは札幌から電車に乗って30分ほど。
やや混み合う車内、みんな小樽へ行くのかと思いきや、札幌から乗っていた人はどんどん降りていって、朝里駅を抜けて海が見えるころにはすっかり旅っぽい電車になっていました。
ガラガラの電車の中でうとうとしたり、海が突然パッと現れたり、旅特有の穏やかでゆったりとした電車の雰囲気がたまらなくて、隣でにっきちゃんがうたたねする中、わたしは密かに興奮していました。そしてそのあとわたしも眠りました。

札幌から小樽の約３０分だけではあまりに物足りなかったので、また早く旅に出ようと誓った道中でした。

《小樽日記②》

とても良いオルゴールを小樽で買いました。

にっきちゃんがオルゴール屋さんに入りたいと言ってくれた瞬間、わたしはオルゴールという物の存在を、ものすごく久しぶりに思い出しました。
それまであまり強く興味を持ったことはなかったけれど、お店に入ってすぐのところにたくさん並んでいた、ハート型のガラスのオルゴールに一目で心奪われました。
ネジを巻いて、音が流れ始めた時、そのあまりの音色の細やかさと美しさに、文字通りうっとりとしてしまったのでした。見た目も繊細で、すごく可愛いものばかりで、お店の中を長いことうろうろしてやっと決めたのがキューピッドのオルゴール。
音楽は迷ったけれど、「ハッピーバースデー」にしました。かつて誕生日が苦手だったわたしですが、ネジを巻けばかわいいキューピッドたちが永遠にお祝いしてくる環境ができました。

11月がたのしみ。誕生日は一日中ぜんまいをぐるぐる巻いてやろうかしら 🎂