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いくばくかのムダ毛をつつむ初夏の風

拝啓 出雲にっきさま

にっきちゃんこんにちは!
先週の水曜日更新なのにたくさん遅れてしまってすみません(TT)文フリで出す本の入稿も終わってやっと月曜日に更新しようとしたのですが、昨日もおとといもシンプルに眠さが限界で書けませんでした…… 平日の夜って土日の3分の1くらいしかない気がする、、

さて、前回のにっきちゃんの交換日記はゴールデンウィークやお散歩を楽しむ中に夏のカケラが垣間見えて、新しい季節の予感にわくわくする自由律俳句がたくさんありました🌻

・たぶん飲み込むべき牛タン
・ドライブはレモン牛乳風味よ

旅が好きなので人の旅の話も大好きです。
この間にっきちゃんのおうちに行った時、「ひだりきき放送局#03」より詳しめのお話を聞かせてもらいましたが、にっきちゃんのお友だちはみんな素敵な人たちだし、嬉しそうに話す姿を見て、本当に楽しかったんだな〜! とわたしも嬉しい気持ちになりました。
いつでも思い出せるための句ってすごく素敵です。自由律俳句ってそういう装置でもあるはず。

牛タンって、噛むのを頑張るのか、あきらめて飲み込んでしまうのか難しい食べ物ですよね
飲み込むべきかどうかわからずに噛み続けているとき、頭というより歯で考えている感覚がある気がします。そんな悩ましさもあるけど、牛タンたべたいな…!

・まぶいね濡らしたブルージーンズ

"まぶいね" というちょっとキザっぽい言い方も髪を切ったらなんだか似合っちゃいそうです!
そして干されたジーンズを見るたびにこの句を思い出しています。覚えやすいし、心の中でループしたくなる晴れやかさ。
物干し竿で光りながら揺れるブルージーンズは、まっしろなTシャツよりも、若いまぶしさが詰まっているような気がします。

・クレープ・ホコ天・自由の女神顔

単語の並びだけなのに、手元や景色、クレープのかがやきが伝わるカメラみたいな句。
かつて原宿でクレープが大人気だった時代に思いを馳せたくなります。「原宿=クレープ」はちょっと古いのかもしれないし、わたしも原宿でクレープを食べたことがありません。
だけど、なぜか原宿でクレープを食べることは、まぼろしの中にある自由の象徴のようにわたしの心の中に存在しています。

クレープは甘い灯火だし、自由の女神にだってなれるんだから、みんなに人気があって当然かもしれないです。いつかわたしも原宿でクレープを手に持てた日には自由の女神顔で竹下通りの人混みを歩いてみたいです!


それでは1週間遅れのすずめ園の自由律俳句です🍦🍦

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・いくばくかのムダ毛をつつむ初夏の風

・いいにおいの祈りをこめてパン屋裏



今日はちょっと晴れてて夏っぽかったのがいけなかった。

駅へと続く坂道に新しい朝の風が吹く。
今までみたいなやつじゃない、まるでブラウスからのぞく肌をつつむこむような温度の風でした。

永久脱毛してないから、適当に過ごしていたわたしの白い腕にもいくらかのムダ毛があったりもして、油断のかたまりを撫でられたような心地がしました。

これがさっぱりとした腕だったなら、堂々と初夏の風を迎えられていたのかな なんて思いながら、ちょっとはずかしくってはやく家に帰りたかった日の朝のことでした。

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・かんぺきな前髪のまま寝そべる

・丘陵キャミソールに張りついた汗


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・雨の中空き地を見つめる人

・許可なく鳥が飛んでいる

・平行な雨が降るしとやかな町


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・電源の切れたコタツ夜半の雨


・うその夜をさまよっている


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・生まれる前からこの町にあるオムライス


このまえは尾崎放哉賞の表彰式で浜松に行ってきました。
静岡といえばあの さわやか ですが、わたしは「さくらんぼ」という名前の喫茶店に行きました。
テーブル席がひとつと、カウンター5席程度の小さなお店で、後ろの壁には常連さんのコーヒーチケットがたくさん並んでいました。あじさいみたいな花柄の壁紙も、フレンドリーだけどちょうど良い距離感のお店のおばあちゃんも大変かわいらしい。棚にまるみえのヴァンホーテンのココアの缶や、わたしの家にもある調味料を発見。胸がくすぐられます。

メニューの名の中に「風邪予防」と赤い文字で添えられていたレモネードと、オムライスを注文した。目の前のカウンターでザクザク野菜を切り、ジャージャーとフライパンを煽って、あっというまにおいしそうなオムライスが完成しました。

そのあとにレモネード作りに取りかかります。絞り器で力いっぱいしぼり、シロップとまぜてちゃんと味見するおばあちゃん。味見用のスプーンで一口飲み、おいしい、とちゃんと言ってから出してくれました。
まるで、おいしくな〜れのおまじないみたい。しっかり魔法にかかったレモネードは、すっぱくて元気が出る味がしました。

オムライスはすごくおいしかったです。卵はしっかりめで、ケチャップライスは濃くも薄くもなく、べちゃっとしていなくてスタンダードな味。具はピーマン、玉ねぎ、ソーセージと、とてもシンプル。後味がちょっとピリッとするのは胡椒が多めだからかもしれません。
いままで食べたオムライスの中でも、わたしにとって一番家庭の味に近い気がしました。すごす良い意味で驚きや引っかかりがなくって、なだらかな気持ちで食べました。こういうごはんってたぶん貴重。

ひと仕事終えて、椅子に座って突然店のテレビをつけたおばあちゃん。相撲を見ていました。自然体でとっても良かったです。
またおばあちゃんのオムライスを食べに喫茶さくらんぼに行きたいな。

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・高いハムを食べられる季節が来た

・ショート・ウェルチ缶夏休みのかがやき

町で「お中元」という文字を見かけて思いついた2句です。わが家はお中元を送ったりもらったりしない家なのであまり馴染みはないのですが、徳島のおばあちゃんの家に行った時に、おばあちゃんが誰かからもらったジュースの詰め合わせをよく飲んでいました。箱にぎっしり、普段あんまり飲まない、ちょっと高くて濃厚なぶどうジュース。

どうせやるわけないのに、家族旅行に持ってきた夏休みの宿題はずっとカバンの中。結露して曖昧になった手のひらとジュースの缶の境界線は、おばあちゃんにぶどう味を受け渡した瞬間、なまぬるい自分の手の形となって輪郭が戻ってきました。夏休み、ウェルチの小さな缶の思い出です。

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・牛角に集う若い自転車五台

・迷ったが熱いお茶にした

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自由律俳句が全然思いつかなかった時、きっとこんなに思考停止しているのは、いつもの生活を蔑ろにしていたからだなと思いました。
たとえばわたしは自分のために作る普通のごはんが好きです。歩きながら季節を探すのも、眠る前にキティちゃんのアナログラジオを聴きながら髪を乾かす時間も好きです。

短期間に作業をつめこみすぎたあまり、料理も季節の変化に気づくこともできなかったので、そういう日々の小さな喜びが、わたしにとっても、自由律俳句づくりにとっても、すごく大切だったんだなあと思いました。

ちゃんと生活をしていかないと、言葉ってうまく生まれないものですね。もろもろ反省しつつ、言葉のためにも健康のためにも自分の生活をしたいな…!
もうすぐ文学フリマ本番なので、ちゃんと眠ってごはんを作り、食べ、俳人マインドを取り戻そうと思います🍵

今週はにっきちゃんにいっぱい会えてうれしい ☕︎ ひだりききクラブ、文フリがんばるぞ〜…!

すずめ園より

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📚   文学フリマ東京出店のおしらせ   📚

5月29日(日)開催の文学フリマ東京に、
作家で俳人のせきしろさんとの合同サークル
「ひだりききクラブとせきしろ」として出店いたします!

当日は自由律俳句集や個人ZINE(既刊・新作)を販売予定です。ひだりききクラブの作品をたくさんの人に、直接お届けできたらいいなと思っております!

ブース番号は【チ-25〜26】です

入場無料なので どうぞお気軽にお越しください🐈


日時:5月29日(日) 12:00〜17:00
会場:東京流通センター 第一展示場
ブース番号:【チ-25〜26】
入場無料 🆓


会場案内図(ブース位置)
https://bunfree.net/wp-content/uploads/2022/05/A3_OL_tokyo34_visitor_map.pdf

詳細⇒https://bunfree.net/event/tokyo34/

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次は出雲にっきちゃんの番です🌠

『ひだりききクラブ』プロフィール

出雲にっき、すずめ園による自由律俳句ユニット。毎週水曜日にnoteにて自由律俳句の交換日記、「 #ひだりききクラブの自由律俳句交換日記 」を更新している。

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