見出し画像

鈴虫の音を隔てて映画を観る

拝啓 出雲にっきさま

にっきちゃんこんにちは
すっかり秋っぽい空気ですね

こんなに秋だからもしかして… と思って覗きに行った、夏の間お休みするケーキ屋さんはまだお休みしていました。この店の夏は温暖化した地球よりも、大学生の夏休みよりも長いみたいです。

さてさて、いまはご実家に帰られてるということで、前回の交換日記は遠い町からのお便りを読んだときの気持ちになり、ほっこりしました。猫ちゃんかわいい!🐈会釈会釈…


ぷつり桃に刺すロンギヌスの槍
頬擦り包み込まれあたし桃の実
ネクター味のキスしても顔忘れちゃったな


桃の句三連作。なんだかこのあたり、とってもいいにおいします。しませんか…? この3句だけでいろんな「桃」を見ることができて、にっきちゃんの表現は桃の種類くらいたくさんあって豊潤だなあと思いました。

ぷつりという桃のみずみずしさにぴったりな音と、目で見ても音で聞いてもかっこいいロンギヌスの槍。部屋の中の、お皿の中の小さな桃を食べているだけなのに、ロンギヌスの槍を用いたスケールの大きさが空想的で面白かったです。つるっとした桃をフォークで突き刺しひとりじめする時って、ほとんど槍の勢いかもしれないです。
2句目と3句目は果物の桃そのものを描いた句ではなく、自分自身やくちづけを桃に重ねたところに艶やかさを感じました。桃自体も艶っぽい表現に用いられることがありますが、にっきちゃんの句のチャーミングさと桃というモチーフが合わさってとても甘美な世界観が生まれています… 


わたしもこの夏で桃を6個くらい食べました。いままでの人生で一番桃を食べた夏かもしれないです。桃はふつうくらいに好きでしたが、この夏ですっかり大好きになりました。特にきっかけはなく、そういう風が自分に吹いていたのだと思います。桃の風。そして今も、もらいものの桃ゼリーを食べながらこれを書いています。


来世でまたね(出逢わなかった方の海で)

お別れを告げて、そのまま海の中に溶けてゆきそうな儚さ。この季節の曇天の海での一コマを想像しました。
カッコの使い方が効果的で、もしかすると、口にしたらこの句の想いは伝わりきらず、目で見るための俳句なのかもしれないと思いました。
カッコの中に入れることで、「来世でまたね」と告げている地点とは別の世界線を、ふたつ同時に巡ってゆくような余韻があります。とても美術的な句でした。

あなたとできる生活のままごとが

わたしは大人になるとは、我慢できることだと思っていました。だから感情を剥き出しにして怒る人や、抑えようとしてもこぼれ落ちる感情や欲が怖く、人の人間っぽいところを垣間見ては、ああいうふうにならないようにしようと、ネガティブな側面から、大人に近づこうとしていました。これも正解のひとつかもしれないし、たくさん正解はあって、きっと明確な正解もないけれど、にっきちゃんの「さよならできるようになること」という言葉には、その答えに至る過程も含めて、感情をギュッと揺さぶられました。

わたしはこれから訪れるであろう、お別れや大きな悲しみがすごく怖いです。
大人と呼ばれる年齢になってしばらく経つけれど、生きるの難しくって、ずっと慣れないことだけど、生きいそいでも悔やんでも仕方がなく、健康に今を生きるしかないのだなと、全然できてない原稿に向き合うたび思います…(どんなオチだ、、)

にっきちゃんのこれからの生活ができるだけ健やかで明るいものであるよう、心から応援しています。ひだりききクラブは年齢的には大人だけど、まだ大人初心者のユニットだと思っているので、様々な答えが生まれてゆくことを恐れずに生きて、言葉に残してゆきたいなと思いました。


寒いなと思っているうちに、秋通り越して冬の句まで作ってしまいました!

すずめ園の自由律俳句です⛷

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


・ビニ傘をやめて全然空が見えない

・曇天プール決行のゆううつ

・傘さして大雨まあるく包囲する


ーーーーーーーーーーー


・慣れた景色の空も高い

・バブみたいな匂いだと褒められている

・ひまわりの代わりに回るサーキュレーター



ーーーーーーーーーーー


・きみにもらった手袋より息が長い

・(2021.08)とっくにダメなったクッキーの空箱


ラッピングが可愛くて悲しくなることがある。

誰かからのプレゼントや、お菓子を包んでいるきれいな包装紙、箱にかけられたリボンや金色のシール。人に喜んでほしいという願いが込められたラッピングたちがたまにちょっと憎らしいのだ。

プレゼントをくれるのなら、かわいくラッピングしたものがほしいけれど、リボンをほどいて、包み紙を丁寧に剥がして、ふわふわのパッキンをはずしてゆく工程と、包装物たちのその後を思うと切ない気持ちになってしまう。

袋の口を留めるきらきらしたワイヤーや中途半端な長さのリボン、可愛い柄のお菓子の箱。ちゃんと取っておくものもあるけれど、取っておいてもこのさき使うことはないかもしれないなと考えて、捨ててしまう。もちろん本当は捨てるのは嫌だけど、すでにためこんでいる過去にもらったプレゼントのラッピングもあるので、ここ数年は特に心を鬼にしている。

もらった瞬間から捨ててしまう瞬間を予期してしまって、可愛ければ可愛いほど心苦しい。シンプルな紙袋に、よくある金色の丸いシールにちょこっとリボンがついているやつが貼ってあるくらいのラッピングが一番悲しくならずに済む。だけど、やっぱり可愛ければ可愛いほどときめきもするので、この先もらうプレゼントのラッピングも可愛かったら嬉しいなと思ってしまう。わたしはだいぶわがままだ。


こんなことを考えているのはたぶん自分だけなので、わたしが誰かにプレゼントをする時はそんな心配はまったくしないで、可愛い柄の紙につつみ、リボンをキュッと結んで準備をする。


ーーーーーーーーーーー


可愛いという理由だけで、ホットケーキミックスは赤い箱に入ったSHOWAの商品しか買わなかったり、同じいちごジャムでもソントンの紙パックではなく、それよりちょっと高い、アオハタの瓶に入ったタイプのものを買ってしまうことがある。別に取っておくでもなく、箱も瓶もすぐに捨ててしまうのに。


ーーーーーーーーーーー


・ささくれストッキングにつっかかる指

・鈴虫の音を隔てて映画を観る

・自然光の下で見たら青い猫


ーーーーーーーーーーー


・髪伸びて結んだ秋の首筋冷えるよ

・ストーブを想うと背中がじわり熱い

・どこかの町では雪で電車が遅れてるらしい


ーーーーーーーーーーー


・夜更かしする隣人の生活音

・ホットミルク流れ着いたら日曜のほとり


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ここ2週間でのひだりききクラブ的トピックといえば、「ひらづみ」さんでの自由律俳句ワークショップを開催していただきましたね。
はじめて誰かに自由律俳句の考え方や鑑賞の仕方を伝える役をしました。まだ始めて2年のわたしたちには大役すぎる…!と思っていたけれど、このワークショップの準備で改めて自由律俳句の魅力や考え方に向き合うことができました。

・ささくれストッキングにつっかかる指
・鈴虫の音を隔てて映画を観る
・自然光の下で見たら青い猫

こちらの3句は自由律俳句ワークショップ中に作った句です。テーマが「秋」と「犬か猫」で、参加者さんたちが俳句を作っている間、わたしも作ってみようと思ってできた句です。(少し手直ししてしまったけど!)

制限時間10分の中、みなさん面白かったり、きれいだったり、共感できたり、いろんな句を作られていてとても刺激になりました。わたしももっと頑張らないと、、🐕

こんなふうに自由律俳句の輪が広がれば良いし、もっとカジュアルかつ景色ゆたかな自由律俳句がいろんなところで生まれたら良いなあと思いました。ぜひまたワークショップやってみたいです。


最後の句は、先週の昼間にラジオを流していたら、阿川佐和子さんとふかわりょうさんの「日曜のほとり」という番組がやっていて、タイトルをそのままお借りしました。わたしのお仕事はカレンダー通りなので、日曜日は休日の淵に立っている気分になります。お茶とかカルピスとか牛乳とか、やさしい川に乗っかってどっか行きたいなってたまに思います。全然つらい仕事じゃないのに、眠っても眠いのがつらいゆえにです…


来週末はいよいよ北海道ですね
文フリの準備がめちゃギリギリなのですがなんとか間に合いますように、、(間に合うのだろうか)

それではね にっきちゃん〜🐈

すずめ園より

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

❤️‍🔥サミット出演のお知らせ❤️‍🔥

9月26日に配信の「杉作J太郎サミット」に出演させていただきます!今回は杉作さんとひだりききクラブの3人です。

20時から23時の3時間たっぷりお話しします!よろしくお願いします



✈️ 10月2日の文学フリマ札幌出店のお知らせ ✈️

今年もひだりききクラブは「文学フリマ札幌」に出店します❄️北の大地にひだりききクラブの自由律俳句を届けます!道民のみなさま、遠方からお越しのみなさま、どうぞよろしくお願いします。

ブース番号【お-29,30】でお待ちしてます📚

(ちなみにふたつ隣の「お-27」のブースには、去年一緒に出店したせきしろさんもいらっしゃいます!楽しみ!!)

10月2日(日) 12:00〜16:00
札幌コンベンションセンター 大ホール
入場無料です🆓

詳細⇒https://bunfree.net/event/sapporo07/

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次の更新は9月28日 出雲にっきちゃんの番です🎑

『ひだりききクラブ』プロフィール

出雲にっき、すずめ園による自由律俳句ユニット。毎週水曜日にnoteにて自由律俳句の交換日記、「 #ひだりききクラブの自由律俳句交換日記 」を更新している。

出雲にっき
note ( https://note.com/anone_diary )
Twitter ( https://twitter.com/nikkichan_anone )

すずめ園
note ( https://note.com/natsuno_soucho )
Twitter ( https://twitter.com/natsuno_soucho )
はてなブログ ( https://natsuno-soucho.hatenablog.com/ )

この記事が参加している募集

自由律俳句