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連作短歌:ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2


キスしたらドレスの裾をまくりあげ第三宇宙速度で逃げろ

プラズマのシャワーを浴びて星のなか君にしばらく被曝してたい

恒星にぶん殴られた恋たちはオーロラに乗り銀河を目指す

瞑ればこそ輝きはなつ華の香にあぁ君はまだそこにいるのか

 


小川一水さんの小説「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ 2」を読みまして、読み終えたのが2022年の6月25日、偶然にもその日が
「百合の日」であったことから勢いで詠んだ四首連作です。


というわけで百合小説です。
百合SF小説です。
百合漁業小説です。
百合バディ小説です。
百合ロケット小説です。

SFというジャンルは空想と科学的思考の力を使って読み手のイマを異界に投影するワンダーがその真骨頂なのですが、なんでもアリでありながら、しっかりと現代的な課題に向き合うのがこのジャンルの特徴でもあり、小川一水さんもそのようなメッセージを発する作家さんだよなぁ、と日頃感じ入っています。

この「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」も同じくで、本作における遠未来の人類は異なる恒星系へ版図を広げながら、一方で宇宙の辺境にくらす人々はその過酷すぎる環境により、生き残るため否応なく社会構造の変化を余儀無くされており、地球の歴史の中でとっくに過去のものになった氏族社会が復活している。
過酷なサバイバル環境において、種の存続すなわち子孫を残していく営為のために真っ先に影響を受けるのは女性であり、この未来社会においては社会存続のために女性の地位と権利がかなりの制限を受けている。
でもそんな中、テラ、ダイオードの主人公女性二人が社会に盾突き、破壊し、いずれはさらに遠い星の世界まで脱出していく。「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」はそういうお話なのです。

なかでも瞑華というキャラクターが私の一番のお気に入りで、彼女は主人公のひとりダイオードの元カノなわけですが、氏族社会の中でも最もトラッドで厳格な氏族に属していることもあり、脱出しようとするダイオードをあの手この手の(うは!)責め方で止めに来るのだけど、最後は安定の、というかとにかく最高の人なのです。まじで燃える本なので、よろしければぜひ。

SFは存外に短歌と相性がいいように感じています。
でも空想の力、物語の力、その牽引力が抜群に強力なジャンルでもありますので、迂闊に詠んでも単に全乗っかりするだけで私の「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ短歌」も完全にそう。
短歌としての完成度を目指すものではないのだけど、二次創作と割り切って、もし私が歌人としてその世界で生きていたら、というごく個人的な空想に浸る楽しさもあって、これからも折を見てこのような遊びはしていこうかな、と思っています。


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