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相手に合わせて

 毎年言っているような気がするけど、天気が異常で畑の管理が難しい。

 農業は天気に左右されるのを技術でカバーしてなんぼ、と言われることもあるけれど、限度ってものがある。

 ここ数日の異様な暑さ。

 私は生まれ育ちが東京で、20年くらい前に東京を出て地方の農村をまわって農作業のお手伝い(今だと手伝いにもなってない、ただのお荷物だとわかる)をしてから福井で夫と出会って結婚してずっと福井にいる。
 なので幼い頃の夏の記憶は暑いけどクーラーがまだ必要ではなかった東京の真夏の寝苦しさだったり、大人になった今は海や田んぼが近い家でも真夏は窓を開け放ってもやはり暑くてクーラーに頼っている福井の暑さ、というのが自分の基準になっている。

 今年は特にまだ7月に入ったばかりなのに真夏日で、梅雨明け間近の時期のジメジメと湿度が高い日はなかなか無いことなので身体に堪える。

 今年は春先、天気がいいのに風が冷たい日が続き、ハウスの温度管理に苦労した。うちのビニールハウスは旧型も旧型、40年くらいは経つんじゃないかという錆びたパイプのハウスもあれば、10年くらい前に建てたハウスもある。

 どちらも最新式の環境制御型とは程遠い、手動式換気システム(パイプに巻きつけたビニールを広げたり、巻きつけたりして換気部分を開閉する)で管理するハウスなので、メロンやスイカみたいにつる先に寒さがあたるとダメージを受ける作物は、風が直接当たらないように換気することで必死になった。

 作物はもともとどこが原産国なのか、どういう経緯で環境が全く違う日本にきて改良され育てられたのか、というのが今のスーパーの野菜売り場を見ていてわかるだろうか。

 遠い異国の地から来た希少な植物は、やまと言葉にならず、胡瓜(中国よりもっと西から来たウリ)、西瓜(これまた西から来たウリ)、メロンやトマト(もはや漢字に当てはめてない)など漢字から読むのが難しく、そういう野菜がたくさん並んでいる。

 日本の気候に合うように改良されたはずの野菜は天候の荒い昨今、今まで教科書ではコレコレコノトオリと教わった栽培技術が通用しない。

 それでもメロンならメロン、スイカならスイカの好むように栽培管理して、ようやく収穫という実を結ぶ。

 その収穫期が福井では6月から7月になる。

 以前、うちで研修していた人が独立して、自分の畑で作業するようになってから、数年、スイカの雄花の花粉が出ないと取りに来ていた。

 私は多分温度が低い管理をしているんだろうなと思った。

 自分が畑で作業するとき、肌寒い日は早めにハウスを閉めて夜間の温度を確保したり、暑くて自分は汗だくでもそれがスイカにはちょうど良い温度だから作物に合わせて人間のほうが温度に慣れるように鍛えてきた。

 その人の管理の仕方を聞けばなるほど、やはり自分が暑さに弱いから涼しい環境で作業して、それは作物にとっては寒い環境で育てられたということになったのだ。

 夫も同じことを指摘して、それからその人の管理の仕方は変わり、花粉が出るようになったようで畑に花粉をくださいと取りに来ることはなくなった。

 天気や気温に慣らしてきた自分たちがそれでもかなり厳しいと感じる今年は、地球規模のことなのか、自分が体力の衰えが暑さに耐えられない年代になったからかなのか、それはどちらもなのだろうと思う。

 相手が伸び伸びと育つ環境を整えられるうちは頑張りたいと思うので、できるまでは頑張って、限界ならまた違う策を考えなきゃなと思う。

 その頃には食文化や食生活もだいぶ変わって、栽培技術も変わって求められる農産物も変わっているだろう。変化に対応していくことが一番大変だけど大事なことなんじゃないかと思うようになってきた。


#メロン #スイカ #農業 #農家 #農作業  


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