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✨想像しうる最高の着物デビュー✨【下】温かな場に包まれて


「チン」

静かなベルの音と共に、
エレベーターは一階に着いた。

20時、2分。

遅刻だ。

会場は、一番奥の間。

とはいえ、
木製の格子のパーティションで
手前の宴会場と区切られているだけで

エレベーターホールから出て曲がった時点で、
空気感は見える。

時刻からしても、
もう全員揃っているだろう。


手前の、
宴会場の端の荷物置き場に、
数分前、「始まるよ」と連絡をくれた
幹事さんの姿が見えた。


周到に着物を用意してきた割に、
すぐみんなの前に出ることに
一瞬の躊躇があって、 苦笑

幹事さんの元に立ち寄る。

着物を着ることは、
誰にも、
話していなかった。

幹事さんにも
「19時から用意するものがあるので、
 宴会を抜けて、部屋へ上がる」
とだけ、伝えていた。

彼は、
私を見ると、

「そういうことかーー!!」

と笑顔で迎えてくれて、

「さあ、奥へ」と促してくれた。

何人かが、
気配に気付いて振り返る。


「…!!」

「おおおーーーー!?」

「えええーーーーー!? なつむん!?」

ちょっと遅刻したバツの悪さと
次々とこちらに向けられる視線で、
照れ笑い。

手をふりふり、会場へ進んでいくと
一気に、会場がどよめいた。

私の、着物デビューの瞬間。

温かな、温かな、霜月の夜。


このイベントのことは……

先日、
社団のメルマガ原稿で書かせていただいて

(そのメルマガ記事を
 開催報告としてweb記事にしたら
 また報告します。)

なので、ここからは、

私の、この後の、
もう一つの、
「企み」のお話をば。

この連載の、上、中は、こちら 笑

話は、少し時間を遡ります。

それは開催前のこと……

「音ありサロでの
 リクエスト曲と
 エピソードを教えてください!」

代表の高木さんから
そう案内があったのは
約1週間前、
奇しくも、私が着物と帯との
奇跡の出会いを果たした日だった。


ありがとうサロン、通称「ありサロ」。
一般社団法人PAGが運営する
「プロフェッショナルありがとうの会」の
月次イベント。

そして「音ありサロ」は
高木さんが作った造語?で、
「音楽にありがとう」をテーマにした、
ありがとうサロン。

いつものありサロが
講話→ワーク→グループシェア
→最後に全体シェア
と進むのに対して

音ありサロは
参加者の「音楽にありがとう」な
エピソードと実際の曲の披露で
進んでいく。

実際の曲の披露 の部分は、
今回、高木さんが、
プロピアニストさんを
お呼びしてるよ、とのこと。

つまり、
「音ありサロ」は、
「ええ話付き」の、
贅沢ピアノ生演奏で、
カラオケ、状態。

曲とエピソード、
これに何を出すか。

悩み、迷った。


みんなのやりとりを見ていると
全員が出す風でもない。
(たしかに当日の時間と人数を考えると
 全員分はできない)
だから出すのはマストではない。

思い出の曲は、
ちょくちょくある。
そのうちの一つを、書けばいい、
だけ、では、あるのだが。

単なる自分の思い入れの強さだけでなく
共感を呼ぶエピソードだと、なお良い、

そして選曲。
イベントとしての盛り上がり、も、
つい、つい、考える。

着物で、何を歌えば合うんだろう。

考えがまとまらないまま、
時間が過ぎた。

ピアニストさんのご準備もあるというから
時間が経てば経つほど、
リクエストは出しにくくなる。

でも、歌うのは好き。

前回の銀座の音ありサロもすごく楽しかった。

だから、何か、出したい。
ひたすら、考えた。

今回の曲。
結局どういう経緯で
思い出し、思いついたのか、
あまり、覚えていない。

でも、
思い浮かんだら
「あ、それかも。」
と、固まってきた。


・リクエストするに足る、
 エピソード(=自分の思い入れ)があり

・とりあえずは、歌える

・知っている人は楽しんでもらえる、
 曲としての力がある

・着物で歌って、浮かない、
 世界観的に親和性がある

そして、

・自分なりの小細工が効く。
 ネタが仕込める


結局、連絡したのは
当日の朝だった。

「高木さん☺️おはようございます!

 当日で、すみません!
 歌、締め切りましたか?😆💦」


簡単なエピソードと、
リクエスト曲を書いて送った。

送るまで、ドキドキした。

送ってからも、ドキドキした。

今夜の着付けはうまく行くのか、

ドキドキもずっとあるので、

どれが何のドキドキか、
もう、わからなかった。


歌はいいね〜

そうして着物で迎えた、音ありサロ。

何番目に
「よっしゃ、ほな、なつむん、いこか」
と高木さんから声がかかるのかは、
まるでわからない。

あるいは、リクエストが
あまりに遅かったので、
出番がなくても、おかしくない、
とも、
思いながら。

みんなのお話と、歌を、
とっても楽しく聞いた。

J-POP と、洋楽と。

初めて聴く曲も、
エピソードと一緒だと、
その人の思い出深さも一緒に
流れてくる気がするから、
すごく、面白い。

会の後半、

仕事を終えて到着した仲間を
出迎えに行ったりして
少し、ありサロの会場を離れる。

戻ると、
高木さんが、
ええ声で歌っていた。

終わって、拍手〜!!

仲間からリクエストされていた曲が
およそ、出た気がする。

出番ですよ!

その時だった。

「なつむん、いけるー?

 歌詞、ないねんけど。笑」

高木さんから、
お声がかかった。

おお!来ました!

ん?

もしや?

もしや?

これ、 トリ ですかーー!?

どうやら、最後だった。

期待にお応えできるだけの
声量と歌唱力は、

残念ながら、
ごめんなさい!
ない!!!! 笑

ない、けど!!!

スクリーンに出た曲目を見て
「よっしゃなつむん、来た!」
と言ってくれる、
楽しみにしてくれている、
仲間がいる!

着物で、みなさまに
チヤホヤして頂いている。

そこに、トリですって。

ビビるけど!

高木さんの考えてくださった
出番の順序、

うん、
ありがたい!!& 美味しい!❤️


仕込んだネタを持って、
立ち上がった。

先に、ネタの説明をした。笑
そして、エピソードを簡単に。

歌ったのは、あの曲!

「え〜、
 この曲は、ですね。

 去年、久しぶりに、
 映画館で
 映画を見まして。」

「はーい!2回見た」
「オレ4回」
 会場には私以上に熱い仲間が。笑

「皆さんすごいですね〜。

 そう、
 それ以来、しばらくね、
 もう、これ、
 曲を聞くだけで、
 泣けて泣けて。

 改めて、
 音楽のチカラって
 歌のチカラって、
 すごいなぁと思った。

 と、言う曲です。」

そう言って私は、
持ってきたネタを、

勤務先で、
数年前、
60周年の記念品の
特別版(ネタ版?)として
作り配られた
【黒と緑の市松模様】の
風呂敷を

広げて、肩にかけた。

勘の良い読者さんは
お分かりかもしれない。

そう。
私が選んだ
リクエスト曲は

Lisa  「炎」

リクエストの時には
参考音源として
youtubeの「THE FIRST TAKE」の
バージョンを送っていた。

プロピアニストさんが、
それを、生演奏で、
再現してくださる。

流れてきた前奏、

ピアノの音色に、
痺れた。

ああーー!

こんな贅沢な歌の環境、
他にあるかしら!!!!


歌っている最中の頭の中

歌詞は手元のスマホに。
あらかじめ表示
しておいて良かった。

前に立つと
意外と頭が真っ白で、
歌詞って、出てこない。


「ありがとう
  さようなら
   声のかぎり〜」

贅沢な時間を、
噛み締めて歌った。

マイクなしの、生の声。

始めは音程を掴むのに必死。

1番サビを歌っていて、
冷静に

あぁ、声、
途中で「落ちてる」な、
「飛んでない」な、

会場奥まで「届いてない」な、
と、思った。

1番が終わって、
拍手と歓声、
すごく嬉しい。

みんなも
楽しんでくれているかな。

その中で、横から、高木さん、
「もっと行け!」
と、声をかけてくださった。

力が、湧いた。

エンジンを
温めきれていなかったのが、

全力出し切れていなかったのが、

1段階(それで全部! 笑)
ギアが上がった。

2番は、
歌詞から落ちないように
気をつけつつも、

目線をできるだけ上げて、
会場奥へ、さらには
格子のパーティションの向こうの空間に
目をやって、歌った。

そうしたほうが、
エネルギーが、声が、
遠くまでいく気がするのだ。

炎、

この曲の後半が、
かなり好き。

2番からそのまま 
Wow〜につながる流れ、

一度落ち着く大サビ、

そして、
間奏挟んでのラストのサビの
パワーのほとばしり方。

とても自分の歌唱力では
魅力が届け切れないのだけど。

いい曲だーーー!!!!!

(↑ はい、実に気持ち良さげに歌っておいでです 笑)

歌いきって、
みんなの笑顔と拍手の中、
頭を下げた。

ああーーーーーーーー!!
いい曲ありがとう。
みんな、ありがとう。

なんて、楽しい時間だろう!!

宴は続く……

その後の2次会で、
いろんな方から、
「着物、すごいね、持って来たの?」
「自分で着られるんだね」
「着物いいねぇ」
たくさん声をかけていただきました。

そしてたくさんの皆さんと、
お写真を。

もちろん洋服であっても、
たくさん撮っていると思いますが、
着物だと、より特別感、出ますね。



はい、
こうして、

私の着物のデビューは

突然着替えて現れて
驚きと賞賛で迎えられ

炭治郎柄の風呂敷を羽織って
鬼滅の刃の映画主題歌で
トリを飾り、

仲間から拍手と歓声を
もらえて

宴会でも声をかけてもらえる、

はちゃめちゃに楽しい展開と
なったのでした!


振り返り


着物デビューを振り返る、
3回連載、最終回。

いかがだったでしょうか。


本当に本当に、
最高の環境でした。

東西から人が集まって、
何がどう転んでも、
盛り上がること、間違いない場所、
あったかくて、楽しくて
大好きなみんなが、集まる場所。

私が、着物に着替えて急に現れたら、

きっと、この世で一番、
好意的な驚きと温かさでもって
私を迎えてくれる、
みんながいる、



私が、確信した、場所、でした。

にしても、

あぁ、
こんなに、
こんなにも、
明るい、あったかい、
素敵な、反応がもらえるんだ、って
予想した以上の展開に、

感激しました。

これだけ、
着物で良い反応をいただけると、
俄然、弾みがつきまして。

その後、2週間経っていますが、
ここまで、毎週末、着ています。


そして、

あなたにも、

ありがとうございます!!

この長文、
よくぞ、ここまで、
お読みくださいました。

最後が全然筆が
(あ、スマホのタイピングが)
進まなかったのですが、
書き始めると、
恐ろしく長くなりました。


本当に、お疲れ様でした!

また、着物のことも、
機会を見て書いていきたいと
思います。

今日もお読みくださって、
ありがとうございます。


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