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解体は突然に

1羽の急死

「卵のため」「食育のため」ニワトリを飼い始めたことを、つい先日書いたにも関わらず、1歳2カ月のわがやのニワトリは最近卵を産まなくなった。

すでにポジションは、ただのペットだ。

当初あれだけ私の頭の中を占領していたモヤモヤ(アニマルライツ問題)も一旦落ち着き、比較的スッキリした気持ちでニワトリに接することができている。

何より、健康を取り戻しつつある(ように見える)のが嬉しい。

まだトサカはふにゃっと垂れているが、ハゲていた羽根もだいぶ生え、目力も出てきた。

常にビクビクと6羽で縮こまっていたのに、今ではエサをあげに行くと逃げずに近寄ってくる。序列なども出てきて食べる順番もある様子。(ニワトリの世界では普通らしい。)

卵を産まなくなったのは問題なのだが、元気そうなので良しとしよう。

そんなある日、お昼のエサをあげに小屋に入ってみると、1羽がなかなか動かない。ツンツンしても動かない。さっきまで動いていたのは確かなので、さっき。原因は不明だが、さっき1羽が旅立ってしまったのだ。

解体スタート

「さばきますか!ミミちゃん!」

手際良く準備を始める夫を横に、何をしたらいいのかわからない。

急きょ始まった解体作業の横にはニコニコの0歳児と、死体でもお構いなしに抱っこしたがる2歳児。

死後硬直が始まっているニワトリを持つことさえ出来ないヘッポコな私は完全なる傍観者。

「生きているうちに締めないと血抜きが出来ないからどうしようかなぁ。」などと呟きながら首を落とす夫。やはり血は出てこない。

その後、お湯につけてから毛をむしるのだ。

「さ!ミミちゃんもやってみないと!」

「・・・ですよね。」

足を持ったり、羽根(うで?手羽先?)を持ったりすると、眉間にシワが寄り「あぁあ!」と声が出てしまう。声を出さずに事が進められない。

「こういうのはどこから肉と思えるかだから!」

「毛がなくなると売ってる見た目だと思うよ!」

「そうだよね。」と頭ではわかっているもののハードルが高い。

書き忘れていたが、生きていようが死んでいようが、私は動物が苦手なのだ。

猫ですらさわらなくて済むのなら、さわりたくないし、犬の散歩に出くわして「かわいいね〜」と声をかけるのは社交辞令と言ってもいい。

だからとにかくさわりたくないのだ。

ただ、心を無にしてスポスポと毛を抜く作業は結構な快感で、自分の眉毛を抜くのと大差ない。むしろこっちの方が抜ける時の気持ち良さは高い。

毛を抜き終わると、ホールで売っているとり肉になった。しかし、曲がったままの首、泥つきの足などが、時々リアルなニワトリを思い出させてくる。(次回しめる時は先に足を切り落としてもらいたい。)

包丁を入れ、関節を外し、パーツパーツにさばく作業は見ているぶんには問題なく、心臓、砂肝、と知っている部位が出てくるのは、むしろ楽しく、あっという間に解体作業は終わった。

そして食べる

新たに気づいたことは、肉の色は濃く、あぶらは黄色いということ。思っていたより可食部分が少なく、プリプリとしたモモ肉、ムネ肉は見当たらないということ。これは廃鶏だからなのかな?いつか、(いや、近いうちにでも)本物の地鶏をさばき比較してみたくなった。

下処理時に初めて包丁を入れた私は、皮が分厚いことに若干気持ち悪さを感じ、洗っても洗ってもあぶらが出てくることにとまどった。これも廃鶏だからなのかな?キンカン(卵黄部分)は小さいの含めて6個ほどとれたが、炒めると小さいのははじけてしまった。

肉は小さく切ってにんにくしょうがで下味をつけて炒めた。かなり弾力があったが、子どもたちもパクパク食べた。

いつものことだが、わがやの子どもたちにとっては命をいただくという行為はさほど特別なことではなく、それが飼っていたニワトリであろうが変わらない様子。事情を話した時も全く動じず聞いていたので、次はさばくところから見せたいと思う。