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みんな、元気ですか?

ローマで店員さんに忘れられ、声をかけても放置されていたわたしの代わりに注文をしてくれたマダム。ずっと待っていたからお腹が空いたでしょ、とライスボールとコーラを分けてくれた。ふだんは大嫌いなコーラだけど、このときはとてもおいしく感じたのを覚えている。

南イタリアの駅で、道を聞いたおじいさん。わたしが予約したホテルが遠いことに気づくと、なんと自分の車で送ってくれた。わたしがおじいさんの立場だったら、見知らぬ外国人にわざわざそんなことするだろうか。

タイの国鉄で、向かいの席に座ったおじさん。電車が急停車したり逆走したり、ハラハラした気持ちをアイコンタクトで伝えあった。おじさんがいなかったら、わたしはたぶんとても不安な気持ちのまま電車の旅を終えていた。

東京駅でたまたま出会った、日本に旅行にきていた欧米人の女の子たち。彼女たちが探していた出口を、わたしも一緒になって探した。急いでいたのに別れ際「あなたのドレス素敵ね!」と声をかけてくれたこと、嬉しかったな。


名前も聞かなかった人たち。
今となっては薄れた記憶の中の人たち。
消えないのは、その優しさと、癒されたわたしの心。

世界は今、混沌の中にいる。優しいあなたのこと、わたしは探すすべもない。

みんな、元気ですか?
こんな世界で、健康に暮らせていますか。
優しいあなたを悲しませるような出来事が、起きてはいませんか。

いつかどこかですれ違ったとしても、気付く自信もないけれど。それでもわたしは、自分のことと同じくらいに、あなたの日常が穏やかであることを願っています。




世界はそれを愛と呼ぶんだぜ