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北上花巻仙台、2泊3日墓参りツアー

年1回、2泊3日の父方親族の墓参り。東京駅にラジオでよく名前を聞くオーベルジーヌができたので、駅弁はカレーにしようとずいぶん前から決めていたのに結局いつもの鮭が乗ったのり弁当にしてしまった。わたしは鮭ばかり選んでしまうつまらない人間だが、そもそもカレーがそれほど好きじゃない。妹のオーベルジーヌを一口もらって満足。

父は出身地の北上が近づくにつれて落ち着きがなくなる。古川を超えて岩手県に入ったあたりから同じ車両内に誰もいなくなったのをいいことに、あとこちうろつき、到着10分前から降り口でそわそわし、わかりやすく浮かれている。

各地の墓を回る最中も「少年が自転車に乗っている!」「牛丼屋がある!」「ファミリーマートの駐車場が広い!」などなど、いちいちやかましい。真っ黄色の車を見て「きれいな黄色だなぁ!」と言っていたけれども、同じ車を東京で見たら何も思わないのだと思う。なんなら下品な色くらいのことを言いそう。

北上を離れ東京で暮らし始めて60年はたつのに、故郷はすごいんだなと思い、その姿を見ながら妹と「ふるさと」を歌い、「忘れがたきふるさと」をハモリ損ねるところまでが毎年のセット。わたしにも地元を懐しむ気持ちはあるけども、質が全く違う。同じ感慨をわたしが持つことはあるのだろうか。

父の墓参りは効率性重視かつ機械的なので、枯れた花を捨て、目に見える汚れをぬぐい、新しい花に差し替え、水を入れ替え、墓石にバッシャバッシャと水をぶっかけ、線香と蝋燭を燃やし、手を合わせ、1箇所5分くらいで終わる。墓に来て花と線香を供えることに意味があると考える、クエスト処理型の墓参り。

一方、母方の墓参りはお墓を丁寧に掃除しながら故人の思い出話をのんびりするスタイルなので、母はいつも情緒のない父の墓参りの仕方に不満そう。人には人の墓参り作法があるのだから放っておけ、と母をなだめ、父から託された線香に火を付けるのがわたしの役割。妹はゴミ係。

合計6箇所の墓を回ったが、わたしはその全員を知らない。お墓参りに来るようになったのもここ10年の話で、正直何の思い入れもないけれども、故郷の地で異様なテンションで大騒ぎする父の姿を見ながら、頻度高く墓を訪れるマメさはあるのに作法はどこか雑な墓参りにお供するのはなかなか面白い。

北上も新花巻も、駅は賑わっていた。旅行客と、試合と思われる学生の団体。こんなに人が多い両駅は初めて。夏日の暑さにバテたのでアイスを食べ、大谷翔平のコーナーを覗く。毎年どんどん展示が豪華になっている気がする。

「夢の対決 ピッチャー大谷対バッター大谷」という展示があった。どっちが勝つんだろう。有識者で見解は一致するのか、意見が割れるのか、それすらわたしには分からない。

駅でちょっと持ってて〜と妹にスーツケースを託した流れのまま、「待ってなんでわたしが運んでんの?」と彼女が我に返るまでの間、妹はしばしわたしの荷物を運んでくれた。ごく自然で、幼い頃から培った下っ端体質は34歳になっても抜けないのだなとしみじみする。

仙台に行き、毎年恒例のお店で夕飯。自家製くじらのさえずりと、生牡蠣が濃厚でおいしかった。いつも締めに頼む焼きおにぎり、小さめにしてもらえることを初めて知った。次回はほや焼きおにぎりを食べようと決める。

2日目。朝、薄暗いエレベーターに乗り、母が乗り合わせた知らない男性に「こんばんは」と小さな声であいさつをする。最近姉妹旅行で出かけた先で男子学生が元気にあいさつしてくれたのがうれしかったらしく、見習ったとのこと。結果、小さい声で夜のごあいさつをしてしまっているので全然見習えていないけど、男性はくすくす笑っていたのでこれはこれで良し。

今度は仙台で父の弟、つまりわたしのおじさんの墓参り。今回の墓7箇所のうち、唯一会ったことがある人。昨日の真夏のような暑さから打って変わり、今日は肌寒い雨。なぜだかおじさんの墓参りは雨の日が多い。浮かれる父を落ち着かせるための雨なのか、それとも生前に父から受けたあれこれに対する仕返しか。優しいおじさんだったから前者を採用したいが、後者でも支持はする。

最寄り駅で花を調達し、近くの鮮魚コーナーをのぞくのが定番の流れだが、なんとかもめちくわがパックで売っていた。東京でよく買う、あのかもめちくわと同じものだろうか。袋詰めではないかもめちくわを初めて見た興奮から「かもめちくわ」を連呼するわたしと、なんのこっちゃわからんという雰囲気の他3人。かもめちくわ。

雨に濡れた墓石に父はせっせと水をかける。意味はあるのかしらと尋ねたら「こういうものだから」とのこと。

もともと備えられていた花は枯れ、大きななめくじがはっていた。ゴミで捨てる前になめくじを救ってあげようと思ったのに、水道の水でジャーとしたらそのままなめくじは下水道に流されて行ってしまった。お墓で生き物を溺死させてしまったことに罪悪感があり、墓前でおじさんに謝った。荷が重いだろうか。

ゴミは持ち帰るシステムの墓地だけど、東京から来ていることを理由にいつも管理所で枯れた花を捨ててもらっている。そのお願いをする役目を父にお願いする際、「お父さんの方がわたしより東京の人に見えるから」と母が言い添え、わたしと妹は膝を叩いて爆笑した。父は東京で暮らして60年経つ今なお、永遠にシティーボーイへの憧れが消えないので、「東京の人に見えるから」はこれ以上ない殺し文句だと思う。

おやつ

夕飯までの間に母と妹と3人で買い物。長年愛用していたバングルが肌に合わなくなってしまったので、いっそつけっぱなしで大丈夫なブレスレットが欲しいな〜と物色し、今年の誕生日プレゼントとして母に買ってもらう。誕生日は9月なのでずいぶん前倒したけど、アクセサリーはせっかくなら意味を持たせたいと思うタイプなので良いタイミングだった。

その他、ワンピースとシャツとカーディガンを買う。わたしは家族旅行で服を買いがち。

ほやっほ〜祭、行きたかった

夕飯は中華。乾杯前、わたしと妹が父の墓参りに帯同していることへの感謝のあいさつが父からあり、初の展開にちょっとびっくりしてしまった。後期高齢者の父、殺しても死ななそうなタイプではあるものの、最近は着実に人生の終焉に向けて駒を進めている雰囲気がある。ずいぶん丸くなった。

紹興酒について店員さんから教わる。スパークリングワインの中でもシャンパーニュ地方で作られたものだけがシャンパンと呼ばれるように、老酒の中でも紹興市で作られたものが紹興酒を名乗れるらしい。

会計予想はわたしがほぼ正解。テレビ番組だったらニアピン賞レベル。

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