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熊野古道の中辺路を8時間歩く

アラーム前に目が覚める。窓の外がぼんやり明るいので朝かと思ったら3時半。

わたしはやや睡眠障害ぎみで、一度起きるとなかなか寝られない。6時に起きるから、早くしっかり寝なきゃの意識が覚醒につながった気がする。

最近だといとこたちとのキャンプ前日、5時起きのプレッシャーで2時間くらいしか寝られなかった。どうせ眠れないなら楽しみで眠れない方の気持ちでありたい。

ふと、なんでこんな明るいんだ?と思い、せっかくだからテラスに出るとすごい月明かり。月ってこんなに明るいのか。星もたくさん見えて、今日も良い天気になりそうだなと思いながら再び布団へ。

iPhoneすごい

結局あまり眠れず朝を迎える。今日は熊野古道の中辺路の真ん中から本宮まで歩く。全22.1キロ、標準所要時間は8時間50分のコース。中辺路は「なかへち」と読む。

一番左の継桜王子からスタートして
次ページの右端の熊野本宮大社まで歩く

一日中歩くからコンタクトを入れたら「雰囲気違うね。かわいい」と家守さんから褒められウキウキで出発。最近違う人からも似たようなことを言われ、メガネ取ったら美少女的な展開を体感したばかり。コンタクトの頻度増やすか。

7時から歩き始め、朝日かつ歩きやすい舗装道路でさわやかな気持ち。

7時過ぎ
さわやかな気持ちで歩いていたのに、オチッコ冷しコーヒーに水を注される

まもなく山へ。そこからはほぼ山。登ったりくだったり。

最初の山道への入り口
一応休憩スポット
影はわたし
迂回路が一番キツかった

歩き始めて3時間、ふらふらと貧血っぽくなり、こりゃまずいとその辺に座って水を飲む。そしたらお腹が鳴った。疲れてるから気づかなかったけどお腹が空いていた。

ちょっと先の休憩所まで頑張り、お昼休憩。昨晩作った大きなおにぎりを二つ食べた。適当に作った割においしい。おにぎりの塩気は強めにという母の教えを守って正解だった。

朝から動いてちゃんとお腹が空いて、おいしくたくさんごはんを食べる。なんて健全なのでしょう。夜中まで酒飲んで午前中ぐだぐだしていた大阪の生活がもはや遠い昔。

休憩所で居合わせたおじさんはなんと78歳。仙台からきたらしく、昨年百名山を全て登り切ったのだそう。すごい〜。

昼休憩後のスタート地点。この時点でまだ11時

再び歩き始めたらぐいぐい歩ける。食べて動いて寝ることが人間の体をつくるのだとしみじみ思う。食べたら元気。

良い感じの橋
水きれい

もりもり歩きすぎてだいぶスケジュールを巻いていたので、少し休憩してザバスを飲む。30歳前後からプロテインを摂らなければならないという強迫観念にかられ続けている。ぬるくてまずい。

平坦な道の歩きやすさたるや
と思った直後に山
全く伝わらないけど右側は崖

発心門というバス停があるエリアに来たら一気に人が増えた。ここまでは3人としか会っていないのに、突然の団体客。しかもここから歩き始めるらしくとても元気。うるさいし離れたいと思ってガツガツ歩いたらめちゃくちゃ巻いてしまった。すでに歩き始めて5〜6時間たっているのにまだまだ歩ける。在宅フリーランスのわりに健脚ですごい。

牧歌的
唐突にたくさんの金魚
八咫烏
紅葉の走り

途中のお茶屋さんで紫蘇ジュースを飲む。ここまでお店はゼロ。自販機が2〜3あった程度なのでとても貴重。

7時から歩いていることを伝えると「健脚やな!」とおばあちゃん。第三者からもご評価いただきご満悦。わたしは健脚。

飲む前に撮りなよ

14時半、目的地の本宮へ到着。朝は「その格好で行くんか?」とやや心配されたけど、標準所要時間約9時間のところ8時間で終えた。ラストはくだりの畳み掛けで、残り20分くらいのところで膝痛くなったのでぎりぎりセーフな感じではある。

登りは登りでキツイし、楽そうに見えるくだりもだいぶしんどい。そして登りが続けばくだりが、くだりが続けば登りがありがたくなる。ときどき挟まれる平坦な道はボーナスタイム。

人生は山あり谷ありと言うけれど、登り途中の人はもちろん、くだり道を歩む人にも同じくしんどさがある。人には人の地獄があるのだと改めて心に刻む。あと息抜きも大事。登り続けるのもくだり続けるのもつらい。

歩いてる最中に小難しいことは考えられなかったけど、見渡す限り木だったり、見晴らしの良い場所に行っても見渡す限り山だったりと、他に人がいない山中にいると自然の大きさと人間の小ささを嫌でも感じる。東京でパソコン叩いて本読んで、いろいろわかった気になってちゃだめだな。

本宮まで家守さんに迎えにきていただき、再び一の湯から五の湯まである温泉へ。悔しいが、誰も入らない高温の一の湯が一番よかった。偏屈な父の血を確実にひいている。カーッと熱いお湯に浸かりたい気持ちがわかってしまう。

夜はそのまま家守さんに連れられ酒屋と寿司屋へ。酒屋はとにかく店主の思想が強く、しゃべり方も独特。最初は疲れもあり無理かも……と思ったが、試飲タイムに入ったらペアリングがドンピシャで俄然楽しくなった。

思想の強い説明書を「渡し忘れた!」と寿司屋までわざわざ持って来てくれるほど、日本酒のポテンシャルを最大限引き出して美味しく飲んでほしい気持ちが強い人。ここまでくると好感が持てる。次は元気な時に会いたい。

思想の強い封筒に思想の強い説明書がぱんぱんに詰め込まれていた

お寿司屋さんはとにかくネタが大きく、お腹いっぱい。疲れもありそれほどお酒の気分ではなかったけど、店主が気を利かせて日本酒をお猪口で2種類出してくれた。結局瓶ビール、麦水割り、日本酒と盛りだくさん。

9時前に宿に到着し、歯を磨き、少しこれを書いて力尽きて10時前に寝る。朝早く起きると1日が長い。

夜空。iPhoneすごいな

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