過去に似た経験があるから、分かり合えるのか？

留学生を手伝う仕事をしている。

留学生の日々の手続き、書類関係を扱うこともあるけれど、それより圧倒的に多いのが、日々のコミュニケーションだ。毎日顔を合わせて、

「元気？」
「授業はどう？ついていけてる？」
「最近元気ないけど大丈夫？」

と、こちらに家族がいない彼らのサポートをしている。

一応、仕事は「事務」ということになっているけれど、実際、事務手続きよりも、信頼関係を築いて、日常の何気ないお話しを聞くということが多い。

彼らの中には、とてもパーソナルなことを話してくれる子もいる。

進路の悩み、学校での話はもちろん、人間関係の悩み、国の家族の話、恋愛の話、日本文化の分からないところを聞かれたり、その種類は多岐にわたる。私ができる限りで答えたり、「どうしたらいいんだろうね」と一緒に首をかしげてみたり。

アドバイスをしてあげたくなったり、自分の経験を話してあげたくなってしまうけれど、そういうこともあまりよくないのかな？ただ、聴いてあげるだけの方がいいのかな？と、日々手探り。

ただ思うことは、縁あって知り合った若い子たちで、私に心を開いてくれているのだから、困ったことがあったら力になりたい。子育てと同じく、基本的には見守りながら、もうダメだと思うほどつらいことがあったら、無条件に守ってあげたいと思っている、と最近気づいた。

なんか、カウンセラーみたいなことをやっているなと、自分でも思うことがある。自分自身がカウンセリングを受けるような、心に関しては不安定なところもある私だけれど。

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不安定な私が、人の話なんか聞いてもいいのかな？

と思うこともあるけれど、最近思ってきた。カウンセリングとか、人の話を聞く仕事をしている人って、彼ら自身が、過去に傷つくことが起きていたり、人間不信になっていたり、何かしらつまづくようなことがあって、（人によっては現在進行形で）だから、困ってる人の話を聞けるのじゃないか？？

困った経験があるから、今困っている人の気持ちがわかる。というような。

今まで、私が自分のパーソナルなことや、心について話をしてきた人たちのことを考えてみた。数はそんなに多くはない。

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精神的に参った経験がなさそうな精神科の先生（実際はどうだか知らない）にカウンセリングをしてもらったことがある。この先生に対して私は、「分かってもらえた」とは思えなかった。一定の評価がある場所でのカウンセリングだったので、こんなものかとがっかりしたものだった。

その先生は、努めてロジカルで、冷静に私をカテゴライズして、線引きをして、淡々と話してくれた。私には、心でつながった感はなく、左脳だけでつながったような気がした。

で、心療内科とかじゃなくて普通の内科の先生なのに、こちらの話を聞いてくれる人にも出会ったことがある。その先生自身に、つらい経験があったかどうかは知らないけれど、私は毎回「分かってもらえた」と感じる。私は心療内科の部屋で「わかってもらえた」と涙を流したことはないけれど、この先生の診察室では、思わず涙がこぼれたことがある。

その先生は、ちゃんと目を見て、私の言うことに１００％気持ちを向けてくれていることが分かる。先生の過去の経験を一切語らずして、「辛いよね」と、気持ちを汲み取ってくれる。ーーーと、少なくとも私の心のどこかがそうやって感じる。

この先生とは、気持ちの上でつながった感じがした。

考えてみると、うーん。

私は、この二人の先生、どちらの過去も知らない。困ったことがあったのか、生きづらかったことがあったのか、分からない。過去同じような経験があるから、ないから、「わかってくれた、聴いてくれた、という気がする」という線引きをするのは、安易かもしれないなと思った。

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でも、また次回話してみたいと思える先生は、圧倒的に、気持ちでつながった感じがした内科の先生だ。内科なので、この先生には具体的に私をどうこう診察して、どういう対処がある、といったことはないのかもしれない。でも、そんなこと関係なく、また話を聴いてほしいと思う。

やはり、聴き方、なのかもしれない。過去に似た経験があってもなくても、気持ちが会話の中に反映されないと、相談者の心には響かない。

とすると。

私の仕事でも、私が経験したことのないことや、考えたこともないことなんかも、相談しに来る留学生たちに、私は自分が持っている最大限の想像力をもって、答えようとするのだけど、適格な答えがあるかどうかは、実は、あまり関係ないのかもしれない。

過去の経験があれば、気持ちはわかりやすいけれど、そうでなくとも、人に寄り添って、横にいるだけで、もう私の役割は果たしているのかもなと、感じた今日。