見出し画像

まだ見ぬ義父の命日、母の日の余波

昨日はお義父さまの命日だった。

わたしが主人と結婚したときにはもう

お義父さまもお義母さまもお義姉さまも亡くなっていたので

まだ主人の家族のどなたにもお会いしたことはない。


お義母さま方のおばあちゃまとおじいちゃま、それに叔父様には

結婚前から何度もお会いしていた。

お義父さま方の親戚の方にはまだ誰にも会えていない。


主人はあまり多くを語らないので

実際にどんなご家族だったのか

想像するにもなかなかヒントが少なくて苦戦する。


滅多にないのだけれども

たまに主人がぽつりぽつりと話してくれる

家族の何気ない昔話を聞くのがわたしは大好きだ。


写真とお墓でしかお会いしたことのないお義父さま。

だんだん主人も似てきているような、そうでもないような。


日本酒や漫画、株が好きだったことは知っているけど

何色が好きだったとか細かい事が全く分からない。


仏壇に飾るお花が欲しくて駅前のお花屋さんへ行った。

一昨日が母の日でカーネーションのオンパレードだったせいか

店内の4分の1くらいはカーネーションに占領されていて

残りの半分くらいは色とりどりのお花があり

残りの4分の1はレイアウトすらできていない状態だった。


いつものミニブーケが欲しいなと思って行ったけれど

アレンジされているブーケはひとつも無かった。

おそらく母の日の余波なのだろう。


忙しそうな店員さんに一応声をかけてみる。

「いつもあるミニブーケ、今日はありますか?」

「すみません、お店がこんな状態なので今日は無いんですよ。お選びいただいて作るので良ければ少し高くなりますができます。お祝いでしたらご予算お伺いして作ります。今でしたらこちらのお花いかがでしょう?」


店員さんの話すペースの速さと量が多いことにとても驚く。

わたしの4倍速くらいだ。かなり面食らった。


わたしってなんてのんびりしているんだろう。

わたしだけじゃ無い、わたしの日々接している数少ない愛しい人たち。

みんなそれなりにゆったりしている。

それに引き換えこの店員さんは昨日も含めとってもお忙しい日々を過ごしていらっしゃるんだろうな。

わたしと店員さんの間に見えない速度の違う空間があるのかも知れない。



「あ、お祝いではなく命日で、おうちの仏壇に飾る仏花ではない、小さくて可愛らしいブーケが欲しいなと思って・・・。」

「ご両親さまの命日ですか?そしたらこのグリーンを入れて間にこのあたりの色味のあるお花を入れて、ホワイトがあるといいですよね、かすみ草が無いのでこちらのホワイトはいかがでしょう、あとはあちらの☆%※∞!●*〜・・・・・・」

あまりの速さと言葉の多さに途中で辟易してしまって、最後まで聞く事ができなかった。

忙しいのでとにかくこのお客さんを片付けてまだやる事がたくさんあるの。

わたしにはそう聴こえた。いや、店員さんはそんな事一言も言っていないのだけれど。


忙しいのに声かけてしまってすみません。

お義父さまに似合いそうなお花をゆっくり選びたいから

忙しいのは分かるのですがそんな風に片付けないでください。

大切なひとのお義父さまの命日なんです。

心の中でそうつぶやいて、でも言葉にはできなくて

だからもちろん店員さんには伝わらない。

だんだん申し訳なくなってくると同時に店員さんが心配になる。


こんな生活を毎日送っていたら交感神経優位になり過ぎて不眠にならないだろうか。

毎日ちょこっとでもボーッとしたりゆっくり湯船に浸かる時間は取れているのだろうか。

施術してあげたい。

ちょっと深呼吸しませんか?と言いたいところだが

そんな暇ありませんという雰囲気だ。


普段のわたしならこういうお店でお買い物はしない。

日を改めたりお店を変えたりする。

でももう1件あるお花屋さんをさっき覗いたけれど

やはりそちらも母の日の余波なのかカーネーションばかりで

お花がほとんど無かったのだ。


近所のお花屋さんはこの2件しかない。

今日はそこそこわたしも忙しく、お隣の駅まで買いに行く余裕はない。

仕方ない、ここにあるお花でなんとか気に入るブーケを作ろう。


色とりどりのお花の中から綺麗なブルーのお花に目が止まった。

名前が書いてあるけれどカタカナで長い。覚えられない。

グリーンとホワイトのお花は店員さんが選んでくれてたので

このブルーのお花を入れてもらえたら充分だ。

店員さんにお願いしてブルーのお花を一本取ってもらう。

「ブルーもとてもいいですよ、この子は長持ちしますしたくさんお花がついているのでカットしてお部屋のいろいろなところに飾ってあげてもいいですよね。☆%※∞!●*〜・・・・・・」


やっと決まって、お会計をしたらこの慌ただしい空間から離れられる。

一刻も早くここから出たい。ゆったりに戻りたい。

さあもう少しだ。

と思ったらここからが凄かった。


「会員証はお持ちですか?カードとアプリお選びいただけますがどちらがいいですか?アプリでしたらこちらのQRコードからダウンロードしてもらって、完了したらお声かけてください。あ、できました?そしたら全部飛ばして1番下にスクロールして「後で登録する」を選んで次行ってください、次の画面でも1番下まで行って次行ってください、で、同意して、登録するを押してください、はい、できましたね、バーコード見せてください。これが会員証になります。☆%※∞!●*〜・・・・・・」

こんなに話しながら手はマッハで動いてわたしのブーケが出来上がる。

早送り動画を観ているようだ。


この店員さん、すっごく仕事ができるんだろうな。

どれだけ忙しくてもこのペースでこなせばかなりの仕事量を片付けられるな。

会社にとってはすごく助かるだろうな。

でも。

これはわたしだったら苦しいな。

みんなはこれで大丈夫なんだろうか。

どうか店員さんが倒れませんように。ゆっくりお休みできますように。


出来上がったブーケを受け取って、ありがとうございましたと告げてお店を出た。

はーーーーー。深呼吸。お花の香りを嗅ぐ。

苦しかった。よく頑張ったなわたし。

自分のためだけだったら頑張れなくても、お義父さまのためと思うと頑張れたりする。

でもこの頑張り方はたまにで充分だ。


お家に帰って早速お花を活ける。

心が落ち着く作業だ。

ブルーの効果も手伝って深く落ち着く。

このお花を選んで良かった。

画像1


活けたお花の写真をスマートフォンで撮影する。

「オオバナヒエンソウ」デルフィニウム属。

デルフィニウムの花言葉は「清明」
デルフィニウムの英語の花言葉 は「big-hearted(寛大)」「fun(楽しみ)」「ardent attachment(激しい愛着)」

ブルーのお花の名前や花言葉。Googleさんは何でも教えてくれる。

仏壇の前にお花を供える。

お義父さま、いかがでしょうか。


もうすぐ主人が帰ってくる。

気に入ってもらえるだろうか。お義父さまに似合うだろうか。


お花を見て一言。

「ありがとう、うん、いいね。」やった、合格だ。


夕飯の時にお花屋さんでの出来事を話すと一言。

「そんなところで買い物したくないな。」

気持ちをわかってもらえた気がして嬉しい。


店員さんは決して感じが悪い訳ではなく、むしろ感じは良かった。

ただペースが合わなかっただけだ。

久しぶりにペースが合わない人と接したことに気が付き

普段はなんて恵まれた環境にいるんだろうと気が付く。

たまにいつもと違うことを経験するのも悪くない。


お義父さまはどんな方だったんだろうな。

直接お会いしてお話してみたい。

いつか同じ世界に住めたら会えるだろうか。

勝手に楽しみにして生きて行きます。


棗みどりの日々はつづく。


まずわたしが幸せである事。そしてその幸せの半径を広めていきます。サポートよろしくお願いします♡