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公園のアリ観察2023-08

私がよく行く公園をまわってアリを探し、どのくらい観察できるか試してみる企画の続きです。

もう記事公開が11月なのに8月の話かい!
申し訳ありません。

この企画、当初の目的として公園内の地点ごとにアリの種類を記録しようと考えており、6, 7月と観察をしてきました。このまま続ければそれは達成されそうです。

一方、いくつかの目的を鑑みると、二つの相反する調査デザインが出てきました。
すなわち、①地点を制限して集中的に反復と種数の増加を目指すか、②地点を増やして環境要素との関わりに重きを置くかの二択です。

調査デザインは、目的と、その達成のための解析手法によって決定されます。現状、林床に生息するアリがあまり出ておらず、その発見を優先するなら地点を増やすことよりも一地点に時間をかけるべきだと考えました。
しかしながら私は新たに環境要素に重きを置くような目的を設定することにし、それに伴って地点を増やすように今回の観察を計画しました。

新たに設定した観察地点は、どちらかと言えば明るい環境が多いです。
今回は新規12地点を含む計18地点を観察しました。


様子の紹介

2023年8月の3日間

まずは明るい環境を観察してゆきます。

コフキゾウムシ

イネ科草本やクズの生えた場所、地面にはクロヤマアリトビイロケアリが見られます。

アリを捕らえたアオオビハエトリ

桜の木を観察すると、ヨツボシオオアリイトウオオアリが見られました。写真のアオオビハエトリはアリをよく捕らえるクモで、このときはヨツボシオオアリが餌食になっていました。

イネ科に集まるトビイロケアリ
ミントに来たハキリバチ

雑草として生えたミントに様々なハチが集まっており、その中に腹の赤いハチがいました。ハラアカヤドリハキリバチです。このハチはオオハキリバチなどのハキリバチに寄生するハキリバチで、宿主名を優先してハラアカハキリヤドリとも言いますし、一般的な名付けに従えばハラアカヤドリハキリバチになります(つまり前者はハキリバチに宿る者、後者は寄生性のハキリバチという意味)。いたら嬉しいぐらいの遭遇率で割とわかりやすい種類なので好きなハチです。


次に林縁環境です。

おそらくオオカマキリ
ヤサアリグモの淡色の幼体

ヤサアリグモの幼体がたくさん這っていました。アリグモ類はアリに擬態しているハエトリグモの仲間です。ヤサアリグモ、あまりアリに似た形をしていないと思っていたのですが、幼体はとてもシリアゲアリに似た印象を受けました。淡色の個体はまるでキイロシリアゲアリのようです。ほとんどの個体は体が黒く、黒いシリアゲアリに似て見えました。

シリアゲアリは警戒すると腹部を上げて化学物質を出す体制になることが名前の由来となっていますが、ヤサアリグモの幼体でも同様の行為が観察されました。

ヤブガラシに集まるシリアゲアリ

ヤサアリグモと同じ場所にて、ヤブガラシに集まるテラニシシリアゲアリです。ハリブトシリアゲアリのほうが多い本公園において、今回の観察でテラニシシリアゲアリは2コロニーが見つかりました。写真は6月に観察したコロニーと同一です。

ヤブガラシの花を求めてハエも来ていました。


最後に森林環境です。

デーニッツハエトリ
シベリアカタアリ

これまで出てこなかったシベリアカタアリが新規地点の幹にいました。胸が赤くて点刻に覆われ、腹に黄斑を持つ美麗な樹上種です。
カタアリ亜科は東北に2種が分布します。これでこの調査でも世界の大きな4亜科(ハリアリ亜科、フタフシアリ亜科、カタアリ亜科、ヤマアリ亜科)が揃いました。

調査の終盤、あまり見ない種類が出ました。

ワタセカギバラアリ

歩いていたのは大きくて赤いアリです。大きいので一目でワタセカギバラアリとわかります(かなり興奮しました)。何かの幼虫をくわえており、撮影後に返しました。
カギバラアリの仲間は腹部の末端が前方に向かって鍵状に屈曲していることが特徴で、この腹部を使って獲物であるクモやムカデなどの卵を運ぶそうです。カギバラアリ属は本州には4種が生息するのですが、東北ではワタセカギバラアリの他はモリシタカギバラアリが一例しか見つかっていないようです。

ヒメムネボソアリのコロニー

落ち葉の下からヒメムネボソアリのコロニーが出てきました。この丸い窪みは何かが入っていたのでしょうか。全体が土の塊になっており、そのままそっと落葉層へ戻しました。


結果

これまでで最も多い31種を観察し、加えて途中でヒラアシクサアリの女王が歩いていたのを含めて32種でした。地点数を増やしたおかげもありつつ、目的を意識した調査デザインが功を奏したように思います。

6, 7, 8月とアリの観察を行い、ひとつの公園から36種のアリを記録できました。東北に生息するアリおよそ90種のうち、高地にしか生息しない種を除いた半数近くを発見したことになります。9月もやるつもりでしたが諸事情により断念して本年の調査は終了です。

観察したアリのハビタット内訳

解析は暇がありませんでしたのでまた今度。

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