何も考えない勉強
中学の時とても勉強のできる友人Hがいた。
なんでそんなにいつも点数がよいのだと訊いたらなんでもないというようにこう教えてくれた。
『試験の範囲が出るでしょう?そうしたらひたすらその範囲の教科書に書いてあることを暗記すればいい。』
確かに頭の中に教科書を仕舞いこんでしまえば答えを見ながらテストを受けるようなもんだから満点、もしくはそれに近い点数を取るのは当然だとストンと了承し、早速その日からやってみた。
今思えばバカらしい行為だが、中学生のわたしには目の前の景色がひらけるような行為だった。その『何も考えない勉強法』に酔いしれた。眠る前に教科書を読めばほとんどすべての活字が脳ミソにへばりついたまま朝を迎えた。点数はよかった。
何も考えないからどんどん入る。重みが無い。まるで圧縮した音源のように何百何千何万という調べが中学生の女の子の脳ミソを掻き鳴らす。
点数はよかった。
ただそれだけだった。
何度かそのやり方で試験をやり過ごしたが、そのうち飽きてやめた。
友人Hは県で1、2の偏差値の高い進学校へ合格した。
わたしにとってよい点数を取る意味にいちばん近づいたのはこの頃だけだった。
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