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【パンタローネが語る】トロイア戦争。蛇に殺されたラオコーン

イタリアの伝統仮面演劇コンメディア・デッラルテは、生まれた時代やお面を使う喜劇である等の共通点があるため、日本の伝統芸能狂言としばしば比較されます。しかしながら、狂言はその起源から途切れることなく受け継がれてきたのに対し、コンメディア・デッラルテは20世紀初期に復活するまで、100年程上演されない時代がありました。そのため、様式化された狂言に比べ、コンメディア・デッラルテには、生きたパフォーマンスのエネルギーがあり、知識がなくても現在見て楽しめることが特徴です。

そんな、コンメディア・デッラルテのテクニックを使って現在のイタリアの時事問題を語るイタリア人舞台俳優の動画紹介第2弾!

Laocoonte dice NO!
Al cavallo abbandonata dagli Achei,
i quali forza di attacchi per Terra e per Mare
sembrano abbiano speso tutti i loro soldi per la guerra.

ラオコーンはNo!と言った。
ギリシア人が置いていった木馬に。
そのギリシア人達は、陸から海から攻撃し
まるでこの戦争に全てのお金を費やしたかのようだ。

Di chi sia non lo so, non mi fido.
Non stiamo a credere a questi Greci dannati
Che hanno lasciato sulle nostre spiagge
uno dei loro doni più perfidi!

「誰のものか知らないが、私は信用しない
呪われたギリシア人を信じるなよ。
我々の海岸に最も邪悪な贈り物を置いていったギリシア人を。」

E scaglia, e lancia il ferro.
Il giavellotto vibra sinistro,
il colpo si abbatte penetrando il Legno,
sfondandone la porta,
tanto che Quelli di dentro si vedono già morti!

そして、彼は鉄の武器を投げつけた。
槍は、不気味に振動しながら飛び
一撃は木を貫通、扉を突き抜け
中にいた者は、生きた心地がしなかった。

Ma ecco:  fiamme negli occhi, e code velenose
Subito sopraggiungono due mostruosi Serpenti
a divorare il Sacerdote coi suoi teneri Figli.

だがそこに、炎に燃え上がった目と毒を持つ尻尾をもつ
2匹の恐ろしい蛇があっという間にやってきて
神官と幼い二人の息子を食い殺してしまった。

O spire oscene!
Smembrati e orrendi giacciono i Corpi colpevoli dell'immenso delitto:
d'aver cioè Laocoonte detto ai concittadini
tutto il contrario di quel che vogliono sentire.

醜悪なとぐろよ!
巨大な罪を犯した罪人の、切断され残虐きわまりない体が横たわる。
ラオコーンは蛇が聞きたかったことと正反対のことを
同国人に言ったという罪を犯した。

Dunque, l'Umanità oggi assomiglia a quella Città di Troia
che pur d'impossessarsi di quel Feticcio,
s'inebria in giri di serpente,
che della Verità fan scempio e abuso!

どうだい、今日の人類はトロイアの町の人達に似てるだろう
あの呪物(木馬)を手に入れようとするがために
蛇のとぐろに酔っ払い
真実を破壊し乱用しているのだから!

トロイア戦争に登場するラオコーンは、トロイアの神官。ギリシア人が置いていった木馬をトロイアに持ち込もうとする市民をいさめました。しかしながら、ラオコーンは、この戦争でギリシア側についていた女神アテナの怒りをかい、息子二人とともに蛇に食べられてしまいます。(蛇を送ってラーオコオーン親子を殺させたのはポセイドーンないしアポローンだともいわれる)

ヴァチカン美術館に収められているローマ時代につくられたラオコーンの彫像でも有名です。

蛇に襲われるラオコーンと二人の息子
紀元前1世紀から1世紀の間に大理石でつくられた
紀元前150年につくられたブロンズ製のコピー
ヴァチカン美術館所蔵
Di Hagesandros, Athenedoros, and Polydoros - LivioAndronico (2014), CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=36412978

パンタローネは、第1弾に続きトロイア戦争を取り上げ現在の問題を語ります。今回もトロイの木馬をウクライナにたとえています。この戦争においてラオコーンのように真実を伝えようとする者は、まるで蛇のとぐろのようなマスメディアのネットワークに飲み込まれます。

もちろん、ウクライナの悲惨な現状を語るマスメディアが嘘を語っているわけではありません。でも、その情報に惑わされ、同情しただけでウクライナに支援し続けることは、トロイの木馬を城壁内に入れることと同じになるのではと語っているのです。

平和への道筋は見えず、停戦交渉は再開されていません。そして、アメリカに押しつぶされ続けるヨーロッパ側からの政治的、外交的提案もだされていません。

しかしながら、イタリアで2月に行われたサンレモ音楽祭(視聴率50%を誇る国民的音楽祭、日本の紅白歌合戦のような番組)に予定されていたウクライナのゼレンスキー大統領のビデオ演説は世論の大反対を受け中止になりました。

国民が、現状を把握し始めていることに少しの希望が見えます。そして、世論によって、メディアの意向を変更することができたことは素晴らしいことと思います。

この地獄のような戦いを終わらすのは、アメリカが先導するように武器を提供することではなく、政治、外交による提議であることをヨーロッパや日本が示してほしいです。

イタリアのコンメディア・デッラルテについて:

コンメディア・デッラルテのメインキャラクター、パンタローネについて
及びトロイア戦争第1弾はこちら:


素直にうれしいです。ありがとうございます。