
訪問看護はきつい?訪問看護師として働くデメリットとは
「訪問看護はきつい」
そんなことを聞いたことはありませんか?
なぜ訪問看護がきついと思われているのか、現役訪問看護師がその理由を考えてみました。
訪問看護師として働く6つのデメリット
訪問看護の現場がきついと思われている理由に、以下の6つがあげられます。
オンコール対応がある
ひとりで訪問することに不安を感じる
高いアセスメント力が必要とされる
コミュニケーション能力が求められる
医療処置スキルを発揮できない
教育体制が不十分なことがある
それぞれ詳しく解説していきます。
1.オンコール対応がある
訪問看護は基本的に夜勤がありません。
その代わり、夜間や休日に対応できるオンコール体制をとっている事業所が多く、看護職員数が多くなるほどその割合も多くなります。
オンコールは担当者が自宅に携帯電話を持ち帰って対応するのが一般的です。
電話がなる頻度や実際に緊急訪問する頻度は、事業所を利用している利用者の特性により異なります。
担当する日は1日中緊張が続くので、心身ともに休めず大きな負担を感じる看護師さんも少なくありません。
これは訪問看護の離職を考える理由のひとつになっています。
しかし、緊急時訪問看護の利用に同意している人は、事業所利用者の約半分ほどです。
そのうち約15%が実際に緊急の訪問看護を利用し、1人あたりの緊急訪問回数は月約3回と、さほど多くはありません。
【参考:厚生労働省|「訪問看護(参考資料)」第142回(H29.7.5)】
実際に訪問看護への転職を検討している方で、オンコール体制に不安を感じている方は、上記を参考に事業所へ尋ねてみると良いでしょう。
2.ひとりで訪問することに不安を感じる
訪問看護は理由がない限り、1人でご自宅に訪問します。
30分〜1時間、週1〜2日の訪問で情報収集をし、何か問題はあるか、対応はどうするかを自身で判断しなければなりません。
しかし、現在は連絡ツールが豊富にあるため、その場で判断しきれないことはほかのスタッフに連絡して相談できる体制が整っていることがほとんどです。
過度に心配する必要はありませんが、現場は結局1人です。
その不安を拭えずに大きなストレスや責任の重さに耐えられなくなる方もいます。
3.高いアセスメント力が必要とされる
24時間、患者の状態が観察できる病院とは異なり、訪問看護は限られた時間の中で判断をゆだねられます。
そのため、利用者のささいな言葉や状態の変化に敏感でなくてはなりません。
医師が近くにおらず、検査もすぐにできません。
そういったことから訪問看護師は高いアセスメント力が必要とされるので、自身の能力に不安を感じ負担になるケースがあります。
4.コミュニケーション能力が求められる
訪問看護の現場では、さまざまな場面で高いコミュニケーション能力が求められます。
①利用者とその家族
ご自宅に伺う際にもっとも必要とされるのは「信頼」です。
利用者やその家族は、看護師としての良し悪しつまり、医療者としての知識を持っているかどうかの判断はできません。
その変わり、看護師を「人として」信頼できるかを見極めます。
挨拶がきちんとできているか、言葉遣いは丁寧か、訪問時間を守っているかなどを無意識のうちにみています。
そのため、時間がないなどを理由に処置を優先し、コミュニケーションをとらない看護師は信頼できないと判断されがちです。
信頼を得るためにはまず利用者や家族の要望に耳を傾け、思いを受け止めることが大事になってきます。
時には医療的な視点も必要になるでしょう。
しかし、あれこれと助言することが逆効果になる場合もありますので注意が必要です。
なぜなら、生活状況によっては医療的に必要なことでも取り入れることができない場合があるからです。
そのうえで何ができるかを「一緒に考える」ことが大切です。
こうした積み重ねで、信頼関係を構築していくことが訪問看護師に求められるスキルです。
②事業所のほかスタッフ
1人の利用者に対して2~3人の看護師が関わることもありますので、情報共有は極めて重要です。
もちろん日々の記録は残っていますが、口頭での情報共有に勝るものはありません。
また経験があるから、担当している期間が長いからといって、どちらかが一方的に話をすることは情報共有ではありません。
いろいろな視点からの情報を得て、その利用者にとって何が最善かを考えていくことが必要です。
③外部の他職種
現場ではたくさんの他職種の方と関わります。
特にケアマネージャー(以下ケアマネ)とは密に関わる必要があります。
訪問依頼は9割方ケアマネからです。
訪問看護ステーションの経営のためには、この依頼が途切れないことが大前提です。
そのため、ケアマネには「仕事がしやすいな」「またお願いしたいな」と思ってもらえることが重要です。
その一つの手法として、こまめな情報共有があげられます。
ケアマネは利用者宅に月1回程度しか訪問しません。
訪問看護は大体週に1回は訪問するので、私たちからの情報はケアマネにとって有益です。
それ以外にも医師、リハビリ職、ヘルパー、福祉用具担当者など、病院ではなかなか関わりのなかった職種とも交流をもつようになります。
看護師としての知識はもちろん、他職種の知識を持つことで非常にスムーズに情報交換ができます。
情報共有がきちんとなされて初めて、利用者が安全に自宅で過ごせるのです。
5.医療処置スキルを発揮できない
病院と違い、最新技術を学ぶ機会は非常に少ないです。
事業所によっては、点滴や褥瘡処置などの医療行為よりもオムツ交換、陰部洗浄などの介護行為が多いところもあります。
「常に先端技術を学びたい」という方には訪問看護の現場は不向きかもしれません。
6.教育体制が不十分なことがある
病院では当たり前にある教育ラダーが整備されていないこともあります。
筆者の勤める事業所でも、決まった教育はありません。
新入社員の過去の経験やコミュニケーション能力、基本的な礼儀作法などを総合的に判断して、無理なく独り立ちに向けて教育する、というなんともふんわりした体制となっています。
臨床経験が豊富だということだけで、即戦力とみなされることもあります。
その場合は短期間で単独訪問をさせられてしまうこともあるでしょう。
まとめ
訪問看護で働くなら必ず知っていてほしいデメリットを6つお話ししました。
訪問看護では高いスキルを求められ、負担や責任が重くのしかかりがちです。
そのため、「訪問看護はきつい」と感じる方も少なくはないのでしょう。
しかし、その分責任をもって仕事に取り組めたり、自身のスキルアップにつながったり、デメリットがメリットに変わることも多い仕事です。
この記事を通して、訪問看護の世界へ踏み切る勇気が少しでも出たならうれしく思います。