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手触りのある暮らしを紡ぎだす、昔ながらの未来の町~秋田県五城目町

新プロジェクト開始にあたり、パートナーとなるシェアビレッジ株式会社の皆さんが五城目町の案内をして下さった。五城目に滞在したのはほんの3時間程度。たったそれだけの時間なのに、なぜか帰路の新幹線の中でも不思議な幸福感に包まれている。それは、手触りのある暮らしが再構築された、少し先の未来を見たような気がするからかもしれない。


田舎の住まいの課題に複合的にアプローチする現代版集落「森山ビレッジ」

プレイフル(遊び)ドリブンを大切にする五城目の方たちの取り組みに「課題」という表現を使うと嫌がられてしまいそうだけれど、それでもあえて書きたい。

地方に住むあたっての最大の課題の1つが「住まい」。その住まいの在り方を変えることのよって、下記のような問題にも同時にアプローチしてしまうのが「森山ビレッジ」。

・一から人間関係をつくりなおしていく孤独
・あまりに余る木
・荒れに荒れた森林
・寒さに震える古民家の改修か新築一戸建てかの呪縛 
・35年ローンの束縛
・里山の放置による熊との距離感の混乱

森山ビレッジは、デジタルファブリケーションで加工された木材を居住予定者やコンセプトに共感した方たちで組み立てた建物でできている。設計デザインは居住者毎に異なり、また新たな居住者が入る際には設計をゼロからデザインしなおすことも可能だそう。

森山ビレッジの住まい

木材には森山ビレッジから半径30km圏内のものが使われる。資金も個々人でローンを組むのではなく、出資金をもとに作られるので、その権利を渡せば次の方が入居できる。(詳しくは下記記事参照)
ちなみに入居者は完全居住の世帯もいれば、二拠点居住や別荘的な世帯もおり、空いている時間は一棟貸として貸し出される。

かつて集落は地域の資源とコミュニティの中で成り立っていた。それがいつの間にか、田舎であっても自治会の活動の中でしか会わないような近くて遠い存在になっていたりする。

地域の資源を活用し、地域内外の人とつくりあげていく現代版の集落。今後どのように展開していくのだろう。

伝統と革新が入り交ざる「ごじょうめ朝市plus+」

500年以上の歴史をもつ五城目の朝市。2,5,7,0の付く日に開催される昔ながらの朝市は組合員の出店に限られている。それをよりオープンに、よりカジュアルにして週末に開催されるのが朝市plus+。なんと地域外からも出店が可能で、出店料はたったの210円。

伝統的な取り組みにちょっとしたアレンジを加えることで、小さなチャレンジと新たな出会いを生む。

ちなみに五城目の朝市は地域の方々にとってはシンボルでありアイデンティティでもあったそう。
いきなり大きく変えてしまうのではなく、少しずつ新しい取り組みを交えていくこと。地元の方の理解を得つつ時間をかけて変化させていくことを大切に、慎重に取り組みを進めてきた」

地域とのつながりを生み出す「ポコポコキッチン」

五城目地域活性化支援センター内にあるポコポコキッチンで使われる通貨は「ポコポコ」という葉っぱ型の通貨。カフェラテは500ポコポコ。

ポコポコのメニュー

大人もこどもも農作業を手伝ったり、釣った魚の持ち込みなどをすることでポコポコがもらえる。ポコポコは地域のこどもたちが使えるように「こどもたちにごちそうするBOX」にいれることも可能。

BOXの隣にはこどもたちからのおてがみで溢れていた

そしてポコポコは訪れた一人一人に、その人らしい地域とのかかわりを生み出す。

「ポコポコはやさしさでできている」
休業日でさえもそのやさしさに触れられる、暖かな空間でした。私もポコポコしたいです。

おわりに

他にも今回は見られなかったけれど気になるコンテンツが盛りだくさん。面白いのは地域との関わりしろが町のあちらこちらに散らばっているから。

シェアオフィスの一角にある出張美容室。
寝たきりの方、介護中のご家族、育児中の方等、お店を利用しづらい方が気兼ねなく利用できる。

ほんの少し前まで、半径5m以内の幸せとか、地域との関わりしろとか、手触り感とか、全く興味がなかった。

その面白さに気づいたのは佐久市にやってきてから。

東京は快適で、お金を払えば何でも外注できる。例えばこどもの体験の機会の一つをとっても、自然体験も、職業体験も、デジタルな没入体験も、お金を払えば何でも手に入る(経済的な体験の格差は大きい)。

でも田舎ではそうではない。そうではなくなってしまった。自然はたくさんあるけど、実は自然遊びに詳しい人は減っている。かつて身近に商売が見られた商店街にはシャッターが降りている。機会は身近な人たちとつくっていくしかないのだ。

森山ビレッジの住まいは、「小さく建てて町で広く暮らす」を前提に設計されている。「お風呂は地域の「湯の越温泉」、子ども部屋は朝市商店街の施設「ただの遊び場」、書斎やライブラリーはシェアオフィスの「ババメベース」」を利用すればよい。

町に暮らす、というのはなんと豊かなのだろう。

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