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調整を理解したとき、すべてのテクニカルは完成する


 トレードにおいて利益を出すためには二つのことが必要である。

第一に
価格の変動(トレンドの発生)に乗ること

第二に
正しい方向にエントリーすることである。


 ほとんどの人がそうであるように「裁量トレード」で「片張り」のトレードするなら、トレンドを捉えられなければ安定的に利益は出せないトレードの基本はトレンドフォローであり、逆張りや両建ては相当に難易度が高く、高度な技術が要求される。


 トレードにおける利益の源泉はトレンドであり、我々が目指すべきはトレンドをなるべく長く獲ることである。


 そのために重要となるのが、今回のテーマである「調整」という概念だ。


 トレンドフォローを目指しているはずなのに、いつの間にか逆張りに陥ってしまっていたり、調整をトレンドと勘違いして一気に本来のトレンドの動きに踏み上げを食らったり…

 ロスカットに達したときには、エントリーするには遅過ぎるような位置まで価格が動いてしまっている、というような経験はないだろうか?


 また、ようやくトレンドの動きに上手く乗れたと思ったら、調整によって含み益がみるみる目減りしてしまって、「さっき利食いしておけば…」と後悔するような経験はないだろうか?
 そうかと思えば、含み益が目減りした位置で僅かな利食いをした直後に一気に吹き上げてトレンド方向に回帰する…

こんな苦い経験を繰り返す元凶は、他ならぬ「調整」であり、実はあなたが調整の仕組みを理解できていないからである。


 この記事では、トレンドを獲るためにどうしても必要となる「調整」を分類する。そして相場における波動をより深く理解できるようにすることを目的としている。


 なお、有料記事となっているが、「誰でも」「無料で」「全部」読むことができる。



調整の定義

 調整と言っても定義が曖昧で、捉え方に個人差があり分類が役に立たないというのが正直なところである。

 なので、この記事においては、

調整とは、
①トレンドに対する反対方向の動きであり、
②移動平均線を割り込む動き

と定義する。


上昇トレンドであれば、調整は「短い下落」の動き



 より厳格に表現するなら、

調整とは
①トレンドに対する反対方向の動き
②トレンドの推進波よりは短い

③移動平均線に達しない動きは推進波とみなす
④レンジが構成されている間は除外する


 調整はトレンドの推進波に対しては反対向きの動きだが、トレンド転換ではないので推進波よりは短い
 ただ、リアルタイムで値動きを追いかけている間は、「この戻りの動きが調整に過ぎないのかトレンド転換になってしまうのかはわからない」という問題がある。(逆にこれが高い精度で予測できれば神になれる)
 だからこそ、調整のパターンを頭に描けることが非常に重要なのだ。

 「移動平均線に達しない動きは推進波とみなす」というのは、相場のよくわからない動きを捨象するということである。上昇トレンドの中でも「横ばい」もあれば「下落」の動きも存在する。


 そして移動平均線は、単純移動平均でよい

移動平均線のパラメーター
 短期線:n=9~21
 中期線:n=24~50
(長期線:n=100~200)
 が適当


 他のテクニカル同様、移動平均線の変数(n)は、小さいほど感度が良くなり、反応速度が早まるが、ダマシが増える。逆に変数が大きいほど感度は滑らかになり、反応速度は遅くなるぶんダマシが減り、精度が高くなる。

ただ正直なところこういった数値はどうでもよい。こういう些末な要素(パラメーターがいくつがいいかなど)というのは、テクニカルの本質ではない。


繰り返すが、調整とは「トレンドに対する反対方向の動きであり、移動平均線を割り込む動き」である。

 下図のように、トレンドの推進波(黄色)に対して逆方向の動き(ピンク)が調整である。

ピンクで示した動きがこの場合の【調整】


 そして、もう一つ重要なのが、トレンドに逆行する動きの中でも、「調整ではない動き」があることを理解する必要がある。

丸で囲った陰線は「相場の揺らぎ」

 すべてのトレンドに対する反対方向の動きを調整と考えるべきではない。移動平均線に触ることのない小さな動きは、ローソク足が相場の中で脈動する「揺らぎ」に過ぎず、考慮する必要はない

 上図で丸印でくくった陰線は、調整ではなく「トレンドの一部」なのだ。だから、こういう小さな陰線で「調整が来た」と思って利食いしてしまうと、非常にもったいないことになる。




調整の分類

 ここから調整をいくつかの基準で分類していくが、本質的には同じことを言っている。ただ着眼点が違うだけで視点を変えれば同じことを言っているに過ぎない。

調整率による分類

 調整の比率に着目した分類である。調整がトレンド推進波に対する反対運動であるなら、基準となるトレンドのl波動からどれだけ戻したかを割合で計測するのは当然である。
 長所としては具体的な数字が出てくるので計測しやすい。フィボナッチリトレースメントやフィボナッチエクスパンションを使うことを想定している。




38.2%戻し

 調整としてカウントする最小の割合。非常に強いトレンドの際に現れる。
 値動きによっては、移動平均線(MA)に触れることなく推移する場合もある。MAを割り込む場合もMAの向きまでは変わらずトレンド回帰していくことが多い。

 フィボナッチ数であり、多くの市場参加者に意識されやすい節目のラインである。絶好の押し目買い(戻り売り)ポイントである。
ウエッジペナントの形を作る。

 特に38.2%という数字に意味がある訳ではない。
 フィボナッチ数なので、市場参加者に意識されやすいというのはあるが、本当に重要なのは、38.2%に満たない反対運動は「相場の揺らぎ」として無視することができるようになるという点である。こうすることでトレンド発生中に利食いを早めてしまうミスを防ぐことを目的としている


38.2%調整の典型

 下落トレンドが終わり、ローソクが移動平均線の上に出た上昇トレンドの開始から、初めて短期MAを割ったところ(ピンクの丸印)。
 ちょうど中期MAに支えられるような形で上昇トレンドに回帰していく。


短期MAは割るが、中期MAは割らない

 下落トレンドでもまったく同じ動き。

 図には他にも調整のような反対運動が現れているが、計測してみると、どれも38.2%に届かない。よって「トレンドの一部」としてノーカウントにすることができる。
トレンドの推進波の38.2%に満たない反対運動は調整に含めない」と決めることで、長いトレンドのすべてを取ることが可能になるのだ。




61.8%戻し

 フィボナッチの節目のラインなので、61.8%前後で測ったようにピタリとトレンド回帰することがある重要な水準。
 中期移動平均線を完全に割り込む調整。つまり深押しフラッグ型の調整においてこの水準まで調整することが多い。

 61.8%という数字に意味がある訳ではなく「50%よりも深く調整した」と認識するための分類である。多少の誤差は無視するべきだ。

61.8%調整の基本形

 38.2%との違いは、61.8%調整の場合、短期移動平均線の向きが変わったり横ばったりする点である。


 E計算でもある。(ここでは説明を省くが…)

E計算通り

 調整が、パターンフォーメーションのひとつ「レクタングル(長方形)」を構成している。
 調整が長引く場合、中期移動平均線も横を向いてしまう。


これもE計算通り



100%(全値)戻し

 いわゆるV波動、逆V波動。
上昇分をすべて打ち消した後、ゼロラインを割らずに一気にトレンド回帰する形
 トレンドの初期に現れることが多い。

 「上昇分をすべて打ち消すなら、調整ではないのでは?」と思うかもしれないが、私は個人的にこの100%戻しの動きを俯瞰で捉えた時、「V波動が1回現れて、次に別の長いトレンドが現れた」と考えるより、「最初のV波動は、次のトレンドの一部(同じトレンド)」と考えた方が素直だと考える。

 途中までは行ってこいにも見えることもある。中期線も割り込んでいるため、そのままトレンド転換することもあるので注意が必要。

 ただ視点を変えると「二点底(ダブルボトム)」の始点でもあり、適切にエントリーできればエリオット波動の根本からトレンドのすべてを取れる。

トレンドの初期に現れる100%調整

 完全にサポートラインで反発した形。最初の逆Vも後の長いトレンドの一部と捉えると、移動平均線を下抜いたり上抜いたりというよくわかわない動きが「調整」の一言で説明できてしまう。


行って来い型

 トレンドの初期から順張りしていた人は、含み益が帳消しになるか微益で決済してしまうだろう。
 一方でMAを割ったからといって、ショートした場合、最安値付近で売り、一気に踏み上げられて損切りとなってしまう。非常に難しい形状。



125% 戻し(フェイク)

 トレンドの最初の動きをすべて打ち消すだけでなく、ヒゲなどが僅かにゼロラインをブレイクしてしまう動き。ボラティリティが急拡大した時などに予約注文が発動して、偶発的に起こる相場が行き過ぎる現象。
トレンド転換の直後に現れる

いわゆるフェイク。ロスカットにバッファを持たせておかないと損切りとなる。
調整は「トレンドの推進波より短い」という定義に反するが、100%以上戻してトレンドに回帰する動きが存在すると考えることで、フェイク(ダマシ)を説明できるようになる。

 これも125%という数字に意味があるわけではなく、100%をわずかに割って、トレンド回帰するという意味に過ぎない。(わざわざ125%を測る必要はない)


フェイク的な動き

 見方を変えれば、二点底を”僅かに割った”だけである。

フェイクの直後に急騰


下落においても同じ





時間軸による分類

 調整の定義の確認だが、

 調整とは

①トレンドに対する反対方向の動き
②トレンドの推進波よりは短い

③移動平均線に達しない動きは推進波とみなす
④レンジが構成されている間は除外する


 ここで「③移動平均線に達しない動きは推進波とみなす」というのがあるが、調整の比率がトレンドの推進波の38.2%に見たない場合でも移動平均線を割る動きが存在する。



時間的調整(L波動)

 ブレイク後の動きなどで出現する。一旦調整が来そうな局面なのに、少しだけ値を戻したまま価格が動かず、小さなレンジを作って滞留するような動き。時間経過とともに移動平均線を割るが、そのままトレンドに回帰していく。

 フィボナッチリトレースメントなどで測定しても38.2%に満たない調整幅のまま推移していく場合も存在する。
 ちなみに下落においてはアルファベットのL字のような形状が現れるため個人的に「L波動」と呼んでいる。(上昇では逆L波動)

下落ではL字が現れる

 レンジ(レクタングル)を作るため、調整を抜けると強烈なトレンドが来ることが多い。




価格の調整(N波動)

 先ほどまで紹介していた「○○%戻し」はすべてこの価格の調整に分類される。よって価格調整の幅は、38.2%~125%程度ということになる。

価格の調整が入ると、波動はN、または逆Nの形を作る

 考え方としては、時間調整では、利益確定の反対売買があまり入らないで時間だけが経過したということ。一方、価格の調整では、短期的に利益確定の反対売買が入り、値を戻したが再び新規注文が入りトレンドが継続したということである。



複合調整

 これは名前の通り、時間的調整と価格の調整が複合したような調整である。時間的にも長い調整で、値幅でいうと、61.8%近辺まで調整する。
 非常に大きなトレンドの途中で登場し、複合調整が来た後もトレンドが継続する。

 調整の時間が長いので、中期移動平均線を割り込み、さらには中期MAの向きが変わってしまう。が、長期移動平均線に支えられるような位置でトレンドに回帰し、再び伸びていくような動きを見せる。

 要するに、上位時間軸の動きである。故に下位時間軸では短期的なトレンド転換が起きているようにも見える。


上昇フラッグのような形状

 上図の場合、約61.8%戻した後、長期移動平均に接近するまで時間的に調整して、(トレンド開始時のブレイクアウト水準は割ることなく)一気に上昇トレンドに回帰している。

 「強い上昇→下落→高騰」と見るよりも、「上昇トレンドの途中に複合調整が入った」と見る方が理解しやすいと私は思う。

 これは5分足で表示しているが、明らかに15~1H足の動きである。上位足のトレンドを下位時間軸で見ると、このような形に見える。




まとめ


 以上、トレンドを追いかける際に絶対に理解しておくべき「調整」の分類だった。

 当たり前だが、「調整」のパターンを理解しただけでは勝てない。また今回は理念型を載せたかったので、三角保ち合いなどのようなコンテニュエーションを除外している。こういったパターンフォーメーションを含めると、分類が複雑になり過ぎるためだ。

 しかしながら、単純化して基本的な形ばかりでは、実際の相場では役に立たないというのも事実である。
 例外的なケースや説明不能な形状も多く登場することは、実際に毎日相場に向き合っている人ならおわかりだろう。


考え方

調整のパターンがある程度理解できたなら、「どこでイグジットするか」がわかるようになるはずだ。(この意味がわからない人は、もっと自分の頭で考えてみよう)

 「調整=反対運動」ということは、例えば、61.8%戻しや100%戻しのような調整が深い場合、どんどん含み益が目減りしていくことになる。
 このような場合、「今すぐ利食いして”尻尾はくれてやる”べきか」あるいは「ゼロラインに損切りを入れてひたすらトレンドを追いかけるべきか」の選択になる。

 トレードは、常に予測不能の未来のどちらが有利かを選択していく作業なので、どういう選択をするかは、これを読んでくれたあなたの判断に委ねられている。


 けっこう気合入れて書いたので、参考になったという人は購入して下さい。(これより下には何も書かれていません。)


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