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なぜネットにはFX手法に関する情報だけが溢れているのか




 今回は近況報告に近いのだが、最近考えたことについての記録だ。


転換期


いよいよFXでの利益が出始めてくると、トレードで勝てなかった頃とはまったく違った情報や知識が必要になってくる。

 FX口座からの「出金」
 送金先の銀行(メインバンク)
 FX口座で稼いだお金の安定的な運用法
 保険、債権、投資信託
 税金
 確定申告
 退職のタイミング
 法人成り
 会社の作り方

 もっと色々とあるが、差し当たってこれまでとは異なる情報を集めなければならないことに気づく。

 これまでは、値動きの法則やテクニカルの理論、取引手法、有効なインジケーター、資金管理の方法など、トレーダーとして「FXで勝つためにはどうすればいいか」という視点でばかり勉強や情報収集を続けてきた

 だが、実際に口座から出金するほどに利益が出ると、「利益を出した後」のことがよくわかっていなかったことに気がつく。
 つまり、ここに来て「勝った後どうすればいいか」という疑問が次々と出てきた。

 しかし、中々お目当ての情報が見つからない。というか、例えば「税金」の記事を探してみると、少ないながらも見つかるには見つかる。だが、とにかく中身が薄ペラいものが多いのだ。


noteの記事数

FX


「FX」関連の記事:約7万件

税金

「税金」関連:約8,000件

 収益がプラスになっていないと、納税義務はないので、「税金」の問題は発生しない。国内FX口座であっても、所得が2,000万円を超える場合は確定申告が必要になるため、税金の問題が出てくる。
 ということは、リアルに税金の問題に直面している人は、FXをやっている人口の10分の1程度の規模という感じなのだろう。(この「約8,000件」には当然トレードとは無関係のフリーランスの記事も含まれている。)

法人化

「法人化」関連:約700件

 さらに10分の1ほどになった。
 海外FXの収益は、雑所得に分類されるため、収益が700~800万円を超えると、法人化したほうが税制上有利になる。だが、FX関連の記事に比べ100分の1ほどの数しか存在しない。さらにトレーダーが書いているものに絞ると・・・


 そして、ふと気がつく。

「ネット上には実際に勝ってる人の情報は、ほとんど無いのではないか?」


 自分で調べてみてよくわかる。

役に立つ情報がほとんどない

 情報はあるにはあるが、実際に自分で体験したリアルな情報ではない無内容な記事ばかり。
 法律や企業の公開情報、誰かの記事なんかを名寄せして、それっぽく作っただけの「中身の無い情報」ばかりがネットには溢れている。



「本物っぽい人」だけが異常に多い世界


 そもそも「ネットの情報は中身が無い」というのは当たり前なのかもしれないが、ことFXの世界はこういったクソ情報が溢れかえっている。

「間違った情報が広まっている」のではなく、「中身の無い情報の数が異常に多い」のだ。
「note」の記事を例に取っても、そこいらじゅうにFXの勝ち方に関する記事が出てくる。


よく見かける言葉


 手法
 テクニカル分析
 システムトレード
 「~理論」
 損小利大
 トレードルール
 資金管理
 EA(自動売買プログラム)


 FXについて勉強しようと思ったら、数分の間にこういったワードを何度も目にすることだろう。

 個別のワードについての事例は省略するが、これだけの数の役に立たない情報が体系的にまとめられている分野というのも珍しいと思う。


 「本物っぽい人」や「勝っている人を装う偽トレーダー」が好む表現というのもあって、

 「検証」
 「勝率」
 「優位性」
 RR(リスク・リワード)
 「先出し」
 「聖杯」
 フラクタル性
 口座開設
 無料配布
 Discordに招待
 サロン
 LINE登録

などといった文言も非常によく目にする。


 これら全部が「偽トレーダー」の証ということはない。本物の専業トレーダーもこういった言葉を使う場合もある。

 ただ、プロがよく使う言葉であったが故に、これらの言葉を駆使して自分を「本物っぽい人」に見せようとしている嘘つきがゴロゴロいるということも事実である。だから警戒するべき表現であることには違いない。




FX関連のビジネスとその周辺


 「FXで稼ごう!」とか「FXで儲けよう!」と思って参入したはずの世界。しかし、自らの技術不足で証拠金を失い退場した人、あるいは相場の過酷さに耐えきれなくなってFXをやめた連中が数え切れないほど存在する。

 また、累計800万人を超える人間が参入した市場には、それなりの需要が存在するハズで、これに目をつけて別の商売を始めた者も多いだろう。

 FXの世界には、おそらく純粋に取引だけを行う人間より、その周辺で小銭を稼ごうとしている人間の方が多いのではないか?

(A)「トレーダー」と呼ばれる層

 ごく少数の「専業トレーダー」
 FX収益がプラスの「勝ちトレーダー」
 数多くの「負けトレーダー」
 トレードでは食っていけない「サロン運営主」
 ”聖杯”探しする「初心者トレーダー」

 この「トレーダー」に該当する層は、どこまでいっても実際にリスクを背負ってトレードを行っているから、まだ人間の尊厳を保っている。

 だが、その外側にもっと多くの、トレードをしていないのにFXを語る連中が存在するのがこの世界なのだ。


(B)取引を行っていない層

 知識や情報を売る「商材屋」
 アフィリエイト報酬目当ての「IB勢」
 広告収益が目当ての「ブロガー」
 EAを売りつける「EA屋」
 LINE等のリスト集めが目的の「メルマガ人」
 YoutubeやTwitterで集客する「配信系」
 単なる投資詐欺を行っている「詐欺師」

取引を行っていない層には、元々FXをやっていて「負けた」、あるいは「騙された」後で、自分も同じように搾取する側になった人間が多くいる。


FXの世界の生態系


つまり、FXの世界には、以下のような生態系が存在すると考えられる。

FXの世界の生態系


①神トレーダー


 トレードだけ稼ぎ、生計を立てている人。彼らは市場から利益を生み出すことができるため、誰にも依存することなく、ひとりで生き抜くことが可能な唯一の存在である。みんなの憧れ。
 インフルエンサーとしてtwitter等で発言していることもあるが、言葉は少なくかつ抽象的で理解不能なことが多い。FX自体の収益が十分あるので、トレードの技術や知識を商材として売ったりサロンを運営することはない。
 下位の層とは完全に独立しているが、FX関連ビジネスの生態系全体に希望の光をもたらす太陽のような存在。



②ネットビジネス系


 ネットビジネスを主体に生計を立てている層。現在はFXをやっていないことも多い。商材を販売したり、サロン運営を行って稼いでいる人々である。

 トレーダーではないものの、弱者を食い物にしているという点で「捕食者」の立場に位置する。彼らの戦術には以下のようなものがある。

 自分の有料記事を販売する
 アフィリエイトリンクから他人の記事を宣伝して紹介料を得る
 ブログで広告収益や口座開設を誘導する
 IB口座開設によって手数料を取る
 Youtube等の配信サービスに集客する
 メルマガ(メーリングリスト)で稼ぐ
 有料サロンに加入させる
 有料のインジケータを販売する
 インジケータ等の無料配布を条件にメールアドレスを集める
 EA(自動売買プログラム)を販売する
 EAの配布を条件に口座開設させる
 EA配布を条件にLINE(オープンチャット)に登録させる
 優秀なEAによって長期的にIB報酬を得る
 ナンピン系EAで強制的にIB報酬を取る

 ビジネスモデルは様々だが、これらネットビジネス系の連中は、下位の「負けトレーダー」や「情報弱者」、そして「副業憧れ勢」に自分たちの”商品”を売ることで生計を立てている。(本当に生計を立てられているのかはわからないが・・・)

 特に「手法」やEAを販売したり、サロン経営をしたりする者にとっては、自分の対外的なイメージが収益に直結するため、自己をブランド化していく必要がある。
彼らの戦略には、自分が「神トレーダー」であると相手に信じ込ませる必要があるため、SNS上での発言が頻繁かつ具体的である。
 爆益報告や「○○万円勝ちました」など自己のトレードの腕を誇張する発言が目立ち、定期的に自己のトレード手法を画像付きで公開してくれる。




③副業憧れ勢


「ネットビジネス勢」に食い物にされている層である。

 この階層には「神トレーダーになりたい人」と「ネットビジネスをやりたい人」が混在している。共通点として、一度はFXをやってみたが勝つことができなかったが、依然として副業に憧れを抱いているという点である。

 相場やビジネスに未練があり、「いつか自分も副業で稼ぎたい」と思っているため、生態系の中で最も捕食者(シャーク)の餌食になりやすい層である。「手法」や情報商材を買うことに対して「これは先行投資だ」とか「ビジネスを展開していくための経費」と捉える傾向にあるため、さらに下位の「情報弱者」よりもお金を落としやすい。

そして、

 野心があり夢を膨らませているせいで、無駄に行動力があり、中途半端な知識で意味不明な記事を量産する。収益化のコツを掴んでいないが故に試行錯誤を繰り返すため、結果として同じ人の記事が並んだり検索結果を汚す元凶となっている。

 こいつらがネット上の虚無情報の産みの親だ。

 彼らも自己を「神トレーダー」に見せる必要があるため、SNS上での発言が多く目立つ。が、知識や見せ方が未熟であるため、拙いクオリティであったり自己矛盾する内容であったりして恥ずかしい。




④負けトレーダー・情報弱者


経験の浅い初心者たち。まだFXの世界には「聖杯」がどこかにあると信じている時期の新米トレーダーたちである。
 「ネットビジネス勢」に食い物にされている階層その2であるが、年齢が若かったりお金を持っていなかったりするせいで、総額として巻き上げられる金額は少ない。

 生態系全体で見ると、神トレーダーの「養分」でもある。自分が情報弱者であることを自覚すると、ひとつ上の階層である「副業憧れ勢」に進化することもあるし、そのまま退場していくこともある。
 自分が負けトレーダーであることを認めており、情報を収集するだけで発信はしない。態度も比較的謙虚であるため、無害である。




神トレーダーに巡り会える確率



本物のトレーダーは人口全体の1%以下であり、他人(それも結果を出していない負けトレーダー)と交流するメリットが無いため、基本的に「絶対に巡り会えない」と思っていた方がよい

自分で「専業トレーダー」と名乗る人も怪しい。中には本物の専業トレーダーもいるだろうが名乗るだけなら誰でもできるので、基本的に嘘をついていると考える方がよい。

整理すると、

 「神トレーダー」には出会えない。
 彼らは、市井の者とは交わる必要がないからだ。

 そして
「神トレーダー」が自分のトレードの技術を
 売ったり教えたりすることはない。
 なぜなら彼らはお金に困っていないからだ。

 彼らはあなた用がない。

裏から言うと

 ネットビジネスを行う者にはよく遭遇する。
 彼らは常に「獲物」を探し回っているからだ。

 彼らはいつも「儲かってそう」に見え、
 あなたに「親切で優しく」、
 なぜか「聖杯」や「儲け話」を持ちかける。

 あなたからお金を巻き上げたいからである。


 純金融資産が1億円以上ある人が、顔も名前も知らないネット上の人間に対して10,000円で「手法」を売ったり、月額3,000円の「サロン」を開くだろうか?
後々のトラブルや面倒事が増えるだけで、自分の貴重な時間を失うだけではないか?

野村総合研究所より

 社会階層が上位に属する人間は、もともと閉鎖的なコミュニティに入り浸って、市井には降りてこない(神や貴族)し、FXで「億り人」となった者は、自己の成功のタネを秘匿する。

「自分に優しい人」、「親切な人」、「甘い言葉を投げかけて来る人」はすべて「捕食者」である。そして捕食者のトラップに引っかかっている時点で、まだ自分が「弱者」であることを自覚しなければならない。

FXというゼロサムゲームの世界で、他人に無償で何かを与えてくれる者が存在する訳がないことを思い出そう。




おまけ

FXのアクティブ人口は?


国内の投資家は約2,700万人


 2021年時点で、株式または投資信託などの金融資産を保有している投資家の数は2,700万人(20歳以上の人口の約26%)という調査がある。

投資信託に関する意識調査 - 野村アセットマネジメント

 この調査における「投資家」の意味にも注意が必要である。不動産や保険、債券・社債等の金融商品だけを持っている人やFXしかやらないという人は数字に反映されていないことになる。ただ、これらはかなりの部分で重複していると考えた方が自然なため、約2,700万人という数字から大きくは違わないと考えてよいと思う。割りとたくさんいるんだなという印象を受ける。


FX経験者は約900万人?


 FXに関しての別の調査(2017年なのでやや古いが)では、

 人口の約6.7%「FXを行ったことがある」と回答したとか。
これを人口ベースに直すと、約628万人がFX口座を開設したことになる。

 無論これは「過去に1度でもFXを行ったことがある人」の数に過ぎず、現在も継続的に取引しているかどうかはわからないのだが・・・


 ”FXを行ったことがある”とされる「約630万人」という数字は、既存の国内FX口座の「約661万口座」(2016年)という数字と近似しており、まずまず実態に近いのではないだろうか。
 また、ここには、海外FX業者が含まれてはいないが、一人の人物が複数の口座を開設することもできるわけだし、大きくは違わないと考えてよいのではないだろうか。

 さらに2020年9月末時点では、開設済みのFX口座数が「約892万口座」に増加しているとのこと。

 日本人は世界的にもFXが大好きらしく、海外FX口座の登録者の約半数が日本人という有様だ。さすがギャンブル大国である。



国内のFXトレーダーは約80万人?


 この既存口座数には、実際にはもう取引を行っていない「休眠口座」も含まれるため、アクティブなユーザー人口はわからないことには注意が必要である。

 いくつかのブログ等で言われているのは、既存口座の約10分の1がアクティブ口座と考えて、という大雑把な計算法を採用していることから、大体「約80万~90万人」がアクティブのFXトレーダーということでよいだろう。
(別に実数を把握したいわけではないので・・・)



FXで”勝っている人”は3万人以下?


 FXを行っているアクティブ人口が曖昧なので、ここからはもっと信頼性の低い数字になるが、「FXで勝っている人」はどのくらいいるのだろう?


「FX投資家の約7割が1年以内に退場する」


 上の記事を参考にすると、

 FXを始めた人の、
  69.1%が1年以内にやめた
  27.5%が5年以内にやめた

 ということになる。

5年以内に96.6%が退場していることになるが・・・?

Q. どのくらいでFXをやめましたか?


 「勝っている」の定義によるが、単に「数回の取引で運良く利益確定に成功し現在は引退している」みたいな人を「FXで勝っている」とは呼ばないだろう。

 ここでは、「5年以上FXを継続できた人」を「勝っている」と呼ぶことにする。(正確には「勝ち越している人」もしくは「負けていない人」)

 すると、FX経験者のうち、約3.4%がこれに該当するため、人口に換算すると、約2.7万人という計算になる。


 大雑把ではあるが、FX人口の全貌が見えてきたような気がする。果たして日本に「専業FXトレーダー」と呼ばれる人間は、どのくらいいるのだろうか?本当に「億り人」になった人はどのくらいいるのだろうか?

極めて少ないトレードで「億り人」となった「神トレーダー」が、さらに小銭を稼ぐためにわざわざ「有料記事」を書いたり「商材」を売ったりするという事例は、果たしてどのくらいあるだろうか?




以上
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