人を惹き寄せる文房具
休日のわりに早く目覚めたわたしは冷たい空気に揉まれながら駅ビルの中にある文房具売り場にやってきた。近くのスーパーには売っていないボールペンの替え芯を買うためだ。三連休の中日ともあり文房具売り場は多くの人で賑わっていた。
老若男女がここまでバランスよく集まる場所も珍しい。真新しいボールペンを手に取りまじまじと見つめる小さな男の子、友人とノートの使い方を議論する大学生らしき2人組、シャーペンの棚で試し書きをする年配の女性。みんな文房具に惹き寄せられてここにやってきた。
文房具という小宇宙に魅了された人間たちが数多の星を巡っているようだ。文房具から出される重力に人は逆らえない。消しゴムやはさみだって立派な星だ。ノート売り場から筆記用具のコーナーへは流れ星のように人の勢いが止まらない。
ほどなくしてわたしが探していたボールペンの替え芯が見つかった。小さな星だが確かに輝いている。この芯から刻まれる文字がまた新たな作品を生み出す。
小宇宙を旅していたら欲しい文房具が見つかった。でも今日は早めに帰ろう。まだ家での仕事が残っているからね。
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