"世界一幸せな国“
東京・羽田空港から飛行機で13時間ほどかけて辿り着く北欧の国、フィンランド。別名 “世界一幸せな国"。
国民の幸福度や教育水準において毎年トップレベルの数値をたたき出し、世界中から注目されている国の一つだ。
2024年の春、とあるプログラムに参加してこの国を1週間半ほど訪れた。
初めて足を踏み入れる北欧の地で感じたものや、実際にいくつかの教育現場を訪れ、そこで働く先生や子供たちとの対話から考えたことを、思い出がてら帰りの飛行機の中で綴っていきたい。
1) フィンランドってどんな国?
サウナが有名
サンタクロースがいる国
とにかく雪がすごい
物価が高い
税金が高い
オーロラが見える
2) 行ってみての気づき・発見
国籍関係なしに優しい(今まで行った国の中で1番だと思う)
水道水が飲める(ボトルより美味しいらしい)
ガラス張りの建物が多い
トナカイの肉を食べる
ひとつのチケットでトラム・地下鉄・バス全てに乗れる
ゴミの分別に厳しい
物価は想像以上に高い
税金が高いといえども、市民の目に見える形で還元されてるので満足度が高い
独自の教育システム
移民に対しても受容的
多様性
サーモンがとても美味しい
野菜、果物が安い
3) フィンランドGTPについて
そして私が参加したのが
Global Teacher Program in Finland
(フィンランドGTP)
というプログラムである。
コンセプトは "海外×教育"。
参加者は主に日本の教育やフィンランドの教育に興味関心を持つ、全国各地の高校生、大学生、教員など計16名。半年間オンライン上で勉強会や事前研修を行い、3月後半から8日間、フィンランドを訪れた。そして世界的にも手本とされるフィンランド教育のあり方を、現地での教育機関の視察や、先生や生徒、住民との交流・対話によって見つめてきた。どういった部分を参考にして、何を日本に持ち替えればいいのか、フィンランド教育ならではの良さとは?などと各々が自分自身の問いを持ち、研修に挑んだ。
そしてGTPの最後には、現地の学生に英語やフィンランド語で実際に授業を行うことによって、言語や教育制度の壁を超えた授業を現地の子供たちと作り上げてきた。
根本として、フィンランドでは幼稚園→小学校→中学校のあとに、専門学校か高校かを選ぶことができる。資格を取りたい子や手を動かしての学習が好きな子は専門学校に進み、極めたい学問がある子や座学での学習が好きな子は高校に進む傾向があり、割合はおおよそ半分である。
また大学生までの学費や給食費(バイキング形式で自分の好きな物を好きなだけ食べられる)は全て国の税金で賄われており、子供たちは無料で教育を受けられる環境が整っている。
驚くことに、先生方の給食費まで無料らしい。
いくつかの教育現場を訪れ、特に日本との違いを感じた点が2点ある。
1点目は、フィンランドの学校や先生が生徒自身のown space/place(自分自身の場所)を大事にしていたということだ。例えば、最初に訪れたイーサルミの教室には、4種類もの椅子があった。ローラーがあるほうが集中しやすい子用に、バランスボールのような揺れる椅子がリラックスできる子用に、などと生徒それぞれの性格や特徴に合わせて椅子の形を変えているそうだ。また壁際が落ち着く子、完全に周りの視界をシャットダウンされたひとりのスペースが必要な子、何人もと向かい合わせて座るのが落ち着く子など、生徒が授業を聞くスタイルも多種多様であった。
これには、本当に授業が行われるのか?生徒がてんやわんやで計画通りに進まないのではないか?と疑問に思うところがあった。しかし、フィンランドの学校では常に担当の先生が1人しかクラスにいない、という状態はほとんどないらしい。special teacherと呼ばれるいわゆる補助の先生が、担当の先生と一緒に授業に参加していた。気軽に先生を呼ぶ生徒たち、自主的に発言したり、積極的に質問して授業に取り組んだりしている姿はとても楽しそうであった。
2点目は、完璧に出来上がった信頼関係である。これは先生-生徒だけの関係ではなく、先生-先生、先生-保護者など全てにおいての関係である。
8日間のうちに訪れたどの教育機関でも、そこでのトップに位置する校長先生は、自分と一緒に働く他の先生のことを、good teacherだと尊敬していた。またビエルマで訪れた学校の校長先生は、「他の先生が何か新しいことをやりたいと言った時、まず自分に相談がくる。それをどう予算内に組み込むか、どうやったら実現させることができるのかを考えるのが自分の仕事だ」と笑顔でおっしゃっていた。
果たして今の日本の教育現場に、このような信頼関係はあるのだろうか。参加メンバーの中にも3名ほど、日本の公立学校で働く教師の方々がいたのだが、「今、GTPが終わって日本に帰り、なにか新しいことを始めようとすると、確実にマイノリティーになる。それが怖い。年齢における階層は必ずしもないとは言えないし、特に教員免許を取ってすぐの若い人たちが好きなように動けない環境があるのは事実だ」という話を聞いた。
生徒の主体性を引き出し、それぞれが安心して好きなことを学べる教育現場にするには、まずそこに関わる大人の考え方を変える必要があるのではと強く感じた。日本の子供たちには主体性がない、と言う前に、なぜ元々持っている主体性がなくなってしまうのか、どういった目的で教育を行っているのか、改めて考える必要があると思う。
子供は大人を見て育つ。分かりきっていることだが、想像以上に周囲の環境がもたらす影響は大きい。
「いい大学に入り、いい会社に入りなさい。」「女の子なら看護師か薬剤師みたいな資格がある仕事を選びなさい」そんな言葉がいまだに聞こえてくる日本社会で、どうやったらみなが好きなことを楽しんで学べるのか。
フィンランド教育が成功している要因として、元々の国民性や歴史的な背景も少なからず関わってくると思う。だからこそ日本が全てのやり方を真似しても、決して上手くいくとは思わない。
教員の人員不足、予算の少なさ、凝り固まった学歴主義、日本の教育現場が問題視され、世界的な競争ランキングが徐々に落ちてきている要因は多々ある。今の現状を変えるには、相当な力や資金、年月がかかるであろう。
ただそんな中でも、今の日本に危機感を持ち、遠く離れた先進国に自ら訪れ、日本の教育に携わりたい、日本の教育を変えたいという強い意志を持った人たちがいることを忘れないでほしい。そしてその芽を潰さないでほしい。
こんな話をしておいてだが、私自身は今後、教育現場に立つつもりはない。元より、このプログラムに参加したのも、海外への旅が好きであること、北欧という国の魅力やもう一つ自分自身がサブテーマとしていた財政について研究したかったこと、それにプラスして、今まで自分が無知であった教育という分野への好奇心や、そのために全国から志願してくる人々に興味があったからである。
プログラムの期間は半年だとしても、正直、8日間程度の視察で何か自分の思いが変わるとは思ってもいなかった。
しかし、一緒に活動する自分より歳が若い子や同年代の子たち、ましてや実際に生徒を持っている先生や、まもなく定年を迎える先生までもが皆それぞれ熱い想いを持って取り組んでいる姿を見て、とても感動したのを覚えている。
「自分にできることってなんだろう」
みなが"教育"という同じ方向を向いている中で、この8日間、1番自分に問い続けた問いである。
私はどちらかというと、日本の財政やお金の生み出し方、ビジネスに強い興味関心がある。
現場に立つ人にできなくて、その分野を極めた自分にならできること、言葉にするのが難しいが、「何かを変えたい」という熱い想いを持った人たちをどうサポートできるか、ここで作ったコネクションや経験をもとに、ともに0から1の形を作って行くことが自分の使命であり、本当にやりたいことなのではと思えたことが、私自身の問いのゴールである。
フィンランドでの気付きや自分が感じた興奮はこのnoteだけでは伝えきれない。
新しい国の風に触れ、いろんな思いや考えを持つ人たちと関わることができた素晴らしい8日間であった。
Kiitos paljon !!🇫🇮
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