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旅する花屋が拠点を「塩尻市」に決めた理由。

国道沿いには熟した葡萄が実り、
壮観な日本アルプスの山々が、雪化粧でおめかしを始めている。
私は今、長野県塩尻市にいます。

こんにちは。

「旅と花束」という屋号を掲げ、実店舗を持たずに全国各地を巡りながら花屋さんをしています。代表の相徳夏輝(アイトクナツキ)です。

車を持っていなかったので、花瓶をキャリーバッグに詰め、面白そうな地域を選び、飛び込む。たくさんの方々に助けていただきながら、生産農家さんや市場の方々、地域プレーヤーとのご縁に恵まれて現在に至ります。

さて、そんな私ですが、この度実店舗を持つことに決めました。
「もう旅しないの?」「早くない?」と言われることもありますが、どうしても実現したいことができました。その為には、自分の拠点がどうしても必要。そう思うきっかけになったことから、なぜ長野県塩尻市に場所を選んだのかをお話ししたいと思います。

旅する花屋さん

私は大学を卒業後、宮城県石巻市に拠点を置く、フィッシャーマン・ジャパンという団体でキャリアをスタートさせました。日本の海に変革を起こすことをミッションとし、業界の問題点の改善から鮮魚の小売まで多種多様な手段で仕事に取り組んでいました。特に驚いたのは彼らの仕事への熱量。社会課題に真っ向から立ち向かうその姿は、まるで社会に出ることが罰ゲームのように感じていた私にとって強烈な魅力として映りました。「自分の信じる仕事がしたい」と思えるきっかけでした。

ただ、当時は自分がやりたいことが見つけられず、都会への羨ましさもありました。SNSを開けば友達が仕事終わりに飲みに行って楽しそうにしている様子を見てしまいます。私は誘惑に負けて逃げるようにして石巻を離れ、東京の会社に転職しました。ただ、あの時に地方で会った人たちへの憧れと、そこで過ごした経験は今も生きています。自分が信じる仕事が、社会が良くなる方向に作用する、そんな生き方をしたいとずっと思っていました。

そして、花と出会い、花が仕事になりました。生意気にも花屋さんを4か月でやめて独立してしまいましが、ずっと考えていることがありました。「”花”という手段を持って、もう一度地域や人と関わってみたらどうなるのだろう」。石巻では、自分が何者であるかを語れず、うまく地域に入り込むことができませんでした。でも、今は「花屋」と言える。

ある意味、実験でした。花瓶をキャリーバッグに入れて、様々な地域を回りました。

「花屋です。売り場を探しています」
「花屋なので、花農家さんを紹介してほしいです」
「花屋だからこそ、できることありますよ!」

香川県高松市にて(KSB取材)
大分県竹田市にて

花は手段と言われればそうかもしれません。だけど、花に出会う前よりもはるかに地域や人に受け入れてもらいやすくなったなと思います。単純に各地で花を売るだけでなく、イベントの装飾やアーティストさんとのコラボ作品も実現しました。子供にアシスタントをお願いして花屋さんになってもらったり、街の人たちと野の花を使ったフラワーアレンジを作ったり。そんな活動を通して、花は人を人や地域と繋ぐ架け橋になる。そんな確信を得ました。

お店を作ろう。

さまざまな地域で花屋として振る舞い、何ができるのかを確かめました。そして、活動を通して自分ができることを知ったとき、宮城県石巻を離れた時に感じた不完全燃焼な気持ちと憧れた地域プレーヤーの方々の姿が思い起こされました「自分ができることが、社会に影響を与えることができるかもしれない」。その期待感を実現させたい。私は店を作ることにしました。やりたいことに目一杯に挑戦できる場所。来てくれた人がワクワクして、自分の可能性を信じられる場所。花は、どんな人もモノも場所も華やかに魅力を引き出してくれると信じています。

3つの機能がある花屋

活動を通して、花屋の自分だからこそできると感じた”3つの機能”があります。それは、「メディア」「教育」「6次産業化」です。この機能を実装して、地域社会に貢献できる花屋にしたいと考えています。

3つの機能
メディア
教育
6次産業

「ソーシャル・グッドな花屋=social florist」
現代社会は、自分だけが儲かる仕組みを作る方が難しいと感じます。日本は少子高齢化が進み、地方過疎が進み、経済成長があまり期待できないと言われています。だからこそ、状況を逆手に取る。少子高齢化は、つまり若者が貴重であるという証拠。地方過疎は、そんな若者を応援しなければいけない状況。経済成長が期待できないということは、限られた資源と向き合うことができるということ。公共性に沿う形で、自己実現を果たし、地域や国から応援される。そして、花を通して人が笑顔になる。そんな”三方良し”な事業にしたい。

長野県塩尻市

旅先で訪れた街はどこも本当に魅力的で、どこに店舗を構えるか悩み続けました。一方で、新しい場所で勝負したいという思いもありました。東京の花市場に行くと、「信州」と評された花をよく見かけます。SNSでフォローしている著名な花農家さんも長野県に農園があることを知っていました。首都圏からもアクセスが良く、日本アルプスに囲まれた街並みはとても風光明媚で、なんだか豊かな生活が送れそうです。そんなことをぼんやりと考えていた時、本当に偶然ですが、長野県塩尻市で開催されるイベントに出店依頼をいただきました。聞けば声をかけてくれた方は私が活動を始めた初期の段階からSNSをフォローしてくださっていて、活動を注視してくださっていたとか。イベント開催は2ヶ月後でしたが、強い縁を感じた私は、「1週間後に一回遊びに行って良いですか?」と願い出て、塩尻市を訪れることになりました。そして、「こんな花屋が実現したいんです!」と説明するための資料を作り、地域で活躍する方々の前でプレゼンテーションを行う機会をいただきました。そして、あれよあれよと話が進み、地域おこし協力隊に着任する流れに。正直、街の雰囲気が前向きで、交通の便が比較的良い場所ならどこでも良かった。だからこそ、塩尻の方々のスピード感と明るさ、そしてこれから盛り上げていくぞという気概に触れたいと思ったことが、私が塩尻に店を構えようと思ったきっかけでした。

実現したい未来

自分で花屋さんを初めて気づいたことがあります。それは、花には力があるということ。人を前向きにしたり、場を華やげたり。とてもポジティブな作用を人生に提供してくれます。そして、「どうしたら相徳さんみたいに行動できますか?」と質問されることが多くなりました。実は私は基本的に人見知りで、最近までお店の店員さんに話しかけることすら恥ずかしくてできなかった性分です。注文取る時とか、服のサイズがないか聞く時、とても勇気が入りました。そんな小心者の自分が、こんなに大胆に動き回れるようになるなんて憧れはあったけど想像はできませんでした。だけどできたし、止まるつもりもない。だからこそ、「君もできるよ」と自信たっぷりに言えるような子供心を忘れない大人でいたい。

最後に、「旅と花束」の屋号の意味を綴って終わりにします。

「旅」・・・人、物、コトが移動すること、それによって生じる”出会い”

「花束」・・・”個性溢れる”人、物、コトが一つに束ねられたもの

つまり、「出会った個性を花束のように一つにまとめたい」

それが、「旅と花束」という企画です。

花を通して、たくさんの魅力を引き出したい。
そしてそれを一つにまとめて、唯一無二の花束にしたい。

そんな思いでこれからも活動して行きます。

今度は関わる人が「旅と花束」ができるように。

応援よろしくお願いします。

相徳夏輝







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