見出し画像

オンリーワンよりナンバーワン

かの名曲に喧嘩を売るつもりは全くありませんが、私は「オンリーワン」という言葉があまり好きではない。
だってそんなのは当たり前だからだ。
自分と全く同じ個性を持った人間なんているわけがない。
せっかくの人生、何か一つぐらいでナンバーワンを目指しても良いのではないだろうか。



芸能界の厳しさ

高校時代、クラスメイトにナナちゃんという美少女がいた。
どのくらいの美少女かというと、毎日のように告白され、誕生日には紙袋を大量に持って行かなければプレゼントを持って帰れないレベルの美少女だ。

自分に結構自信を持っていた私も「こいつは敵わねぇや」と早々に負けを認め、彼女のおこぼれにあずかろうというゲスい考えの元、仲良くしていた。

おかげでナナちゃんと竹下通りを歩いているだけでスカウトされ、センター街を歩いているだけでナンパされまくった。
完全に虎の威を借る狐である。

そんなナナちゃんは高校卒業と同時に芸能界入りした。
ナナちゃんならその内CMもバンバン出まくって、彼女の顔をTVで見ない日は無くなるだろう。
「なんかさみしいね」と、友達間で話していた。

最初の頃、ナナちゃんからは「今度この番組出るよ!」みたいな連絡がちょいちょい来た。
大抵は深夜番組で、ひな壇の後ろの方にいる賑やかしタレントのような感じだ。

それでも「知り合いがTVに出ている」というのは中々のインパクトだったので、私達は「ナナちゃんすごいすごい!」と興奮した。
しかし、次第にナナちゃんからの連絡は少なくなり、TVからも消えていく。

私達は、何となく気付いてしまっていた。
ナナちゃんは確かにかわいい。
だが、ひな壇に並んだ彼女は、一緒に座っている女の子達と比べて「劇的にかわいい」というわけではない、と。

ナナちゃんから連絡が途絶えて数年後。
風の噂でナナちゃんに激似のAV女優がいる、という話を聞いた。
真偽の程は分からないが、彼女が今どこでどうしているのかは、同級生の誰も知らない。



ナンバーワンになる方法はある

ナナちゃんの芸能界入りと時を同じくして、私は銀座に就職した。
昔から「夜の蝶」に憧れていたのだ。
しかし銀座も芸能界とは別の意味ですごい場所だった。

本当にこの世の者とは思えないほど綺麗な女性ばかりなのだ。
それでも私は銀座のマナーを覚え、「お姉さん」について回り、勉強した。

新聞は毎日読むこと。
野球の結果と、その日のMVP選手の名前を覚えておくこと。
日経平均株価をチェックすること。
政治家のお客様の党内での派閥を頭に入れておくこと。

高校時代に政治経済の授業で寝ていた私は、必死に勉強した。
おかげでそこそこ頭角を現すことは出来たが、銀座特有の「暗黙の了解」に踏み込むことが出来ず、私は銀座を去った。

けれど、ナンバーワンにはなりたい

そこで私は、自分がナンバーワンになれる場所を探した。
新宿や六本木の大箱はダメだ。
ああいう派手さではとても勝てない。

もっと小規模の、私でもナンバーワンになれる場所があるはず。

そこで都内のとある街にターゲットを絞った。
そこそこの規模の歓楽街で、けれどもそこまでハングリー精神が無さそうな子が集まる場所を見つけたのだ。

入って3ヶ月で、私は念願のナンバーワンになった。



咲く場所は選ばなければならない

修道女の渡辺和子さんのベストセラーに「置かれた場所で咲きなさい」という著書がある。
タイトルが賛否両論を呼んだが、別に渡辺さんは「今その場所で頑張って耐えろ」みたいなことを言っているわけではない。

置かれた環境でいかに生きやすいように努力できるかが大切、ということなのだが、私はそもそも場所を選ぶ必要があると思う。

学校で一番成績が良かったのに、全国模試では上位に入れない。
県大会では一位のタイムだったのに、全国大会では惨敗。

そういうことは普通にある。
しかしそこで挫折して、人生の全てを諦めてしまうのはもったいない。

だって、すでに一度ナンバーワンになっているのだ。

人よりも優れた部分がある、と証明されているのだから、他のジャンルでもなれるかもしれない。

「ハードルを下げて手に入れた勝利なんて何の意味もない」と考える人もいるだろう。
その向上心は素晴らしいし、そういう人が司法試験に合格したり、オリンピックで金メダルを取れる。

だが、そこまでに到達できない人が大多数なのだ。

その考えに囚われすぎて苦しい人生を送るぐらいなら、もっとハードルを下げても良いのではないか。

ナナちゃんだって、芸能界を目指さずに普通に会社に就職していれば、社内一の美女として引く手数多だったはずなのに。

もちろん努力は必要だ。
ただ、当てもない努力を続けるよりは「ちょっと頑張ったらきっと手が届く」ぐらいの目標への努力のほうが、人生は楽しくなる。


ポッと出の私がナンバーワンになったことにより、店の女の子達は対抗心を燃やし、以前よりも営業を熱心にするようになった。

おかげで店全体の売上上昇にも貢献できたのだ。
オーナーからも「凛さんのおかげです」と感謝された。

ナンバーワンになることは、周囲にも良い影響を与える

「ナンバーワンにならなくてもいい」?

いやいや、オンリーワンはもう持っているんだから、小さなナンバーワンを目指しましょうよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?