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高校教師とジャックナイフ

今日いつものようにnoteを徘徊していたところ、こんな記事を見つけました。

ユーモアセンスが光る、AYAさんの記事です。

読んでいる内に「そういや先生の記事を今度書こうとしてた」ということを思い出せました。
そこで便乗して、ジャックナイフ時代に出会った高校教師の話を書きます。

「ジャックナイフ…?」という方は先にこちらをお読み頂くと幸いです。



ジャックナイフの学内での過ごし方

当時、尖りに尖っていた私は学校への出席率が悪かった。
朝まで渋谷で遊び、吉牛で朝ごはんを食べてそのまま学校へ行ったりすることもあったが、そうなると授業中は寝ていることになる。

すでにこの頃からひとりで行動できるタイプだったので、学内では積極的に友達を作ろうとしていなかった。
一応数人友達はいたのだが保守的な学校だったため、多くのクラスメイトから「私たちとは違う人」と見られていたのだろう。

どういう経緯かは不明だが、何故か私が留年しているという噂が立ったことがある。
誓って言うが留年はしていない。

噂を真に受けた同級生たちは「夏木さん、このプリントお願いします」「すみません、これ先生に伝えてもらえますか?」など、敬語を使ってきた。
いや同い年だけど…。

そんな具合だったので、当然教師からも評判は悪かったのだが、中でも印象に残っている先生をご紹介する。



小石川先生(現国)

問題児を積極的に引き受けてくれていた女神のような担任の先生
ひねくれた読書感想文も褒めてくれる聖人。

いつも私のことを心配し、学校に来ないと必ず携帯に電話を掛けてきた。
大体出なかったけど、録音メッセージに「午後からでも良いから学校においで」と残っていることが多かった。

実は校則でアルバイトが禁止されていたのだが、それを知っても学校には黙っておいてくれるような、やさしい先生。

今までの人生で「尊敬できる先生」に出会ったことはないけれど、少なくとも小石川先生は元気でお過ごしになっているといいなぁと思う。



深川先生(家庭科)

夏休みの宿題で「エプロンの製作」という課題が出された。
しかし私は裁縫が大の苦手だったので後回しにしていたのだが、8/31にあることを思いついたのだ。

布をエプロンの形に切ったらいいんじゃね?

適当な布にハサミを入れてエプロンっぽく切って提出した。
当然呼び出しを食らう。

深川先生は怒り心頭だったらしく、私は通知表で10段階中1(最低点)をもらった。
今思うと本当に申し訳ないことをしたが、無事に裁縫が得意な男と結婚できたので私は特に困っていないとお伝えしたい。



村上(化学)

こいつに敬称略は要らない。

とある日の村上の授業中。
私は席でおとなしく谷崎潤一郎著「痴人の愛」を読んでいた。
その本のほうが化学式よりも学びが多いと思ったからだ。

読書に夢中になっていた私の頭を、村上は後ろから思い切り教科書でパーン!と殴ってきた
突然の衝撃に頭の中に星が散った。

「本を渡せ」

嫌だ。
これは私がバイトして稼いで買った本だ。
なんでお前に無料で渡さなければならないのか。

押し問答の末にチャイムが鳴り、授業終了のはずだった。
しかし村上はとんでもないことを言ってきた。

「夏木のせいで授業が進められなかったので、ここから5分延長する」

当然クラスはブーイングの嵐だ。
みんなが私の方をチラチラと見て、迷惑そうな顔をしている。

こいつは自分のこの行いのせいで私がいじめられたりクラスで孤立する可能性を考えないのだろうか。
考えないよな。
お前はそういう男だよ

もしも街中で村上を見かけることがあったら、後ろから全力でぶん殴ってやろうと今でも思っている。



大林くん(美術)

確か30歳前後の、痩せ型の非常勤講師だった。
授業をサボって校内をブラブラしていたら、美術準備室で何かを製作している大林くんに声を掛けられたのだ。

「夏木さんこんにちは!授業出なくていいの?w」

すでに男を知っていたからかもしれないが、なんとなく彼は私の言うことを聞いてくれそうな気がした。
だからすぐにこう言った。

「大林くんさ、私と友達になってよ」
「えっ!友達…?う、うーん。まあ僕で良ければ」

こうして大林くんは先生ではなく友達になった

つまらない授業はパスして保健室で寝ていたり、部室で本を読んでいた私の選択肢に「大林くんと話す」という項目が加わったのだ。

彼は受け持ちの授業が限られていたので結構ヒマであり、自身の美術品製作をしながら私の話し相手になってくれた。

取り留めもない話が多かったように思うが、ひとつだけ印象に残っている会話がある。
手慰みに粘土をこねて人形を作っていた時のことだ。

「完成した物をね、思い切りぶち壊したくなるの。破壊衝動っていうの?だから私は美術に向いてないと思うんだよね」
「それ、僕は分かるよ。夏木さんは認めないかもしれないけど、結構芸術肌だと思うけどなぁ」

一応言っておきますが、大林くんとは寝てません
最後までちゃんと校内の友達でいてくれました。



一匹狼のジャックナイフ

振り返ってみると、私は学校にほぼ行っていなかった。
学校という固定された人間関係よりも、外の開けた世界のほうが余程魅力的に映ったのだろう。

退屈な授業が多かったが、自分の興味のある科目、たとえば古典なんかがある日はちゃんと早起きし、ドトールで朝ごはんを食べてから学校へ行っていた。
最終的には学校というものに魅力を感じることができないまま、学生生活を終えることになる。

尖りに尖っていた私と向き合ってくれた先生方、ありがとうございます。
そして嫌な先生たちからも反骨精神を学べたので、おかげで今日もnoteの筆が進むってもんですわ。


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