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「褒め上手だね」は褒め言葉ではない

本屋へ行くと、実用書コーナーに「上手な褒め方の法則」とか「どんどん褒め上手になれる本」みたいな自己啓発本がたくさん並んでいます。

褒め上手になりたいと思っている人は結構いるようで、仕事の記事でも「褒め上手になるには?」「愛される人がしている褒め方」といったテーマを書く機会は多いです。

しかし褒め上手はメリットばかりではありません

あんまり知られていない(かもしれない)褒め上手の実態について書いてみます。



「褒める」は技術ではない

料理上手とか商売上手とか床上手とか、世の中には「〇〇上手」という言葉があふれています。
これらは技術を表した言葉なので、方法やコツさえ知れば誰でも習得することができるものです。

しかし「褒め上手」は技術ではありません。

私は仕事の中で、特定のテーマについて自分の意見とは異なる文章を書き上げることがあります。
クライアントが「こういう結論にしてほしい」と言ってきたら、それに従うまでだからです。

「これを読めば誰でも褒め上手になれます」

嘘です
なれません。
ごめんなさい。

褒め上手というのは技術というよりも、その人本人の性格や特性によるところが大きいからです。

いくら褒め方を覚えたとしても、相手がそれを自然に受け取ってくれないと「お世辞」になってしまいますし、最悪の場合「嫌味」と取られることもあります。

何故そんなにハッキリ断言するかと言うと、何を隠そう私が褒め上手だからです。



長所を見つけられるスキル

物心ついた頃から、私には「人の長所をすぐ見つけられる」というスキルが備わっていました。

初めて会う人だったとしても、少し会話をすると「この人は笑顔が気持ち良いな」とか「敬語の使い方がきれいだな」というポジティブワードがすぐ浮かびます。

そして無理矢理ひねりだした褒め言葉ではなく、心から思っていることなので素直に口にできるのです。

「褒め屋」という商売があったなら結構稼げてたかもしれません。

じゃあなんで長所を見つけられるのか、と理由を考えたところ人を好きになる力が強いからではないか、という結論に至りました。

私はとにかく惚れっぽいです。

これは異性に関することだけでなく、同性でも「うわぁなんて素敵な人なんだ」とすぐ惚れてしまいます。
あ、恋愛的な意味じゃないですよ。

「鶏が先か卵が先か」は分からないんですけど。

長所を見つける→好きになる。
好きになる→長所を見つける。

みたいなコンボが決まるんですね。

そしてこのスキルは夜のお仕事に非常に役立ちました。



褒められて嫌な人はいない

褒め上手はあらゆる職業で役立つものですが、特に夜のお仕事での効力は絶大でした。

初対面でもすぐ相手の長所を見つけられるので、とにかく相手を褒めて褒めて褒めまくり、おかげでナンバーワンになったこともあります。

あ、ナンバーワンになる方法はこちらでも書きました。

しかし私は自分が褒め上手であることを自覚してから、その才能にあぐらをかくようになってしまいます。

「どんな相手でも褒めてやんよ」

みたいな上から目線の謎の褒め方をプライベートでするようになったのです。

ある時、知り合って間もない人からこんなことを言われました。

「凛さんって褒め上手ですね」

この言葉を聞いた時、私は固まりました。

褒め上手と言われても、嬉しくない

暗に「人を持ち上げるのが上手」「思ってもいないことをスラスラ言える」という意味合いに感じたからです。

もしかしたら、相手に悪意はなかったのかもしれません。
しかし私は「褒め上手」という言葉は褒め言葉ではないな、と思いました。

自分の驕り高ぶりをようやく自覚したのです。



褒めるタイミング

これ以降、私は少なくともプライベートでは、褒めのバーゲンセールを開催するのをやめました。

過剰な褒めは相手の不信感を招く、と懸念したからです。

ただし人を褒めなくなったわけではありません。

本当にすごいなと思ったり、これは称賛せずにはいられないと思ったら素直に口にしています。

そしていちばん大切なのは、相手が落ち込んでいる時。

「どうせ自分なんか」
「もう立ち直れない」

そんな風に追い詰められている友達には、今まで溜めてきた相手への褒め言葉ストックを怒涛の勢いで噴射します

あなたがどんなに素晴らしい人間か。
私にとってどんなに大切な人であるか。

熱く熱く語りすぎて、最終的には相手から「褒め過ぎだよw」って笑われたりもしますが。

言葉の力は強大です。
時に人を殺すことも、救うこともできる。

褒め上手であることを告白してしまったせいで、私のコメントに不信感を持つフォロワーさんもいらっしゃるかもしれません。

しかし安心してください。
私が思ってもいないようなことを書くのは、仕事の時だけです。

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